漢方について

病院で処方される漢方薬と薬局の漢方薬の違い・選び方

現在では、漢方薬は病院で処方されるものばかりではなく、ドラッグストアや漢方薬局、ネット通販でも購入することができます。そのため、これから漢方薬を初めてみたい方には、以前より気軽に始めやすくなっています。ですが、同じ漢方薬の名前であっても、病院で処方してもらうものと薬局で購入するものでは違いがあります。

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えっ、同じ名前の漢方薬なのに、違うの・・・?

もちろん、同じ名前の漢方薬ですので、大部分は一緒なのですが、「含まれている成分の量」・「金額」は病院で処方されるものと薬局で購入するものとでは違いがあります。また、病院と薬局では取り扱うことができる品目数にも違いがあるのです。

そこで、この記事では、

漢方薬を試してみたいけど、どこで購入するのが良いのかわからない」
「病院で処方された漢方薬と同じものをドラッグストアで売っているけど、違いがわからない」

このような方のために、病院で処方される漢方薬と薬局(漢方薬局・ドラッグストア)で購入できる漢方薬について、「取り扱える品目数の違い」・「成分量の違い」・「金額の違い」の点から、わかりやすく解説していきます。最後にはドラッグストア・病院・漢方薬局の違いについてもご紹介します。

取り扱える品目数が違う

病院で処方されるエキス剤(粉薬)は保険適用が認められています。現在、保険適用が認められている漢方薬は148種類です。これに対して、薬局で購入できる漢方薬は保険適用となっていません。保険外の漢方薬は294処方あります。そのため、病院よりも薬局で取り扱える漢方薬の方が2倍以上多い品目数となります。

参考
神奈川県 漢方薬の基礎知識

法律上の分類の違い

このように、病院と薬局で取り扱える漢方薬の数が異なっているのは、法律上の薬の分類が異なるからです。ここからは、やや専門的な話になるので、難しいと思う方は飛ばしていただいて大丈夫です。法律上、薬は「薬局医薬品」・「要指導医薬品」・「一般用医薬品」の3つに分類されています。漢方薬には要指導医薬品に該当するものはないので、薬局医薬品と一般用医薬品に分けられます。さらに、薬局医薬品には「医療用医薬品」と「薬局製造販売医薬品(以下:薬局製剤)」があります。

・医療用医薬品
病院で処方される医薬品。エキス製剤(粉薬)・煎じ薬(一部の生薬に限定)が対象となります。
・薬局製剤
薬局内で薬剤師が作ることができる医薬品(煎じ薬・丸薬)。都道府県知事の許可(実際は薬局管轄の保健所で許可を取得)を得た薬局のみ、薬局内で漢方薬を製造・販売することができます。煎じ薬や自家製の軟膏、丸剤を取り扱うことができます。
・一般用医薬品
ドラッグストアで売られている商品。漢方薬では、ツムラさんやクラシエさんなどの製薬会社が販売しています。

以下に、病院・漢方薬局・ドラッグストアで取り扱うことができる漢方薬の分類についてまとめました。保険診療を行っている病院では、医療用医薬品しか取り扱うことができません。ですが、薬局では許可をとっていれば、どの分類の医薬品も取り扱うことができます。

医療用医薬品薬局製剤一般用医薬品
病院××
漢方薬局△*1◯*2
ドラッグストア△*1△*2

*1 一般的には、医療用医薬品は病院で処方される医薬品のことを指します。ですが、医療用医薬品にも「処方箋医薬品」と「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に分けられています。漢方薬は「処方箋医薬品以外の医療用医薬品」に分類されているため、処方箋なく薬局で購入することができます。ただし、薬局で購入する場合は保険適用されないので、自費扱いになります。保険適用されるのは、病院で医師により処方された場合のみになります。

*2 薬局製剤の許可を取得している薬局に限ります。ドラッグストアで薬局製剤を取得しているところは、少ないです。

少しややこしい話になってしまったかもしれませんが、要するに病院と薬局では取り扱える品目が違うのと、保険が適用されるか否かの違いがあるのだということを、ご理解いただければ大丈夫です。

