漢方について

注意すべき漢方薬の副作用と対策法

「漢方薬は天然由来だから、安心・安全だ」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、古来から、漢方薬にも服用の際の注意点が言い伝えられてきました。例えば、作用が強い漢方薬は症状が改善したら速やかに使用を中止するようにとか、胃腸が弱い人には使用を控えるべしとか、長年の実践から導き出した経験則が現代まで受け継がれています。

逆に言えば、服用のルールをしっかり守っていれば、おおかたの副作用は防ぐことができると考えられてきました。もし、思わしくない症状が起きてしまったとしても、それは瞑眩(めんげん)だから、服用していれば症状は落ち着くはずだというのです。

*瞑眩
服用後に一時的にあらわれる種々の予期しない反応。たとえば悪心・頭眩・胸悶など。
出典元:漢方用語大辞典(創医会学術部主編)燎原

しかし、漢方薬も薬である以上、副作用がまったくないわけではありません。近年になってようやく、漢方薬の副作用が報告されるようになってきました。

この記事では、漢方薬で起きやすい副作用と注意すべき処方、できるだけ副作用を防ぐ方法などについて解説していきます。現在、漢方薬を服用されている方、これから漢方薬を服用しようと考えている方に少しでも参考になれば幸いです。

漢方薬にも副作用はあるの?

結論から言うと、漢方薬にも副作用があります。漢方薬の副作用が世の中に広まったのは、1996年にマスコミに報道された小柴胡湯事件(小柴胡湯の長期服用で間質性肺炎が発症)です。それまでは、漢方薬は安全だと思われていたがゆえに、この事件は世間に衝撃を与えました。その後も、さまざまな漢方薬で副作用の報告がなされており、決して手放しに安全であるとは言えなくなりました。

ですが、天然由来の果物や野菜、魚や甲殻類などの食べ物でも、アレルギー症状が起こることがあります。ですので、しっかりと副作用について理解を深めれば、いたずらに不安にならなくても大丈夫です。

副作用とは?

そもそも、副作用とはなんでしょうか。薬を服用することによって効果を得たい作用のことを「主作用」といい、本来の目的ではない、好ましくない作用のことを「副作用」といいます。

例えば、花粉症のお薬の場合、主作用はアレルギー反応を抑えて、鼻水やくしゃみ、目の痒みなどを軽減することです。一方で、副作用は眠気になります(最近では、眠気の副作用が抑えられているものも出ています)。

副作用には悪いイメージがありますが、逆手にとって用いられることがあります。例えば、市販の睡眠薬は、アレルギー薬に使う眠気の副作用を利用することで、睡眠を改善するものもあります。この場合は、眠気を主作用として用いていることになります。

漢方薬は西洋薬よりも副作用が起きにくい?

漢方薬は比較的穏やかなものが多く、西洋薬に比べて大きな副作用は起きにくい傾向にあります。また、副作用が起きても、服用を中止すれば症状が改善するケースが多いです。

その理由は漢方薬の構成にあります。

漢方薬は、生薬(植物・鉱物・動物などの薬効がある部分)を複数(原則2種類以上)組み合わせて成り立っています。生薬にはそれぞれ長所と短所があるので、組み合わせることで生薬の偏りを調整したり、毒性を抑えたり、それぞれの効果を最大限に引き出すことができるようになります。

例えば、風邪の時に用いる葛根湯はカッコン・マオウ・ケイヒ・シャクヤク・ショウキョウ・タイソウ・カンゾウの7種類で構成されています。

<葛根湯に含まれる生薬の働き>
麻黄(マオウ)・桂皮(ケイヒ)・生姜(ショウキョウ)
→体を温めて発汗を促す
葛根(カッコン)・芍薬(シャクヤク)・大棗(タイソウ)
→身体に潤いをつけて、発汗しすぎないようにブレーキをかける
甘草(カンゾウ)
→全体の調和をとる

葛根湯は発汗することによって風邪を治していく漢方薬です。しかし、発汗しすぎてしまうと、汗と一緒に体力が落ちてしまいます。一見、相反する働きの組み合わせに見えますが、それぞれの働きを最大限に発揮しつつも、暴走しないように生薬同士バランスをとってくれています。

もちろん、すべての漢方薬が葛根湯のようにバランスをとった配合になっているわけではありません。中には、強力な作用のものだけで構成されたものもあるので、体質に合わない方が使用してしまうと、副作用が起きやすくなります。

ですが、基本的には漢方薬は副作用が起きにくいように、絶妙なバランスで構成されています。

副作用が起こる主な原因とは?

