相談内容
相談者:男性 高校生
相談内容:うまく空気が吸えない息苦しさ、食後のみぞおちの張りと違和感
2ヶ月ほど前から、息苦しい感じがするようになりました。
特に、空気を吸うのがうまくいかずに苦しくなります。
日中はそこまで感じませんが、夕方から夜にかけて生じることが多いです。
時を同じくして、食後に胃の付近が張って苦しくなることがあります。
ゲップもたくさん出るようになり、うまく消化ができていないような感じです。
その上、胃がチャポチャポと音がすることもあります。
便秘にもなりやすく、大便が出てもスッキリとは出ません。
市販薬の「半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)」を2週間ほど服用しましたが、効果がなかったので来局しました。
処方選択
今回の症例では、「息苦しさ」「食後のみぞおちの張り」という2点の改善を期待しての来局です。
原則として、複数の症状がある場合は一つずつ焦点を絞って改善していくのが鉄則ではありますが、同じ病態に該当する場合は一度に複数の症状も改善することができます。
まずは、「息苦しさ」と「食後のみぞおちの張り」が同じ病態に該当するかを確認します。
本人いわく息苦しさの生じた原因は、はっきりとしないようです。
そこでもう少し詳しく伺ってみると、息苦しさが生じ始めたちょうど2ヶ月前に部活(運動部)を引退したようです。
部活の引退自体は、精神的な影響を及ぼしているわけではないようで、患者さん自身も今回の症状とは関係がないように感じているようです。
ですが、日常生活の変化は知らず知らずのうちに身体には負担になっていることもあります。
同時期に食後のみぞおちの張りがで始めたのも、同じような理由だと考えられます。
部活をやめた後も暴飲暴食などはしておらず、食事そのものの影響はなさそうでしたので、やはりこれも生活リズムの変化で消化活動がうまくいかなくなっていると考えられます。
東洋医学的にはこれらは「気の異常」と捉えることができます。
そのため、「息苦しさ」「食後のみぞおちの張り」はどちらも「気の異常」という同じ病態であると考えられます。
胃がチャポチャポするのも、気の異常により消化活動能力が低下して、胃の水が処理されずにたまってしまったものと考えられます。
そのような気の異常と水の異常に用いる漢方薬の一つが「半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)」になります。
しかし、この漢方薬はすでに使用しており効果がありませんでした。
そこで、もう一段強力に気を下す漢方薬を使うことにしました。
処方1:茯苓飲(ブクリョウイン)
茯苓飲は機能性ディスペプシアなどの胃の不調にしばしば用いられる処方で、今回のケースのような気と水の異常による胃の不調にも用います。
服用して2週間で、食後の胃の張りが取れました。
しかし、息苦しさは相変わらず続いているとのことです。
そこで、もう一度病態を確認することにしました。
『和漢診療学 あたらしい漢方 / 寺澤捷年』(岩波新書)を見てみると、「拘束性呼吸機能障害」という横隔膜が硬く緊張することで、呼吸がうまくいかなくなることについて解説されています。
このような時に寺澤氏は、この横隔膜の緊張を東洋医学でいうところの「胸脇苦満(キョウキョウクマン)」という病態と関係していることを突き止めています。
そして、「拘束性呼吸機能障害」には柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)などの、胸脇苦満を改善する漢方薬を用いることで、横隔膜の緊張を和らげ、呼吸を円滑にすることができるとしています。
そこで、今回の息苦しさも「拘束性呼吸機能障害」によるものと推論して漢方薬を変更しました。
処方2:柴胡疎肝湯(サイコソカントウ)
こちらに変更してから、徐々に息苦しさがとれてきました。
2ヶ月ほど服用して完全ではないものの、大方良くなったところで薬も終了となりました。
まとめ
今回は、2つの相談内容がありましたが、一度でスパッと改善はできませんでした。
食後のみぞおちの張りはすぐに漢方薬を服用し始めてすぐに改善できましたが、息苦しさには2ヶ月ほど時間がかかりました。
おそらく、今回の相談者だけでなく現代人のほぼすべてに該当すると思われますが、スマホの使用によって姿勢が前屈みや猫背になり、胸部を圧迫し続けていることが「息苦しさ」の要因となっているような気がします。
部活を引退して運動時間が減少したことと、部活をしていた時間がスマホを利用する時間に置き換わってしまったのが原因かもしれません。
漢方薬一辺倒で改善を図るだけでなく、日常生活にも目を配り注視することも大切だと痛感しました。








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