「知人から漢方薬が良いと教えてもらった」
「なるべく病院のお薬は飲みたくない」
「病院での治療に満足がいかなかった」
「根本から体質改善してみたい」
「家の近くにある漢方薬屋さんが気になる」
など、この記事をご覧になっている方は、さまざまな理由で漢方薬に興味をもってくださったのだと思います(ありがとうございます)。ですが、いざ漢方薬を買おうと思った時に、どこで買えば良いのか、どうしたら自分に合う漢方薬を見つけることができるのか、お悩みの方もいるかもしれません。
現在は、漢方薬は病院や漢方薬局だけでなく、インターネット通販やドラッグストア、病院でも手に入れることができますが、この記事では漢方薬局で購入を検討されている方に、漢方専門の薬剤師がおすすめの漢方薬局の選び方をご紹介します。
具体的な手順は次のようになっています。
<漢方薬局の選び方のおすすめ手順>
step1 漢方薬局に行く必要があるか考えてみる
step2 専門性の高い漢方薬局を選ぶ
step3 価格の確認
step4 信頼できるかどうか
step5 通いやすい場所かどうか
これから、一つずつ順番にご紹介していきます。
step1 漢方薬局にいく必要があるか考えてみる
さっそく、漢方薬局の選び方をご紹介していきたいのですが、その前に大切なことがあります。
それは、「どんな目的で漢方薬局にいくのか」をはっきりとさせることです。
ちょっとした咳や軽い胃もたれなどを改善するために、まずは気軽に漢方薬を試してみたい方でしたら、漢方薬局を選択しなくても、ドラッグストアやネット通販で購入するもので、十分事足りることもあります。
確かに、自分で漢方薬を選ぶとなると不安かもしれませんが、インターネットで情報を集めたり、ドラッグストアであれば薬剤師や登録販売者の方に相談することもできます。お手軽さで考えた場合には、それでも十分かと思います。
<お手軽さ順>
ネット通販・ドラッグストア
↓
保険適用となる病院の処方
↓
保険適用ではない漢方薬(漢方薬局・漢方クリニック)
このように、下に向かうにしたがって、漢方薬の専門性が高くなりますが、その分費用が高くなるため、初めての場合はハードルが高くなります。そのため、最初から絶対に漢方薬局に行かなければならいということはなく(もちろん来ていただきたいですが…)、無理をせずにお手軽に試してみることも選択肢とてしては間違いではありません。
ドラッグストア・病院・漢方薬局で手に入る漢方薬の違いについては別の記事にまとめますので、ここでは割愛させていただきます。
では、どのような方が漢方薬局を選択するのがよいのでしょうか。
漢方薬局をおすすめする人
・病院で治療しても改善が見られない場合
・保険適用の漢方薬やドラッグストアで漢方薬をすでに使ったことがある
・しっかりと時間をかけて相談に乗ってほしい場合
・自分に合った漢方薬を見つけたい方
このように、今までの治療が報われなかった方やきちんと専門的にみてもらいたい意図がある方は漢方薬局をおすすめします。
step2 専門性の高い漢方薬局を選ぶ
だいぶ前置きがながくなってしまいましたが、ここからが本題になります。みなさんが漢方薬局に求める一番の理由は、「身体の不調を改善して欲しい」ことだと思います。そのためには、漢方薬に精通した専門性の高い漢方薬局を選ぶことが大切です。
漢方薬局はどこでも一緒ではないの?
そう考える方もいらっしゃるかもしれませんが、実は漢方薬局はお店によって違いがあります。
漢方薬局はどこでも同じではない
漢方薬局は病院とは違って、薬局ごとに専門性の度合いの振れ幅が大きくなります。
病院の場合は検査をして病気を特定し、それに見合った治療をガイドライン(科学的根拠に基づいて最適と考えられる治療法)に沿って行います。つまり、客観的なデータ(数値や画像)に基づいた治療法があらかじめ決まっているので、病院によって治療法が大きく変わることはあまりありません。言い換えると、よほど特殊な治療を行っていないのであれば、病院は一定以上の治療が担保されているともいえます。
ですが、漢方薬の治療には明確なガイドラインはなく、個々の先生の経験や見立て、流派によって、同じ病気でもまったく違う処方が出されることも珍しくありません。それゆえに、病院以上に慎重に検討した上で薬局を決めていく必要があります。
漢方薬局の専門性を見極めるポイント
ここでいう専門性の高さとは、「品質の良い生薬と確かな処方を提案してくれる」ことを意味しています。正直なところ、専門性の高さは実際に行ってみないとわからないです。ですが、いくつかのポイントがあるので、私の考える専門性の高い漢方薬局の特徴についてご紹介します。ホームページを参照する際やご自宅の近くにある漢方薬局でしたら、中を除いてみてみると良いかもしれません。
1 煎じ薬を取り扱っている
2 なるべく漢方薬以外の取り扱いをしていない
3 価格が明示されている
それでは一つずつ説明します。
1 煎じ薬を取り扱っている
漢方薬は生薬(薬草や動物などを薬物として利用したもの)を組み合わせて、効果を増強したり副作用を軽減したりします。
煎じ薬とは、漢方薬をグツグツと煮出してお茶のように服用する形態のものです。病院や薬局で手に入る漢方薬は粉薬が多く、煎じ薬には馴染みがないかもしれません。煎じ薬は直接生薬から成分を抽出するため、粉薬や錠剤などと比べて有効成分濃度が高いと言われています。そのため、同じ漢方薬でも粉薬を用いたら効果がなくて、煎じ薬に変えたら症状が改善することもあります。
ですが、煎じ薬は取り扱いが難しく、専門的な知識がないと正しく運用することができません。
<煎じ薬の運用>
生薬の品質が大切