副作用が起きてしまう原因としてよくあるのが、次のことです。

・過量に服用してしまう
・複数の漢方薬を服用している
・お身体に合わない漢方薬を服用
・原因不明

規定量以上の漢方薬を服用してしまえば、当然、副作用も起きやすくなるのは理解できます。ですが、本人は自覚はなくても、複数の漢方薬を服用している場合は、同じ成分(生薬)が重複して、結果的に過量に服用してしまうこともあります。また、サプリメントや市販薬の中には漢方薬と同じ成分が含まれていることも珍しくはありません。
ですので、漢方薬を服用する場合は、今飲んでいる薬だけでなく、サプリメントやハーブなども確認しておく必要があります。

過量には服用していないのに、副作用が起こってしまうのは、お身体に合わない漢方薬を服用している場合です。極端な例では、胃腸が弱い方に胃腸に負担がかかる漢方薬を服用させてしまった場合です。当然ながら、胃腸に負担がかかり、胃もたれや下痢などの副作用が起きやすくなります。
例えば、市販薬の内臓脂肪を落とす商品の中には、下剤系の漢方薬が含まれているので、胃腸が弱く下痢をしやすい人が服用すると、下痢がさらに悪化してしまう場合があります。

どちらにも当てはまらない場合は、残念ながら原因が特定できません。漢方薬は二千年以上の長い歴史があるにもかかわらず、未知な部分がたくさんあります。というのも、漢方薬は天然由来の植物や鉱物を用いていますが、1つの生薬の中にはたくさんの成分が含まれています。それらが複雑に組み合わさることにより、成分の量や質が変化します。その一つ一つを分析して、副作用が出るか出ないかの判別を下すのは極めて困難です。また、個々人の体質や体調によっても身体の反応が異なってくると考えられるので、副作用の原因を突き止めるのは極めて困難です。

そのため、現在は明らかになっていない副作用も今後は出てくる可能性があります。

副作用を生じる生薬・漢方薬

具体的に注意すべき生薬についてご紹介します。

麻黄(マオウ)

【効能効果】
・発汗により体温を一時的にあげて、風邪を治す(免疫力を高める)
・鼻炎や気管支症状(咳・痰)の改善
・関節痛・関節浮腫など

【副作用】
動悸・血圧上昇・脳の覚醒・胃痛・胃もたれなど

麻黄に含まれるエフェドリンという成分には、強心作用や脳を興奮させる作用があります。そのため、麻黄には「動悸・血圧上昇・脳の覚醒(眠れない)」といった副作用が現れやすいです。このエフェドリンの作用により、心疾患・高血圧・甲状腺機能亢進症・緑内障・前立腺肥大症の持病がある方には慎重投与となっています。

また、麻黄は胃に障りやすいため、胃腸が弱い方ですと、食欲不振や胃もたれ、胃痛などが生じることもあります。その場合は食後に服用することで、症状を和らげることができます。

【その他】
副作用ではないのですが、エフェドリンはドーピング検査の対象となっているため、スポーツ選手の方は注意が必要です。市販の漢方薬にも麻黄を含む処方は多数販売されているので(特に風邪薬や咳止め薬に多い)、薬剤師や医師に確認してから使用するようにしましょう。

【麻黄を含む代表的な処方】
葛根湯、葛根湯加辛夷川芎、麻黄湯、小青竜湯、大青竜湯、五積散、麻黄附子細辛湯、麻杏甘石湯、越婢加朮湯など

甘草(カンゾウ)

【効能効果】
「急迫を治す」ことにより、痛みを和らげる作用があります。また、解毒作用(皮膚症状・のどの炎症)や胃腸を元気付けたり、各々の生薬を調和させる作用があると言われています。

