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症例紹介

症例112 再発性バルトリン腺膿瘍に竜胆瀉肝湯合腸癰湯が奏功した症例

ご相談内容

相談者:20代後半 女性
相談内容:繰り返すバルトリン腺膿瘍を改善してほしい

2ヶ月ほど前に陰部が腫れて痛くなり、化膿してきたため、婦人科を受診したところ、バルトリン腺膿瘍と診断されました。

抗生剤を服用して、改善したものの、今月はさらに悪化して陰部がパンパンに腫れて痛み、化膿が生じたため、再度抗生剤を服用しました。

この2回とも、月経が始まって1週間経った頃に発症しています。

3ヶ月前は、仕事等で忙しくストレスもかかっていたため、体調はよくありませんでした。

それが原因かはわかりませんが、また同じことを繰り返すのは怖いので漢方薬で体質改善できればと思い来局しました。

*バルトリン腺炎やバルトリン腺膿瘍について詳しくは、以下のコラムをご参照ください。

コラム「バルトリン腺炎 / バルトリン腺膿瘍と漢方薬」

処方選択

バルトリン腺とは、女性の膣の入り口にある小さな分泌腺で、性行為の際に腟内を滑らかにするための潤滑液を分泌する役割があります。

この分泌液の出口が何らかの要因で詰まり、液が袋の中にたまってピンポン玉やエンドウ豆のように腫れたのが「バルトリン腺嚢胞」で、さらに細菌感染して膿がたまった状態が「バルトリン腺膿瘍」です。

程度によりますが、強い痛みと腫れ、赤み、熱感などを伴い、歩行困難になることもあります。

今回のケースでは、来局した時にはすでに症状は治っていたため、治療ではなく再発予防でのご相談です。

バルトリン腺膿瘍の発症時には「痛み・赤み・熱感・化膿」と典型的な症状を呈しており、東洋医学では「下焦湿熱(ゲショウシツネツ)・熱毒(ネツドク)」に該当します。

下焦:身体の下部のことで、陰部は下焦に該当
湿熱:「湿気と熱」を帯びた状態のことで、「腫れ(湿)」と「熱感(熱邪)」がこれに該当します。
熱毒:化膿性炎症のこと

下焦湿熱に用いる漢方薬は様々ありますが、バルトリン腺膿瘍には「竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)」が適切と考えられます。

それは、竜胆瀉肝湯の出典である『薛氏医案』に「陰部の腫れや痛み、囊癰で熱毒が盛んな状態に竜胆瀉肝湯」を用いるとされていることが根拠となります。

竜胆瀉肝湯には、出典にある竜胆瀉肝湯とは別に一貫堂の竜胆瀉肝湯があり、配合生薬が異なっています。

今回のケースでは再発を繰り返しており、一度炎症を鎮静化してもとりきれていません。

これは、炎症の火種がくすぶっている状態で、下焦に化膿性の炎症が生じやすい「体質」があると考えることができます。

このような化膿性炎症体質を一貫堂医学では「解毒症体質」とよび、とりわけ下焦の慢性炎症を鎮めるための漢方薬として、一貫堂竜胆瀉肝湯を用いるとされています。

しかし、これだけでは化膿性炎症が取り切れるか心配なため、さらに化膿性炎症を抑える作用のある「腸癰湯(チョウヨウトウ)」を一緒に用いることにしました。

処方)(一貫堂)竜胆瀉肝湯+腸癰湯

服用を開始して、半月後に月経がきて、1週間がすぎてもバルトリン腺膿瘍は発症しませんでした。

継続して服用し、3ヶ月間連続で症状が出ないことを確認して服用を終えました。

まとめ

漢方薬は症状が起きた直後の「急性期」、時間が経過した「慢性期」、症状がなくなっている「寛解期」とがあります。

同じ病気であったとしても、それぞれのステージに応じて病態は異なっており、適切なアプローチが必要となります。

今回は「寛解期」での漢方薬の服用でしたので、体質に合わせた漢方薬を選択したところ、再発を予防することができました。

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コラム「バルトリン腺炎 / バルトリン腺膿瘍と漢方薬」

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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