先日、調布市にあります神代植物公園にてバラを鑑賞してきました。
ちょうど5月は「春のバラフェスタ」が開催されていて、バラを見たさに多くの人で賑わっていました。
バラも素晴らしかったのですが、漢方薬を生業としている私としてはボタンやシャクヤクの花も綺麗で見惚れていました。
ボタンとシャクヤクは花も綺麗ですが、シャクヤクは根、ボタンは根の皮部が漢方薬の原料(生薬)として使われています。
ボタンとシャクヤクについては、Youtubeの音声配信でお話ししていますので、ご興味のある方はご視聴ください。
さて、バラやボタン、シャクヤクと同時期に花を咲かせるものとして、「ドクダミ」があります。
今回はドクダミについてのお話をしたいと思います。
ドクダミとは
ドクダミは、5〜6月頃になると湿った日陰に群がって生育し、白色の花を咲かせます。
ドクダミの花は、一見白色の十字形に配列した4枚の花びらだと思われますが、実は白い部分は花ではなく「*苞(ほう)」になります。
*苞とは花や蕾(つぼみ)の根元にある葉が変形した部分になります。
実際の花はとても小さく、黄色味を帯びており、多数の小花が集まって、白色の苞の中央部から上に突き出した形で存在します。
ドクダミは独特の臭いがしますが、これはドクダミに含まれる成分であるアルデヒドに由来するものです。
このアルデヒドには強い抗菌作用があり、生で用いる時は湿疹や水虫などの皮膚の炎症に用いられます。
ドクダミを乾燥させると、含有成分が変化して特有の臭いもなくなります。
そのため、「ドクダミ茶」として飲む場合も飲みやすい味わいになっています。
ドクダミを採取する時期は、ちょうど花を咲かせる5〜6月頃がよく、根っこを含めた全草を用います。
庭をお持ちの方はわかるかもしれませんが、ドクダミの駆除はとても大変です。
ドクダミは土の中で根茎を広げることで繁殖するため、根茎は地中で長く網の目のように張り巡らされており、それが地上と繋がっています。
地中での広大なネットワークを形成しているため、駆除しきれたと思っても一部の根茎が残ってしまうと、いつの間にかまた繁殖してしまいかねません。
人間側からすると非常に手強い植物ですが、ドクダミは子孫繁栄のための戦略としては、非常に理にかなった発達をしているといえます。
民間薬としてのドクダミ
ドクダミ、ゲンノショウコ、センブリは漢方薬の一種だと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、厳密にいうと漢方薬ではありません。
ドクダミとして使う場合は「民間薬(ミンカンヤク)」になります。
・1種類の薬草を用いる
・学問的な裏付けがなく、言い伝えや経験で用いられるもの
漢方薬
・原則2種類以上の生薬を組み合わせて用いる
・漢方理論に基づいて診断し、それに基づいて調合されたもの
「漢方薬について」詳しくはこちらをご覧ください。
このような違いがあり、ドクダミは古くから使われていますが、一般的に知られている使い方は民間薬になります。
学問的には漢方薬の方が優れていますが、だからと言って民間薬が決して使い物にならないわけではありません。
民間薬として使われることが多いドクダミですが、現代まで受け継がれているということは、その効果たるや決して侮れません。
ドクダミの名称
ドクダミという名称には諸説ありますが、毒が入っていそうだから「毒溜み」となった、あるいは解毒作用から「毒矯(た)め→毒矯み」となったと言われています。
毒矯めとは、「毒を矯めて除く」または「毒を抑える」という意味のことです。
ドクダミというのは和名(植物の日本名)のことで、生薬名(薬効がある部分を乾燥させて薬として用いる場合)は「十薬(ジュウヤク)」といいます。
十薬は「馬に食べさせると十もの薬効がある」ことを意味しています。
また、十薬は重要な薬としての意味をもつ「重薬」とも呼ばれています。
対して、中国では「魚腥草(ギョセイソウ)」という生薬名です。
腥とは生臭いという意味で、ドクダミの独特の臭気を現しているものと思われます。
十薬,重薬(ジュウヤク):日本の生薬名
魚腥草(ギョセイソウ):中国の生薬名
十薬の効能
中国の明の時代に著された『本草網目』には、内服での使用は記載されておらず、もっぱら外用薬として用いられていたようです。
日本においては、外用だけでなく内服としても用いられています。
先にも触れましたが、ドクダミは生で用いると抗菌作用があるので、外用薬として「化膿、水虫、やけど、汗も、湿疹、痔」などの化膿性炎症性疾患に用いることができます。
生だと特有の臭さがありますが、その臭い成分であるアルデヒドに解毒作用があります。
生の葉を揉んだり、火で少しあぶったりしたあと、化膿した部位に貼っておくと、膿が出て腫れも治るようです。
鼻炎や中耳炎の場合には、しぼり汁を綿棒にしみこませて患部に入れて治療することもできます。
ドクダミを乾燥させたものが十薬で、特有の臭さはなくなったものの抗菌作用も無くなってしまいます。
とはいえ、解毒、消炎作用を期待して、皮膚疾患に応用されています。
また、十薬には利尿作用もあることから、大塚敬節氏は「魚腥草(十薬)、釣藤鈎、黄耆」を加減して、高血圧患者に使用していたり、尿路感染症にも応用されたりしています。
しかし、現代の日本においては、漢方薬として十薬(魚腥草)を配合して使うことはほぼなく、民間薬として単体で用いる機会の方が圧倒的に多いです。
保険診療で使用されているエキス製剤にも、十薬が配合された漢方薬は皆無です。
一方の中国では、魚腥草を漢方薬(中薬)として用いており、特に肺癰(ハイヨウ)と呼ばれる肺の化膿性疾患に用いられます。
また、魚腥草には抗菌作用だけでなく抗ウイルス作用もあることから、中国ではSARSやコロナウイルスに対しても積極的に中薬の中に組み込まれて、使用されていました。
まとめ
ドクダミは馴染みのある植物ではありますが、古くから日本では民間薬として用いられており、中国においては記憶に新しいコロナウイルスの治療にも応用されていたりします。
今後、新たなパンデミックが起きた時にも活躍できるポテンシャルを秘めた植物でありますので、日本でももっと活用されても良い生薬だと思います。
東南アジアでは、ドクダミは食用として一般に使われています。
サラダで食べたり、煮て食べたりすることもあるようで、独特の臭みが気にはなりますが、日頃から食しておくことで自然と感染の予防になりそうです。
しかし、ドクダミには冷やす性質があるので、いくら民間薬だからといってむやみやたらに摂取するのは反って身体の不調を来す恐れもあるので、くれぐれもご注意ください。
参考書籍等
『生薬とからだをつなぐ / 鈴木達彦』P76-79
『漢方のくすりの事典 / 鈴木洋』P215
『くらしの生薬 / 後藤實』P10-12
『読んで好きになる漢方薬の話 / 吉富博樹』P40-41
『臨床薬能論 / 松原圭沙彦』P106-107
『生薬の玉手箱 No.381 / ウチダ和漢薬』ドクダミ








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