相談内容
相談者:60代前半 女性
相談内容:上半身のあちこちに出る湿疹を改善して欲しい
痒みが出始めたのは、1ヶ月ほど前からです。
小さめの湿疹で、腕・背中・下半身・脇にブツブツと出現します。
痒みが強く、そのせいで夜中に目が覚めてしまい、まともに睡眠がとれません。
引っ掻くと、黄色の滲出液が出て、触るとイボのように硬くなっています。
ムヒを塗ると一時的に痒みが和らぐので、その間に眠るようにしています。
しかし、範囲が広くてムヒだけでは間に合いそうにはありません。
病院からは、プレドニンや抗アレルギー薬等が処方されましたが、イマイチ効果を実感できていません。
処方選択
痒疹や蕁麻疹のような、痒みを強く伴う皮膚疾患には、私は消風散(ショウフウサン)を第一選択薬として用います。
消風散は読んで字のごとく、「風を消す散剤」であり、この「風」というのは「痒み」のことです。
『諸病源候論』(610年に出典)に「邪が皮膚に客し、風が掻(さわ)げば則ち痒し」とあり、風(風邪:フウジャ)によって痒みが生じていると、古代の人は考えました。
そのため、消風散は「風を消す薬」、すなわち痒みを鎮める漢方薬であり、実際に皮膚病の痒みに有効であることが多いです。
そこで、まずは消風散を使ってみる事にしました。
処方1)消風散
服用を開始してから2週間で、症状は7〜8割ほど改善しました。
その後も服用を続け、3ヶ月ほど順調でしたが、突然症状が再燃したとの連絡がありました。
すぐにお越しいただいて、皮膚を見せて頂くとまた初期の頃と同じような状態に戻っていました。
方向性としては、消風散で間違いなさそうですが、炎症がひどいと考えて黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)を追加しました。
処方2)消風散+黄連解毒湯
2週間服用していただきましたが、まったく変化はないとのことでした。
そこで、再び状態を確認しました。
すると、皮膚が悪化すると同時に持病の喘息も悪くなってしまったとのことでした。
今は吸入剤を使っていて、少し落ち着いたようですが、それでも喘息の状態もあまりよくありません。
前回処方する際に、喘息が悪化していたことを確認し忘れていたことが悔やまれました。
おそらく、喘息の悪化が皮膚にも影響を及ぼしたのでしょう。
中医学では、皮膚は肺の領域と考えられているため、喘息の悪化は肺の管轄である皮膚にも容易にダメージを与えていたのだと考えられます。
そこで、喘息を改善でき、湿疹も改善できる越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)を使う事にしました。
越婢加朮湯は大塚敬節が皮膚病に応用し、「滲出液の多いもので陽証(分泌物濃厚)で、湿潤するもの」に用いるとされています。
また越婢加朮湯の「麻黄-甘草」は甘草麻黄湯(カンゾウマオウトウ)で、喘息にも応用されているため、湿疹と喘息の両方に対応できると考えて、配合しました。
処方3)越婢加朮湯+消風散
2週間服用したところ、湿疹は見事に落ち着き、喘息も落ち着いてきたようです。
このまま服用を続け、5ヶ月服用したところで漸次減薬して服用を終えました。
まとめ
今回は一度は状態が良かったものが、他の病気によって体調を崩したことで、それに引き続き元の状態に戻ってしまった症例をご紹介しました。
状態に変化があったときは、思い込みで処方を考えるのではなく、問診を重ねて的確に病態を捉えることが大切だと実感した症例でした。








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