成分の量が違う

漢方薬は、複数の生薬(植物や鉱物などの薬物として使える部分:根・葉・花など)を組み合わせてできています。例えば、葛根湯の場合は、「カッコン・マオウ・ケイヒ・シャクヤク・ショウキョウ・タイソウ・カンゾウ」の7つの生薬を組み合わせてできています。生薬を適切に組み合わせることで、作用を増強したり、副作用が起こらないように配慮されています。

病院で処方される漢方薬と、薬局で売っている漢方薬には同じ名前の漢方薬が多数存在します。例えば、先に例をあげた葛根湯や脚のつりに用いる芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)などの漢方薬は、病院で処方してもらえるだけでなく、薬局で購入することもできます。同じ名前の漢方薬なので、含まれている生薬の種類は同じですが、含まれている生薬の量(成分量)が違います。

病院と市販の漢方薬の同異
・同じところ :含まれいてる生薬の種類
・異なるところ:含まれいている生薬の量

処方される漢方薬の方が成分量が多い

結論からいうと、病院で処方される漢方薬(医療用医薬品)の方が市販の漢方薬(一般用医薬品)より、含まれる成分の量が多くなります(例外あり)。市販薬は医師や薬剤師などの薬の専門家に相談しなくても、買うことができます。そのため、もし誤った薬を使ったとしても、副作用などが起こりにくいように、生薬の量を少なめ(1/2〜同量)に設定しています。市販薬は効果よりも、安全性を重視しているといえます。

病院で処方される漢方薬と市販薬の生薬量の比較

では、実際に医療用と一般用に含まれる生薬量はどれだけ違うのでしょうか。漢方メーカーの大手であるクラシエさんは、医療用と一般用の両方の漢方薬を取り扱っているので、葛根湯を例にして、1日分に含まれる生薬の量(g)を比較してみました。なお、一般用(市販薬)の葛根湯は複数の取り扱いがあったので、3つの商品と比較しています。

カッコンマオウケイヒシャクヤクショウキョウタイソウカンゾウ
医療用8.04.03.03.01.04.02.0
一般用①*8.04.03.03.01.04.02.0
一般用②*6.03.02.252.250.753.01.5
一般用③*4.02.01.51.50.52.01.0

葛根湯1日あたりに含まれる各生薬の含有量(g)

*一般用①:葛根湯エキス顆粒Aクラシエ(満量)
*一般用②:葛根湯エキス顆粒Sクラシエ(3/4量)
*一般用③:葛根湯エキス顆粒クラシエ(1/2量)

このように、入っている生薬の種類は同じですが、医療用と一般用の葛根湯とでは含有量が異なることがわかります。さらに、一般用の葛根湯でも商品によって、入っている生薬の量が異なっていることがわかります。
また、葛根湯の場合は医療用と同量の商品も売ってます(一般用①)。これを満量処方といいます。一部の漢方薬に限られますが、満量処方が認められている商品もあるので、ドラッグストアで購入する際は成分の量を比較してみるのも良いかもしれません。

医療用医薬品でも成分量が異なることがある

一般用医薬品よりも医療用医薬品の方が、生薬の量が多いことがご理解いただけたかと思います。ですが、例外的に一般用の医薬品の方が成分量が多いこともあります。例えば、同じ医療用医薬品でもクラシエさんとツムラさんでは、葛根湯の成分量が違っています。

カッコン(8.0gと4.0g)
タイソウ(4.0gと3.0g)
マオウ(4.0gと3.0g)
カンゾウ(ともに2.0g)
ケイヒ(3.0gと2.0g)
シャクヤク(3.0gと2.0g)
ショウキョウ(1.0gと2.0g)

ショウキョウを除いて、クラシエさんの漢方薬の方が成分量が多いことが分かります。このように、医療用医薬品でも製薬会社によって生薬の量が異なることがあります。そのため、例外的に一般用医薬品の満量処方の方が医療用医薬品より成分量が多くなることがあります。ですが、医療用医薬品は医師の判断のもと処方されるため、なかなか自分では製薬会社までは決めることはできません。病院ではツムラさんの漢方薬を処方されることが多いですが、この結果だけ見るとクラシエさんの漢方薬の方が効きそうな気がしますね。

