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不妊症の漢方薬治療に基礎体温は大切です

基礎体温は、安静状態で計測した時の体温のことです。
基礎体温を測ることで、おおよその排卵時期や月経サイクル、妊娠の確認などができます。

しかし、現在では基礎体温を測らなくても、産婦人科で超音波検査をすれば排卵の時期を確認することができます。また、基礎体温は、測り方やちょっとした温度変化などで誤差が出やすいことや正確性に欠けることがあることから、基礎体温を測定する必要がないと言われたりもしています。

ですが、不妊治療で漢方薬を処方する場合、基礎体温から得られる情報が処方選定の参考になることがあります。
そのため、可能な限り基礎体温をご提示いただけると幸いです。

このコラムでは、基礎体温の見方や基礎体温の乱れから、どのような原因が考えられるかを漢方の視点で説明していきます。

なぜ基礎体温をつけた方が良いのか?

基礎体温をつけた方が良い理由には、2つあります。

①ご自身で自分の身体の状態を把握してもらう
②基礎体温の状態から、身体の乱れを見つけることができる

基礎体温をつけることで、自分の身体の状態と向き合うことになります。
そのため、基礎体温を測ることで心身に異常を感じていなくても、排卵や月経の時期が正常なのかどうかを知ることができます。

もし、基礎体温に乱れがある場合は、漢方的な視点でどのような身体の異常があるのかを推察することができます。

ただし、ホルモン治療を行っている場合は、薬の影響で基礎体温が正されてしまいます。
そのため、ホルモン治療を行っている場合の基礎体温は、本来の身体の状態を反映していないので、ホルモン治療を受ける前の基礎体温を参考とします

正常な基礎体温とは

正常な基礎体温は、以下の表のようなグラフになります。

正常な基礎体温
<ポイント>
①排卵期を境に低温期と高温期の二相性になっている
②低温期と高温期がそれぞれ14日前後に安定
③低温期は36.2〜36.5℃、高温期は36.7〜37.0℃の範囲
④低温期と高温期の差が0.3℃以上

これらを満たしているのが正常な基礎体温となります。

基礎体温の乱れから身体の状態がわかる

基礎体温は身体の状態を反映しているので、正常な基礎体温表から外れる場合は何かしらの身体の乱れがあると考えられます。
基礎体温にはいろいろなパターンがありますが、おおむね5つのパターンに分けることができます。

<基礎体温のパターン>
①低温期が長い
②低温期が短い
③起伏が激しい
④高温期への移行が緩やか
⑤二相性にならない

①低温期が長い

低温期は排卵に向けての準備を進める時期です。
低温期が長くなってしまうのは、卵胞が発育するための栄養が不足した状態です。
漢方では、卵胞の栄養となる血(ケツ)・精(セイ)の不足が原因と考えます。

低温期が長い

②低温期が短い

低温期が短かったり、36.4℃以上に高い場合は卵胞の育ちが悪くなります。
このような場合は、身体に余分な熱がたまっている状態です。
もしくは身体を冷やす機能が衰えて、オーバーヒートしている状態です。
漢方では、湿熱(シツネツ)、陰虚(インキョ)、内熱(ナイネツ)と呼ばれる身体に熱がこもった病態と考えます。

低温期が短い

③起伏が激しい

低温期、高温期ともに起伏が激しく安定しない場合は巡りが悪い状態です。
漢方では、感情の起伏が激しい場合は気滞(キタイ)といって、気の巡りが悪くなって生じていると考えます。
同様に基礎体温の起伏が激しい状態も、気滞(キタイ)や血瘀(ケツオ・血の巡りが悪い状態)が原因となることが多いです。

基礎体温の起伏が激しい

④高温期への移行が緩やか

正常な基礎体温の場合、排卵を境にしてスムーズに高温期へ移行します。
ですが、ゆっくりと体温が上昇して、なかなか高温期へ移行しない場合もあります。
このようなケースでは、排卵がうまく行われていないケースが多いです。
排卵がうまく行われていない原因としては、卵胞の成長不足(陰血の不足)や血流障害が考えられます。
漢方では、陰血の不足、血瘀(血流障害のこと)が原因になります。

高温期への移行が緩やか

⑤二相性にならない

低温期と高温期の境目がわからず、排卵日が特定できなかったり、もしくは無排卵である場合が多い波形です。
この場合は、陰血・精の不足、気滞、血瘀、陽虚(身体のエネルギー不足)など複数の原因が考えられ、基礎体温だけでは特定が困難です。
月経状況に加えて、全身状態、生活状況などを考慮して、原因を特定する必要があります。

非二相性

まとめ

基礎体温を測ることで、ご自身で身体の変化を把握できるだけでなく、漢方薬の処方選定の参考にもなります。
もちろん、基礎体温だけで処方選定するわけではなく、その他の月経状況や全身状態を確認して、総合的に判断して、処方を決定します。
不妊症でお困りの方は、まずは基礎体温をつけることから始めてみましょう。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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