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症例紹介

症例90 汗疱 / 異汗性湿疹、手湿疹に漢方薬が奏功した症例

汗疱は手指の側部や手掌、足底に、突然小さな水疱が散在して多発する疾患です。

左右対称性で数日内に水疱がなくなり、今度は乾燥して皮がむけます。

強い痒みがあり、水疱⇄ガサガサ(乾燥)を繰り返すこともあります。

原因ははっきりとわかっていませんが、春〜夏にかけて汗をかきやすい季節に生じて、秋になると軽快することもあります。


相談者:30歳 女性
相談内容:手の水疱と痒みをなんとかして欲しい

昨年の6月頃から、手掌と足裏に痒みを伴う水疱ができる様になりました。

その後、皮膚が硬くなり乾燥して皮がめくれてきます。

痒みは常にありますが、特に仕事が終わり家に帰ってくると強くなます。

病院では汗疱と診断され薬を使っていましたが、あまり改善が見られなかったので漢方薬を試してみたいと思い来てみました。


慢性化した汗疱のご相談でしたが、正直難しいのではないかと当初は思いました。

皮膚疾患の場合は、全身の体質を考慮して漢方薬を選択するよりも皮膚の局所の状態(赤み度合い・水疱度合い・乾燥度合いなど)から漢方薬を選択することが多いです。

ですので、今回の場合もまずは皮膚の状態を確認して漢方薬を選択すれば良いのですが・・・水疱と乾燥という二つの異なる症状が入れ替わり生じるので、水疱と乾燥のどちらに焦点を当てて漢方薬を使えば良いのかが分かりづらいのです。

水疱の場合は乾かしていくことが必要ですし、乾燥している場合は潤す必要があります。

ということで、「汗疱」の漢方薬治療法について、書籍で確認してみました。

『[簡明]皮膚疾患の中医治療 / 東洋学術出版社』P91〜92では「湿熱停滞・陰虚内熱・肝鬱湿熱」のいずれかの病態があることが記載されています。

やはり、病態も水疱をメインにした「湿邪」、乾燥をメインにした「陰虚(血虚)」の両方が記載されています。

そこでまずは、湿邪にも陰虚にも対応できる皮膚疾患に用いる漢方薬を選択しました。

処方)消風散(ショウフウサン)

しかし、1ヶ月ほど使用してもまったく皮膚には変化がありません。

そこで湿邪と皮膚の赤み(炎症)に着目して十味敗毒湯(ジュウミハイドクトウ)や黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)などを投与してもこれもまた不発に終わります。

反対に皮膚に潤いを与えながら皮膚を改善する作用のある当帰飲子(トウキインシ)を使いましたが、これもまったく意味をなしませんでした。

ここまで色々と皮膚表面に着目して漢方薬を使ってきましたが、まったく反応がなく正直困り果てていました。

そこで、いよいよ別のアプローチとして全身状態から漢方薬を決めていく必要があると考えました。

この方の体質をもう一度つぶさにカウンセリングをさせていただき、体質的なアプローチのもと漢方薬をお出ししたところ、少しずつ水疱ができる範囲が狭まってきました。

最終的には水疱がまったくできなくなり、痒みも消失したので漢方薬の服用も終えました。


結局、ここまでくるのに半年以上が経過してしまいました。

もしかしたら、何もしなくても自然に治っていたのかもしれません。

ですが、一般的な皮膚疾患として漢方薬を選択しても効果を実感していただけないことがあるということ、その様な時には別のアプローチから突破口が見出せることを身にしみて体験した症例でした。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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