正しい生薬の量はわからない

なぜ、製薬会社によって入っている成分量に違いがあるのでしょうか。それは、漢方薬が作られた当時の成分量がはっきりしていないからです。どういうことかというと、例えば葛根湯は1,800年ほど前に作られた漢方薬なのですが、重量の単位が不明で、解釈によって記載されている成分量が変わってしまうのです。そのため、製薬会社が参考にする出典によって、配合される生薬量が異なってくるのです。ちなみに、中国では日本の3〜10倍くらいの量を使ったりもしています。

また、漢方薬は個々人の体質によって、本来は用いる量を調節すべきです。ですが、エキス剤(粉薬)では個々人に合わせて作ることは難しいので、一律に量を規定しているのです。そのため、クラシエさんの漢方薬の方が生薬量が多いので、効き目が良さそうに思えるかもしれませんが、実際はその人の体質や病気の状態によって、適切な量は違ってきます。

同じ漢方薬でも効き目が違う

ですので、必ずしも成分量が多ければ効き目が良いとは限らないのです。それ以外にも漢方薬の効果を左右する要因がいくつかあります。

成分量
各メーカーによって、含まれる生薬の量が異なります。
生薬の品質
生薬は天然由来の植物や鉱物を利用しています。基本的には日本で販売されている漢方薬は厚生労働省の認可がおりたものしか使われていないので、一定以上の品質は担保されています。しかし、生薬の産地や品質によって、効き目にも違いが出てきます。
製造方法
エキス製剤(粉薬)の製造方法によって、生薬の有効成分がどれだけ担保されるのかは異なってきます。
添加物の種類
先にあげたクラシエさんとツムラさんの葛根湯の添付文書にあるように、含まれている添加物の種類も違っています。添加物自体には効果はありませんが、吸収スピードや身体への反応に違いが出てくる場合もあります。
剤型
漢方薬にはエキス剤だけでなく、煎じ薬(生薬をお茶のように煮出して服用)・丸剤・カプセル剤・錠剤などの剤形があります。これにより、同じ漢方薬でも効果に差が出ることがあります。

金額が違う

同じ漢方薬であったとしても、購入する場所によって値段は異なります。風邪のような短期間の服用であれば、さほどの金額の差はありませんが、慢性病のように長期間(数ヶ月)服用する場合は、金額にも大きく差が出てきます。

保険適用されるのは病院で処方された漢方薬だけ

当薬局でもたまに、「保険はききますか?」と問い合わせがあります。残念ながら、薬局で購入する場合は、当薬局に限らず保険適用となりません。保険適用となる場合は、病院の医師が保険診療により処方した漢方薬のみになります。それ以外の場合、漢方薬局やドラッグストアで購入する場合は保険適用となりません。また、病院であったとしても、自由診療のところもあるので、その場合は高額になる場合があります。
ただし、漢方薬局やドラッグストアで購入した商品は治療目的である場合に限り、医療費控除の対象となります。詳しくは国税庁のホームページをご参照ください。一応の金額の目安を表にまとめてみました。

1ヶ月あたりの金額の目安
病院(保険適用)5,000円程度(3割負担)
病院(自由診療)20,000〜60,000円程
漢方薬局5,000〜50,000円程
ドラッグストア5,000〜10,000円程

*お薬の種類や数によって値段は変わってきます

金額に大きな幅があるのは、自費診療では料金を店ごとに決めることができるからです。そのため、この金額から外れる場合もありますが、おおよそはこれくらいが相場だと思います。詳しくは各薬局や病院のホームページをご参考ください。
このように、金額だけで比較した場合は、保険適用ができるため、病院で処方してもらうのが一番お手頃になります。

漢方薬はどこで購入するのがおすすめ?