【副作用】
偽アルドステロン症
高血圧・むくみ・麻痺・筋力低下・不整脈など

甘草は、医療用の漢方エキス製剤の実に7割以上に配合されている生薬です。そのため、複数の漢方薬を一緒に服用すると、すぐに甘草の量が過量になってしまいます。

*1日の甘草の量は2.5g以下に抑えておくのが望ましいとされています。

甘草を過量にとってしまうと、むくみや高血圧などの症状を伴う「偽アルドステロン症」を発症してしまう可能性があります。偽アルドステロン症については、下記にまとめてあります。漢方処方の中には、1日量で5〜6g含まれているものもあります(芍薬甘草湯や甘麦大棗湯など)。その場合は、頓服的に用いたり服用回数を調整して、長期間服用し続けないように注意が必要です。

しかし、甘草による副作用は個体差が大きいので、過量に服用しても全く症状が出ない方もいるので、あくまで、服用量は目安になります。また、煎じ薬の場合は甘草の代わりに炙甘草(甘草を炙って少し焦がしたもの)を用いることで、副作用を軽減できるとも言われたりしています。

【甘草を含む処方】
医療用漢方エキス製剤の7割以上に含まれているため、ほとんどの漢方薬に入っていると考えて良いでしょう。詳しくは、漢方薬の説明書きをご確認ください。甘草の量が多い処方は「芍薬甘草湯」・「甘麦大棗湯」になります。また、複数の漢方薬を服用する際は注意が必要です。

附子(ブシ)

【効能効果】
新陳代謝を高めて、身体を温めて気力を出してくれます。同時に水分代謝も改善するため、冷えてむくんだり、体力が著しく気力が乏しい場合にも効果的に働きます。

【副作用】
手足の痺れ・動悸・舌の痺れ・吐き気・発汗など

附子には、アコニチンという猛毒な成分が含まれています。しかし、医薬品として流通しているものは、高圧蒸気処理をして毒性を減弱したものなので、毒性はほとんどありません。毒性を減らした附子を炮附子(ホウブシ)・加工附子(カコウブシ)・修治附子(シュウチブシ)といい、現在はこれらの毒性を減らしたものしか使われておりません。

ただし、毒性を減らしたとはいえ、副作用がまったくないわけではありません。強心作用があるため、動悸・発汗作用が出たり、手足の痺れや舌の痺れなどの知覚麻痺などが出ることもあります。

【その他】
附子に含まれる成分がドーピング禁止物質であるため、スポーツ選手が使用する場合は注意が必要です。

【附子を含む漢方薬】
桂枝加朮附湯、八味丸、牛車腎気丸、麻黄附子細辛湯、芍薬甘草附子湯、附子湯、真武湯、附子人参湯など

大黄(ダイオウ)

【効能効果】
大黄は、下剤として用いることが多い生薬です。ですが、本来の大黄の役割は、身体の熱を取り除くことにあります。そのため、余分な熱を大便として排出させることで症状を緩和します。

また、活血作用(血流改善作用)があり、身体の熱・炎症をとりながら血を巡らせる作用も持ち合わせています。この作用により、皮膚の炎症(ニキビやアトピー性皮膚炎など)や出血、月経痛などにも応用されます。

【副作用】
過度の下痢、腹痛

大黄には、便を排出する目的で用いる場合と、活血(血流改善)を目的として用いる場合とがあります。活血作用を目的としているのに、下剤としての働きが強く出てしまうと好ましくありません。特に胃腸が弱く、普段から下痢をしやすい人には注意が必要です。

市販の便秘薬や内臓脂肪を落とす商品(ナイシトール・コッコアポなど)にも大黄が含まれているので、ご自身の便通状態を確かめてから、用いるようにしてください

煎じ薬として用いる場合は、煎じる際の加熱時間を短くすると便通作用に働き、長時間煎じる場合は活血作用として働くとされており、用途に合わせて使い分けられています。

【大黄を含む処方】
大黄甘草湯、大柴胡湯、調胃承気湯、小承気湯、大承気湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、防風通聖散など

地黄(ジオウ)

【効能効果】
身体を潤し、余分な熱を冷ましてくれる働きがあります。

<身体の余分な熱を冷ます>
・手足のほてりの改善
・皮膚の炎症を改善

<潤いをつける>
・肌に潤いをつける
・髪のパサつきを改善
・目の燥きを改善
・月経を整える

【副作用】
胃もたれ・下痢・食欲不振など

地黄は血を濃厚にするため、鉄剤のように服用時に胃にどっしりとした重みがあります。また、腸を潤す作用もあります。そのため、胃腸が弱い方ですと、胃もたれや胃痛、下痢、食欲低下などの胃腸症状が現れることがあるので、注意が必要です。

