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症例紹介

症例35 生理周期の遅れに温経湯

生理周期が25〜38日に当てはまらないものが、生理不順とされます。たとえ、生理周期が正常範囲内でも、毎回バラツキが大きく、生理周期が予測できない場合も生理不順に該当します。

生理の状態は身体の状態を現しており、生理不順になってしまえば、生理がつらくなるだけでなく、身体全体の調和を乱してしまいます。
今回の症例では一度処方修正をすることにより、改善したものになります。

相談内容

30代前半女性
相談内容:月経不順(遅れがち)

月経は10年以上不規則な状態が続いている。
出産前はおおよそ28〜35日周期であったが、たまに2〜3ヶ月こないことがあった。
5年前、出産を経てからは生理不順が悪化して、周期が遅れることが増えてきた。
現在も1ヶ月半ほど生理がきていないが、珍しいことではない。
産婦人科では、子宮や卵巣の病気は指摘されていない。

その他の体質:
もともと、胃が弱くちょっとしたことで胃を悪くしやすい。
油物やコーヒーでも胃もたれや胃の不快感が生じる。
疲れやすく、すぐに横になる。
やや痩せ型。

処方選択

月経前のイライラや落ち込みなどの症状もあったので、まずは逍遥散(ショウヨウサン)をお出ししました。
服用して2週間ほどで月経がきました(前回の月経から2ヶ月程)。

この時点ではまだ服用が2週間程なので、月経周期の改善は不明でした。
しかし、今回の月経では月経前のイライラや落ち込みは軽減されていましたので、ホルモンバランスが整ってきたのかと思い、このまま逍遥散をもう1ヶ月ほど服用いただきました。

しかし、1ヶ月経っても月経はきません。そのまま服用いただき、次の月経がきたのは前回の生理から54日後でした。
逍遥散により、生理前のイライラや落ち込みは軽減されたものの、生理不順は改善されませんでした。

もちろん、長年のお悩みなので、漢方薬を服用してすぐに改善される訳ではありません。
このまま服用を続けるか、、、いや、なにか足りないような気がします。

もう一度、患者さんの情報を整理すると、
長年の生理不順に加えて、出産を経験、胃腸の虚弱・・・

そうです。
足りないのは「身体の虚弱を補うことと、子宮周りの血流障害を改善させること」。
これらは、逍遥散ではできません。

そこで、処方を温経湯(ウンケイトウ)に変更しました。
温経湯に変更してからは、生理周期は39日→33日→34日と安定してきました。

このままもう少し様子を見てみたかったのですが、患者さんの都合で一度ここで服用を終了することになりました。

逍遥散と温経湯

今回の生理不順は生理前のイライラや落ち込みなどのPMSに引っ張られて、気の巡りを改善する逍遥散を選択しました。服用によりPMSが軽減したので、そのまま服用を続けていても生理周期は安定したかもしれません。ですが、逍遥散では生理不順の大きな要因である血にアプローチする作用が不足しています。

温経湯は名前の通り、経絡(ケイラク)を温める漢方薬です。経絡とはざっくりといえば血管に該当します。身体を温めて、血の巡りを改善する作用が主にありますが、それだけではなく胃腸の虚弱や虚弱な身体を元気付ける作用も持ち合わせています。

そのため、気の巡りを改善(おもにPMSの改善)する逍遥散よりも、温経湯の方がこの患者さんの体質には適していたと考えられます。

まとめ

その後の経過は不明ですので、温経湯が最適と断言はできませんが、少なくとも3ヶ月間の生理周期が安定していたので、間違いではなかったと言えるかと思います。
生理不順の場合は、通常3ヶ月ほどで改善をめざしますが、願わくば6ヶ月以上の安定を確認したいところです。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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