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症例紹介

症例39 長引く咳に荊防敗毒散

昨今は季節問わずインフルエンザ、風邪、コロナが猛威をふるっています。
そのため、コロナ禍以前は相談件数が多くなかった、発熱や咳などのご相談が増えています。
今回は、咳だけがずっと止まらない症例をご紹介します。

相談内容

30代後半 男性
相談内容:長引く咳

2週間ほど前から咳が出始める。
症状は咳だけで、発熱や頭痛など、風邪症状は出ていない。
病院では、気管支炎と診断され、抗生剤と咳止め、痰のキレをよくする薬が出される。
しかし、薬を飲んでも少し症状が改善するに止まる。
少し話をすると、むせてすぐに咳き込んでしまう。夜になると悪化して、激しい咳が止まらなくなる。
喘息持ちではなく、息苦しさや痰はない。

処方選択

咳の治療の場合、まずは痰の有無を確認します。
今回は痰はほとんどないので、痰を減らしたり、痰のキレをよくする漢方薬は必要ありません。
かといって、のどにも乾燥感があるわけではないようです。
そのため、気道に炎症が残存し、ちょっとした刺激にも過剰に反応してしまっている状態だと考えられます。

第一処方:麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)

この処方は気道の炎症を鎮めながら、気道を広げて咳を鎮めてくれます。
しかし、1週間服用してもまったく効果はなく、依然として咳き込んでいる状態が続いてしまいます。
そこで、発想を変えて気道の炎症をとることに注力した処方に変えました。

第二処方:荊防敗毒散(ケイボウハイドクサン)

この処方に変えたところ、数日で咳症状が軽減しました。

考察

今までは通常の痰のない咳の場合は、麻杏甘石湯や麦門冬湯で症状を改善させることができていました。
しかし、ここのところ麻杏甘石湯のような麻黄剤では取りきれない咳も出てきているように思います。
他の方でも麻黄剤が効かず、四苦八苦した事例もありました。

荊防敗毒散は体表面の炎症(皮膚症状)から、鼻、咽頭、気道、肺にわたり炎症を鎮めてくれます。
今回の場合は上咽頭〜気道の炎症が強く、その炎症を抑えることが咳症状を改善するために必要でした。荊防敗毒散で気道の炎症を鎮めてくれたおかげで、のどの過敏さも抑えられて咳症状も改善したものと思われます。

今後も型通りではなく、臨機応変に症状を見極めて適切な処方を選んでいきたいと思います。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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