煎じ薬の場合は、胃腸障害を軽減するために、加工した熟地黄(ジュクジオウ)を用いることで、症状を緩和させる方法もあります。

【地黄を含む処方】
六味丸、八味丸、牛車腎気丸、知柏地黄丸、杞菊地黄丸、四物湯、温清飲、十全大補湯、人参養栄湯など

山梔子(サンシシ)

【効能効果】
身体の余分な熱を取り除いてくれます。

<主な使用法>
・精神不安(神経のたかぶり)の軽減
・ほてり、のぼせの軽減
・アトピー性皮膚炎やニキビなどの皮膚の炎症を軽減
・出血を止める(体温が上がり血が溢れ出すのを抑える)

【副作用】
2013年に山梔子が「腸管膜静脈硬化症」を起こすとの報告がありました。

「腸管膜静脈硬化症とは、「腸管膜静脈の線維性肥厚・石灰化によって起こる虚血性の腸病変」で、3〜10年程の経過で慢性に進行する、病変は回盲部に始まり、上行結腸からS字結腸、直腸へと進むが、大腸内視鏡検査で大腸粘膜が暗青色、青銅色を呈する、その色調は直腸から下行結腸、横行結腸、上行結腸、回盲部へと口側に進むほど著しく、びらん・潰瘍などの病変もそれに応じて著しくなる、世界の症例報告中、数名の台湾人、香港人を以外はすべて日本人、といった特徴をもつ」
出典元:いまさら聞けない生薬・漢方薬(医薬経済社)

なんだか、恐ろしい病気のようですが、腸管膜静脈硬化症は大腸粘膜がゲニピン(山梔子に含まれる成分)による青色色素沈着を起こし、腹痛・下痢・便秘・腹部膨満感など、大腸に生じる病気です。この病気を発症する方は、おおむね5年以上にわたって山梔子を含む処方を服用し続けた場合に発症しています。しかし、一般的には漢方薬の服用を中止すれば、症状が改善しているようです。

【山梔子を含む処方】
加味逍遥散、辛夷清肺湯、黄連解毒湯、温清飲、梔子柏皮湯、茵蔯蒿湯、防風通聖散、荊芥連翹湯、加味帰脾湯、五淋散、柴胡清肝湯、清上防風湯、清肺湯、竜胆瀉肝湯など

黄芩(オウゴン)

【効能効果】
身体の余分な熱を冷まします。抗炎症作用や抗アレルギー作用があり、幅広い用途で用いられています。
<主な使用法>
・風邪が長引き、微熱が続いている時(体内の熱を冷ます)
・胃腸炎や食中毒による下痢や食べ過ぎによる胃もたれや胃痛時
・アトピーや蕁麻疹などの皮膚の炎症時
・粘っこい黄色の痰を伴う咳や喘息時
・神経がたかぶって、精神が落ち着かない時
など

【副作用】
「間質性肺炎」や「肝機能障害」の副作用が報告されています。
間質性肺炎:呼吸器症状(呼吸困難・息切れなど)
肝機能障害:全身倦怠感・食欲不振・発熱など

これらの症状については、下記に詳しくまとめてあります。

黄芩の副作用は、たとえ症状に合った漢方薬を服用していたとしても発症を抑制できるわけではありません。食べ物アレルギーのように、意図せずに生じていると考えられます。しかし、黄芩がどのように副作用に関与しているのかは、まだ明らかになっておりません。

【黄芩を含む処方】
小柴胡湯、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、黄連解毒湯、黄芩湯、温清飲、半夏瀉心湯、生姜瀉心湯、甘草瀉心湯、竜胆瀉肝湯、三黄瀉心湯など

注意すべき副作用の症状とは?