ここまで読んでいただければ、ドラッグストア、漢方薬局、病院での、「取り扱い品目数」・「含まれている成分量」・「金額」に違いがあることがわかっていただけたかと思います。これを参考に、自分に適した漢方薬の入手方法を選んでいただければ、納得のいく漢方薬を手に入れることができるでしょう。

とはいったものの、「結局、どこで漢方薬を手に入れるのが一番なのかを知りたい」、そんな方もいるかと思います。そこで、ドラッグストア・病院・漢方薬局の違いをご紹介して、ご自身の要望と合致するところを選んでみてください。

ドラッグストアがおすすめの方

ドラッグストアの最大の魅力は、手軽さにあります。病院に行くまでもないかな・・・とか、漢方薬局はちょっとハードルが高い・・・そのように思っている方でも、ドラッグストアでしたら気軽に購入することができます。値段もお手頃なので、初めての方でまずは試してみたいと思っている方にはおすすめです。

ですが、その一方で漢方薬の選び方に自信がない方やどれを選んだらいいのか、さっぱりわからない方には向きません。また、取り扱い品目が少ないので、きめ細かい症状には対応ができない場合があります。

○すでにどの漢方薬を選べば良いかわかっている方
○まずは気楽に試してみたい方
×どれを選んだら良いかわからない方
×きちんと相談して漢方薬を決めたい方
×取り扱い品目が少ないので、希望の商品が見つからない方

病院での処方がおすすめの方

病院での処方は保険適用となるため(一部、自由診療のところもあります)、費用の負担を抑えることができます。また、漢方薬の専門医であれば、的確な診断をしていただけるので、治療効果にも期待ができます。

ですが、一口に病院といっても漢方の専門度合いには大きく開きがあります。医師といえども、西洋医学には精通していても、漢方薬はあまり詳しくない場合もあるからです。漢方専門で診て頂きたい場合は、事前に漢方薬を専門に取り扱っているか、漢方専門のクリニックであるか調べておく必要があります。

しかし、漢方専門のクリニックや病院は一般の病院と比べて圧倒的に数が限られているので、どうしても予約が集中してしまう傾向にあります。ですので、有名な漢方専門の医療機関の予約は取りづらいことや患者が多くて、診察時間が十分に取れない場合もあります。

○医療用の漢方薬を使いたい方
○費用を安く抑えたい方
○漢方専門の医師に診てもらいたい方
×待ち時間が耐えられない方
×すぐに予約を取りたい方
×どの医療機関を選べば良いかわからない方
△じっくり話を聞いて欲しい方
△近隣に漢方専門の医療機関がない方

漢方薬局がおすすめの方

漢方薬局は漢方薬を専門に取り扱っていることから、薬局によっては煎じ薬(煎じ薬については煎じ薬とはをご参考ください)を取り扱っていたり、幅広い漢方処方を取り揃えていたりと専門性の高さが魅力の一つです。ですが、病院と同様に漢方の専門性は薬局によって差があるので、【薬剤師おすすめ】漢方薬局の選び方をご参考にしていただき、漢方薬局を選んでみてください。

また、漢方相談に力を入れている薬局も多く、薬以外のことでも時間をかけて丁寧にカウンセリングをしてもらえる利点があります。病院やドラッグストアではなかなか時間をかけて相談することができないこともありますが、身体の不調のみならず生活習慣のアドバイスや他にも気になることはなんでも相談できることもあります。

ですが、漢方薬局では保険適用がされないので、一般に値段は高くなる傾向にあります。予算が決まっていて、予算内で漢方薬を使いたい方には対応できない薬局もあるので、事前に調べてから伺うようにすると良いでしょう。

○漢方薬を本格的に使ってみたい方
○病院やドラッグストアの漢方薬で効果を実感できなかった方
○お身体の不調を丁寧にカウンセリングして欲しい方
×費用をできるだけ抑えたい方
×保険適用を望む方

まとめ

いかがでしたか。漢方薬は、入手する場所によって成分量や剤型、値段が変わってくることがご理解いただけたかと思います。これから漢方薬を使ってみたい方、もしくはすでに使っているものの不安や疑問を感じている方に少しでも参考になれば幸いです。

まとめ
1.漢方薬は薬局と病院で取り扱い品目に違いがある
2.同じ漢方薬の種類でも、成分量が異なる場合がある
3.同じ漢方薬の種類でも、値段が異なることがある
4.漢方薬をどこで買うかは、個々人のニーズによって異なる

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薬剤師 今井啓太
今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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