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症例紹介

症例36 コロナ感染回復後の倦怠感と咳に味麦益気湯

2023年8月現在でも、コロナウイルスの感染はなくなっていません。
ただし、現在ではコロナ治療薬も出ており、治療の選択肢が広がりました。
ですが、コロナ感染後熱は下がったものの体調不良を訴える方が当薬局にはいらっしゃいます。
今回は、コロナ感染後、倦怠感が抜けない方のご相談になります。

相談内容

50代前半女性
相談内容:コロナ感染後の倦怠感

2023年8月初旬に発熱し、検査をしたところコロナウイルスに感染していることがわかる。
症状は発熱に加えて激しい咳込みと多量の痰が出るとのこと。
病院では、コロナ治療薬のパキロビッドが処方される。
数日後には熱が下がったものの、痰が絡んだ咳が続いている。
加えて、今までにないくらいの激しい倦怠感におそわれる。
病院では、咳と痰の治療として柴朴湯(サイボクトウ)を処方され、1週間ほど服用するも一向によくならない。
少し動いただけで、汗が止まらなくて、夜中に身体の熱感を伴う。
頭がフワーとして、気分が悪い。

このような状態が数日間続いているため、なんとかして欲しいとのこと。
食欲はもとに戻りつつある。

持病:気管支喘息がある

処方選択

コロナウイルスに限らず、一般的な風邪とされるウイルスやインフルエンザウイルスに感染した場合でも、免疫機能を上げるために、感染後は体力を損傷します。
今回のケースでも同様に、体力の損傷が著しい状態におちいっています。
この方はもともとよく運動する方で、体力は割とある方だと思っていましたが、長引く咳き込みも体力を奪う要因となっていると推察されます。

本人は咳よりも倦怠感の方がつらいとおっしゃっていましたが、咳も放置していては喘息に発展しかねませんし、咳により体力の損傷を助長させてしまう可能性もあります。
反対に、体力面を放置すれば心肺機能に影響して、咳を長引かせてしまいます。
この場合は、どちらを優先して漢方薬を選択すべきでしょうか。

咳と倦怠感のどちらも、お互いの症状に影響を及ぼすので、今回は咳と体力の両方を同時にケアする必要があると考え、両者に配慮した処方にしました。

処方:味麦益気湯(ミバクエッキトウ)

5日分服用して、倦怠感は薄らいでいき、少しずつ趣味の運動も再開できるようになりました。咳も減って、7割くらい治ってきました。
さらに7日分追加して、咳の改善と体力の底上げをして、廃薬となりました。

味麦益気湯について

味麦益気湯は胃腸を元気付けて、体力を補う補中益気湯に肺を潤して咳を鎮める五味子(ゴミシ)と麦門冬(バクモンドウ)を加えた処方になります。

味麦益気湯=補中益気湯+五味子+麦門冬

一般に補中益気湯は胃腸を元気付けて体力を補うとされているので、食欲不振がある方に用います。
ですが、今回のケースもそうですが食欲があって食事も取れている方でもこの処方は有効に働きます。
結局のところ、食事により栄養を摂取したとしても、身にならなければ意味がありません。

大事なことは、食べた量ではなく、食べたものが形として肉付いたり、エネルギーになっていないと意味がないということです。

補中益気湯を服用することで、胃腸を元気付けて、食べたものをしっかりと栄養に結びつけることができます。これにより、倦怠感や頭のふらつき、夜間の熱感(体力不足による体温調節の乱れ)を改善します。
加えて、麦門冬と五味子は失われた体液を補って身体を潤すと同時に、肺の機能を向上させて咳を鎮めます。

このように、漢方薬は身体の不足を補うことができるので、今後もコロナだけでなく風邪症状をこじらせた場合でも、漢方薬が活躍する場面が出てくるのではないかと考えられます。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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