漢方薬の副作用の中で、起きやすい症状について解説します。ほとんどの場合は、漢方薬の服用を中止すれば改善します。ですが、ごく稀に重症化することもあるので、副作用の初期症状を見逃さずに注意する必要があります。漢方薬を服用後、ここで紹介する症状が現れたら、副作用の可能性があるので、すぐに処方していただいた病院や薬局にご連絡ください

胃腸障害

漢方薬による副作用でもっとも頻度が高いのが、胃腸障害になります。漢方薬は胃腸に負担がかかりにくいものが多いため、食前もしくは食間服用を基本としています。

*食前:食事の約30分前
*食間:食事と次の食事の間のこと(食後2〜3時間)

ですが、生薬の中には油分を含んでいたり、どっしりと重みのあるものもあります。そのような生薬を用いる場合、胃腸が丈夫な方は問題はありませんが、もともと胃腸が弱い方であったり、一時的に弱っている場合は胃腸に負担がかかることがあります。その場合は、食後に服用することで、胃腸への負担を減らすことができます(食べ物が胃を保護してくれます)。

<起きやすい症状>
・胃もたれ
・食欲の低下
・胃痛
・吐き気
・下痢
など

<気を付ける生薬>
地黄(ジオウ)、当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、麻黄(マオウ)などを含む漢方薬

偽アルドステロン症

胃腸障害についで多いのが、偽アルドステロン症になります。偽アルドステロン症は、甘草に含まれるグリチルリチンという成分がミネラルの一種であるナトリウムとカリウムの体内のバランスを乱すことで、さまざまな症状を引き起こします。

【症状】
・高血圧
・むくみ
・低カリウム血症
血液中のカリウム濃度が低下して、筋力低下・手足の脱力感・筋肉のひきつり、麻痺、不整脈を起こすことがあります。

【原因となる生薬】
・甘草
甘草の量が増えれば増えるほど、発生の頻度は高くなります。

【気をつけるべき方】
・高齢者(主に70歳以上)
・身体が小さい方(低身長・低体重)
・以下の薬を併用している方
 利尿剤・インスリン製剤・甲状腺ホルモン製剤、副腎皮質ホルモン製剤
・女性の方

「男女比では、「男性:女性= 1 : 2」と女性の方が発症しやすいとされています。」
出典元:本当はもっと効く!もっと使える!メジャー漢方薬(羊土社)

このように、偽アルドステロン症は高齢の女性の方に起きやすい傾向があります。そのため、漢方薬を服用する場合は甘草の量に注意して、少量から始めるのも一つの方法です。

【症状が出たら?】
軽度の場合は、甘草の量を減らすかもしくは中止することで症状は改善します。それでも改善しない場合は、病院を受診してカリウム剤の補充などの対処が必要です。

参考:ツムラ(安全性・偽アルドステロン症)

肝機能障害

肝機能障害は、黄芩(オウゴン)を含む漢方処方で発症すると考えられています。黄芩がアレルギー反応を起こすことが、発症の原因ではないかといわれていますが、まだはっきりとはわかっていません。

服用から発症までの期間は、3日〜2ヶ月(中央値3.5週)で、服用開始後1〜2ヶ月で出現する例が多いと考えられています。また、予後に関しては劇症化や死亡例はなく、原因薬剤の中止により4〜10週(中央値6週)で回復したと報告されています。
出典元:本当はもっと効く!もっと使える!メジャー漢方薬(羊土社)

【主な初期症状】
・全身倦怠感
・食欲不振
・発熱
・無症状

【対策】
血液検査をすれば、肝機能の状態がすぐにわかります。定期的に血液検査をしておくことで、副作用の発現や重症化を防ぐことができます。

間質性肺炎

漢方薬による間質性肺炎は、1989年に小柴胡湯を服用して生じたことを初めとして、それ以降小柴胡湯以外の漢方薬についても報告されるようになりました。小柴胡湯による間質性肺炎は0.004%(25,000人に1人)と推定されており*、他の薬の副作用に比べて頻度ははるかに少ないので、いたずらに使用を避けるのは良いとは思えません。そのため、副作用を気にかけつつ、症状が改善したら漫然と同じ処方を使い続けないようにすべきです。

*参考:本当はもっと効く!もっと使える!メジャー漢方薬(羊土社)

