漢方とはなんなのか。
私が漢方の勉強を始めてから、10年になろうとしている。
10年も続けていれば、そろそろ一人前になっても良いのであろうが、私の能力が低いせいか、まだまだ漢方の真髄にはまったく届きそうもない。
この頃は、本に書いてある治療法と実際の患者さんとの間に大きな溝を感じてしまい、漢方の勉強に身が入らない日が続いていた。
そんな折、たまたまほぼ日刊イトイ新聞で室伏広治さんと糸井重里さんが対談している記事(2019年)を読んでいたところ、ハッとしました。
(室伏さん)
「たとえば、江戸時代には飛脚という職業がありました。
いまは体を駆使する職業は減ってきてますけど、
明治時代くらいまではみんなもっと体を動かして、
それぞれの職業に運動や技術があったと思うんです。
それって、本来は、「感覚を伝承していく」
というようなものだったと思うんですけど、
それがいまは途切れてしまっているんですね。」
(糸井さん)
「感覚、動き、筋肉。
感じることが、まず絶対に必要なんですね。
あの、ぼくらはスポーツを
やっているわけではないんですけど、
ものをつくったり、アイディアを出したりというときに、
まず前提として大事なのは「感じる」ことだって、
ぼくはいつもよく言ってるんです。
集中して考えすぎちゃうとすぐロジックになって、
「感じる」と「思う」が犠牲になるんですよ。」
漢方は医学である以上、感覚だけで治療することは決してできない。
しかし、だからと言って教科書通りに、型通りに病気を患者さんに当てはめていっても治療はできない。
漢方の師匠も「感じること」の大切さを常日頃仰っていた。
知識を詰め込めば詰め込むほど、知識にとらわれてしまうようになる。
ただ単に、過去の偉人たちが残した知識や経験をインプットするのではなく、背景をふまえて理解すること、そして「感じること」を大切にしなければならない。
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