同じ生薬でも、産地や栽培方法によって、品質に大きく差が出ます。そのため、信頼できる業者から質の高い生薬を取り寄せている必要があります。
個々の生薬の特徴を把握している
漢方薬は生薬を一つ一つ組み合わせて、一つの処方になります。そのため、個々の生薬の特徴(作用・副作用など)について、理解していないと、正しく運用することができません。
このように、煎じ薬をお出しするには高い専門性が要求されます。そのため、煎じ薬の取り扱いがあるところは漢方薬についての知識が豊富である可能性が高いといえます。
煎じ薬について詳しくは、「煎じ薬とは」をご参考ください。
2 なるべく漢方薬以外の取り扱いをしていない
漢方専門薬局とうたってはいるものの、健康食品やサプリを勧める薬局も中にはあります。もちろん、患者様の症状が改善するのであれば、どのようなものを用いても問題はないです。ただ、漢方薬の専門性という観点から言うと、漢方薬だけに特化している方が専門性が高いように感じます(かなり偏見がありますが)。
例えると、みなさんが本格的なハンバーグを食べたいなと思った時、ファミリーレストランか、それともハンバーグ専門店で食べたいかと考えていただけるとわかりやすいと思います。
3 価格が明示されている
漢方薬は、価格が高いと思われている方も多いと思います。確かに自費での扱いになるため、保険適用のお薬と比べると価格設定は高めになります。また、薬局ごとに値段はまちまちで、だいたいが1日あたり300〜1,000円くらいと幅があります。ですが、薬局によってには値段の記載がないところもあるので、ご注意ください。値段が設定されていないと症状によって処方の数がどんどん増えていく可能性があり、金銭の負担が予想よりも高くなってしまうこともあります。気になる漢方薬局がありましたら、おおよその価格を確認してみることをオススメします。
漢方薬はたくさんの種類を飲めば飲むほど、効果が上がるわけではありません。腕の良い医療者であるほど、処方はシンプルになっていきます。それは、病気の本質を捉えることができるため、少ない処方で症状を改善することができ、結果的に費用の負担が少なくすみます。
step3 料金の確認
先ほどの価格説明でご紹介しましたが、どこまでの費用が捻出できるかも選ぶポイントになってきます。症状や体質によって漢方薬の服用期間は異なるので、どれくらい服用する必要があるのかは一概に言えませんが、私の経験では慢性病の場合は1ヶ月〜1年くらい(だいぶ幅がありますが・・・)の治療期間になることが多いです。また、症状が安定した後に再発予防や体調を維持するために長く服用を続けたい方も、料金の目安(無理なく継続できる価格)を調べておきましょう。
ただ、難しいのが一概に料金が安いのが良いとも限りません。多少料金が高くても、その分早く症状が改善すれば結果的には安くすむ場合もあります。
ですので、判断が難しいかもしれませんが、極端に高かったり安すぎず、ご自身の負担が大きくなりすぎない料金のところを選ぶことをオススメします。
step4 信頼できるかどうか
口コミの数が多い、評判が良いところは安心感がありますね。確かに、そのような高評価の漢方薬局は良いところである可能性はあるので、候補にあげられると思います。ですが、評価が高いところがご自身にあっているかどうかは、また別の問題です。ホームページ等で店内の雰囲気やコンセプト、スタッフの写真などをみていただき、「この先生だったら信頼できるな・話しやすそうだな」と思えるところが良いでしょう。その際に、あまり肩書きに囚われすぎないことも大切です。
最終的には直感に頼るという、なんとも身も蓋もないアドバイスですが、とても大切なことです。というのも、漢方薬局ではカウンセリングをもっとも重視しており、だいたい初回は30〜60分ほどお身体のことを相談します。ですので、安心してご自身のお身体について話ができるのか、お身体を預けることができるのかはとても大切な要素になります。このフィーリングがマッチしないと、安心して通い続けることができませんし、前向きに治療に取り組むことができません。ですので、最終的にはご自身の直感を頼りに選んでみることが大切です。
step5 通いやすい場所かどうか
最近は、さまざまな薬局でオンライン漢方相談も行われるようになってきました。ですので、今までは通いたくても通えなかった方も、遠方の漢方薬局に相談することも容易にできるようになりました。オンライン漢方相談の恩恵は大きく、今後も広く活用されることと思います。ですが、もしオンライン漢方相談と対面での漢方相談をどちらかをオススメするなら、現時点では可能な限り対面でのご相談をおすすめします。
漢方では、お顔の表情やお声、舌の状態など、カウンセリングのみならず視覚情報や聴覚情報など複合的な情報が必要となってきます。そのため、実際にお会いできるのであれば、お店で対面した方がより多くの情報を共有することができます。
対面でのカウンセリングをご希望の場合は、できるだけ通いやすい漢方薬局の方が便利です。数か月、長ければ数年通うことを考えると、利便性は無視できないポイントとなります。
まとめ
以上、おそらく独断と偏見が多分に入っていますが、わたくしが考える漢方薬局の選び方になります。以下の5つのポイント参考にしていただき、少しでも漢方薬局を選ぶ際のヒントになれば幸いです。
step1 漢方薬局に行く必要性があるのかを確認する
step2 専門性が高い漢方薬局を選ぶ
step3 料金の確認
step4 信頼できるかどうか
step5 通いやすい場所であること
この記事の執筆者:三鷹の漢方薬局 Basic Space 今井啓太
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