【主な初期症状】
・呼吸困難
・少し階段をのぼっただけでも息切れする、息苦しくなる
・発熱
・乾いた咳が出る

【間質性肺炎を起こす可能性がある漢方薬】
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構より、「重大な副作用」に間質性肺炎が記載されている漢方薬は全部で以下の29処方となっています。当初は小柴胡湯に含まれている黄芩(オウゴン)という生薬が原因であると考えられていましたが、黄芩を含まない漢方薬にも副作用の報告があることから、原因はまだはっきりと特定できていません。

<重大な副作用に間質性肺炎と明記されている漢方薬>
温清飲、黄連解毒湯、乙字湯、荊芥連翹湯、牛車腎気丸、五淋散、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴朴湯、柴苓湯、三黄瀉心湯、芍薬甘草湯、潤腸湯、小柴胡湯、小青竜湯、辛夷清肺湯、清心蓮子飲、清肺湯、大建中湯、大柴胡湯、二朮湯、麦門冬湯、半夏瀉心湯、防已黄耆湯、防風通聖散、補中益気湯、抑肝散、竜胆瀉肝湯

蕁麻疹などの皮膚症状

食べ物アレルギーのように、身体に合わない成分を服用すると生じることがあります。この場合は服用を中止してしばらく経てば、自然に改善します。原因となっている生薬を除けば、発症を予防することができます。

【起きやすい生薬】
地黄(ジオウ)、黄耆(オウギ)、人参(ニンジン)、桂皮(ケイヒ)など

頻尿・多尿

水分代謝を改善する漢方薬を用いることで、小便の回数が増えることがあります。ただし、漢方で利水剤(水分代謝を改善する生薬)と呼ばれるものは、利尿作用があるわけではなく、乱れてしまった水分バランスを調整することが目的です。そのため、余剰となった水分のみを排出するため、脱水症状のような副作用は起きにくいです。

【利水剤】
猪苓(チョレイ)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、白朮(ビャクジュツ)、車前子(シャゼンシ)、滑石(カッセキ)、薏苡仁(ヨクイニン)など

副作用が起こりやすい方とは?

今まで解説してきたように、副作用は対策ができるものと対策が困難なもの(アレルギー反応など)とがあります。そのため、完全に予防することはできませんが、事前に注意しておくことで、ある程度予防することができます。また、副作用の初期症状を知っておくだけで、副作用が重篤化するのを未然に防ぐことができます。そのため、以下に副作用になりやすい方の特徴をまとめておきましたので、当てはまる方は注意が必要です。

2種類以上の漢方薬を服用している方

漢方薬は、複数の生薬を組み合わせたものになります。そのため、複数の漢方薬を服用すると、同じ生薬が重複してしまう可能性があります。特に甘草は、医療用漢方製剤(保険診療で用いられている漢方処方)の7割ほどに配合されています。そのため、複数の漢方薬を併用することで、生薬量が過量となってしまい、副作用が起こりやすくなります。

同じ漢方薬を長期間服用している方

漢方薬は効果が得られるまでに、時間がかかると思われがちです。確かに、病気の発症予防や症状が再発しやすい方には、長期間服用することで、症状の発生を抑制することができるかもしれません。しかし、症状が改善しているのにむやみに同じ処方を続けたり、漫然と同じ処方を使い続けていると副作用が発生しやすくなります(山梔子の項目を参照)。私の経験では、同じ処方を1ヶ月以上服用しても全く効果が得られない場合は、他の処方に切り替える必要があると感じています

胃腸が弱い方

漢方薬は胃腸に優しいものが多いのですが、中には(地黄・当帰・川芎・麻黄など)胃腸への負担が大きいものもあります。ですので、漢方薬を服用する際には胃腸の強弱を見極めて服用することが大切です。

アレルギーのある方

漢方薬は植物に由来するものが多いので、食品にも用いられているものもあります。例えば桂皮(ケイヒ)と呼ばれる生薬は、シナモンになります。そのため、シナモンのアレルギーがある方は発疹や蕁麻疹が出る場合があります。もし、食物アレルギーをお持ちの方は事前に医師や薬剤師に相談しておくと良いでしょう

以前に服用した薬で副作用が出た方

お酒をたくさん飲んでも、何ともない方もいれば、少量でもすぐに酔ってしまう方がいるように薬に対する感受性は人によってさまざまです。ですので、決められた量を服用していても、人によっては過敏に反応してしまうこともあります。以前にお薬の副作用が出た方は、漢方薬にも似たような成分が含まれていることもあるため、医師や薬剤師に相談した上で服用すると良いでしょう。

高齢の方

加齢に伴い消化機能が衰えるように、お薬を分解する肝臓の機能や薬を体外に排出する腎臓の機能が低下します。その結果、体内に薬が長時間残りやすくなり、副作用が現れやすくなります。また、漢方薬以外にも他のお薬を併用していることも多いので、副作用のリスクが高まる可能性もあります。

持病をお持ちの方

心疾患や緑内障などを併発している場合、麻黄(マオウ)製剤と併用するのは好ましくありません。そのため、持病をお持ちの方も医師や薬剤師とご相談の上、服用するようにしてください。

副作用が起きたら、どうすれば良いか?

副作用の症状や対策法を頭に入れておいても、すべての副作用を回避することは困難です。もし、副作用が起きてしまったら慌てずに購入した薬局もしくは病院にご連絡ください。薬局や病院がお休みの場合は、一度服用を中止して病院や薬局の営業日に再度ご連絡してください。もし、漢方薬の副作用であれば、たいていの場合は服用の中止に伴い症状は軽減していくでしょう。

副作用のサインを見逃さない

対策としては、起きやすい副作用について事前に把握しておくことです。そうすれば、いざという時に慌てずに対処することができます。漢方薬の副作用で起きやすい症状をまとめておきます。もし、以下の症状が現れたら、副作用の可能性があります。

<服用後すぐに現れやすい症状>
・胃もたれ、食欲低下、下痢などの胃腸症状
・湿疹や蕁麻疹などの皮膚症状
・身体のむくみ
・倦怠感、だるさ

副作用にならないようにするためには

副作用を完全に防ぐことはできません。ですが、これまで繰り返し説明したように、ご自身が副作用を起こしやすいタイプであるか、服用方法を間違えていないかを確認するだけでも、最低限の予防になります。

他には、漢方薬を正規のルート以外(病院・薬局以外)で購入している場合は注意が必要です
ネット通販で売られているものの大半は大丈夫だと思いますが、中国や韓国から直に購入する場合は注意が必要です。そのような製品は品質の基準が担保されているのかも不明ですし、海外と日本の漢方薬では成分の基準量が異なっている場合もあるからです。ですので、初めて漢方薬を購入する方はできるだけ薬局・病院から購入することをオススメします(信頼のある漢方メーカーの商品を取り揃えています)。

副作用以外の注意点

副作用以外にも、服用に注意が必要な漢方薬があります。

長期間の服用を避けたい漢方薬

大黄(ダイオウ)

大腸の動きを促進して、排便を促す作用があります。そのため、便秘の方にはよく用いられる生薬です。ですが、長期にわたり服用すると、大腸が自ら動く働きを弱めてしまい、効果が薄れていきます。ですので、あくまでも便通を促すことを目的として、根本解決のために大黄を使い続けないようにしてください。大黄の服用と並行して、生活のリズムを整えて自然排便できるようにする必要があります。

麻黄(マオウ)

体表面の血流を促し、身体を温めることで風邪の治療に用いたり、関節痛や肩こりの改善にも用いられている生薬です。麻黄は葛根湯にも含まれており、慢性の肩こりに長期間服用をしている方もいるかもしれません。しかし、麻黄は発汗作用があるため、過度に用いてしまうと汗と一緒にエネルギーを消耗してしまうおそれがあります。また、麻黄は胃に負担がかかりやすいので、胃腸が弱い方や体力が乏しい方の長期服用はあまりオススメしません。

妊娠中や授乳中に気をつけたい漢方薬

妊娠中は、できるだけ薬の服用を避けたいところです。ですが、漢方薬の中には安胎(アンタイ)薬といって、胎児を安定させる作用のある処方があります。とはいえ、妊娠中はそうでない時とは違って、薬の影響が身体に及びやすい時期です。そのため、古来から妊娠中に注意を要する漢方薬が伝えられているので、ご紹介します。しかし、現段階では動物実験において催奇形性(奇形が出ること)のある生薬は報告されておらず、どこまで漢方薬が母体に影響を与えるかは今後の研究次第となります。

活血剤

活血剤とは、血流を整えて生理不順や関節痛などを改善する作用がある生薬のことです。活血作用をもつ生薬(桃仁・牡丹皮・紅花など)は生理不順を整えて、不妊治療にも用いることが多いのですが、妊娠中には早産や流産のリスクがあるとされています。このことは、漢方の長年の歴史の中で経験的に語られていますが、実際のところはどれほど影響しているのかは明らかとなっていません。あくまでも経験則での考えなので、本当に活血作用が必要な場合にも、すべて使用を控えるべきではなないと個人的には考えています。

<活血作用を含む処方>
桂枝茯苓丸、牛車腎気丸、加味逍遥散、大黄牡丹皮湯、桃核承気湯、疎経活血湯、温経湯、腸癰湯、芎帰調血飲第一加減、折衝飲など

麻黄を含む漢方処方

麻黄は葛根湯や小青竜湯など、風邪や花粉症などの改善に用いる処方に含まれているため、比較的使用する機会が多い生薬になります。

ですが、麻黄は発汗作用があり、過度に用いると身体の水分やエネルギーを減らしてしまうこともあります。特に、妊娠中は血液を通して母胎に栄養を送り届けるので、血液(水分)は母子ともに大切です。そのため、麻黄の発汗作用により貴重な水分が失われてしまい、母体が弱らないように、過度な使用は控えた方が良いとされています。

ただし、現代は2,000年前の環境とは違い豊富な栄養も手軽にとることができるので、麻黄を一時的に使ったくらいでは、身体がばててしまうことは少ないかもしれません。ですが、特に虚弱な方や食事が十分に取れない妊婦さんは注意が必要です。

センナ

センナは子宮収縮作用があり、流産や早産のリスクがあることから、かつては妊娠時の使用は禁忌とされていました。しかし、現在ではそのような作用はないとされており、服用禁忌とはなっていません。また、かつてはセンナの成分が母乳に移行するため、赤ちゃんが下痢をすることから、授乳中のセンナの服用は推奨されていませんでしたが、こちらも現在は否定されています。
そのため、妊娠中や授乳中でも服用できないわけでなないので、服用する際には医師や薬剤師に相談してから服用ください。

薏苡仁(ヨクイニン)

一時、妊娠中に薏苡仁を服用すると、流産の危険性があると言われていました。しかし、漢方薬の出典の中では、ヨクイニンを妊娠中に服用してはいけないとは明記されておりません。もしヨクイニンが妊娠中に服用できないのだとしたら、ヨクイニンはハトムギの成熟種子のことなので、一部のお茶にも含まれており、日常的に摂取してしまう可能性もあります。

おそらく、ヨクイニンには子宮の収縮作用を強めることで、流産のリスクが高まるとされたのだと思います。ですが、そんなことはあるのでしょうか。

「薏苡仁の妊娠時禁忌となの根拠となる論文は、ラットに薏苡仁熱水エキス1g/kg(ヒト常用量の約25倍)を投与した後に、胎児吸収と着床後胎児死亡が有意に増加、子宮を摘出したときの自発的な収縮力が増加した」
「一方で薏苡仁粉末を5%含む餌(ヒト常用量の約50倍量)でラットを妊娠0日から出産まで飼育し、まったく影響がなかったとのこと」
出典元:いまさら聞けない生薬・漢方薬(医薬経済社)

このように、ヨクイニンがまったく影響がないわけではありませんが、日常で摂取する分にはさほど影響はないと考えられます。

漢方薬の副作用のまとめ

漢方薬にも副作用があります。ここでは、色々とご紹介したので不安になった方もいるかもしれません。ですが、漢方薬の場合は症状がわかりやすく、重大な副作用を起こす危険性は非常に稀ですので、用法用量を守っていただければ、必要以上に恐れる必要はありません。
これから漢方薬を服用してみたいと思っている方やこれから漢方薬を服用しようと思っている方で、どの漢方薬を服用すれば良いかわからない方はぜひ一度、漢方薬専門の病院や薬局にご相談ください。

参考資料

いまさら聞けない生薬・漢方薬(医薬経済社)
本当はもっと効く!もっと使える!メジャー漢方薬(羊土社)
新訂生薬楽(株式会社南江堂​​)
修治の実際(たにぐち書店)

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薬剤師 今井啓太

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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