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漢方について

煎じ薬とは

煎じ薬(せんじやく)は漢方薬をお茶のようにグツグツと煮出して服用する、漢方薬本来の伝統的な飲み方のことです。現在はツムラさんやクラシエさんのような、手軽に服用できるエキス製剤が主流となっていますが、当薬局では効果を実感していただくため、漢方薬本来の効果が期待できる煎じ薬をオススメしています。
そこで、この記事では煎じ薬の特徴についてご紹介し、少しでも煎じ薬に興味をもっていただきたいと思います。

煎じ薬とエキス製剤の違い

煎じるのは手間もかかりますし、漢方薬の味やにおいも強いため、欠点ばかりが目立ってしまいますが、メリットもあります。エキス製剤と比較しながらご説明します。

エキス製剤とは?

エキス製剤とは、漢方処方に応じた生薬をお水と一緒に煮出して、できた液体(煎じ薬)を濃縮、乾燥させて顆粒や細粒状にした粉薬のことをいいます。

ツムラ葛根湯エキス
ツムラ漢方エキス顆粒剤
参考:ツムラ葛根湯 くすりのしおり

 

生薬とは植物や動物、鉱物(石膏など)などの中で、医薬品としての価値のある部位を切り分けたものをいいます。例えば、葛根湯に含まれる葛根(カッコン)という生薬は、マメ科のクズと呼ばれる植物の根っこの部分を指します。このクズの根が首の強張りをとるため、風邪などに効果的であるため、生薬として用いることができるわけです。

エキス製剤の特徴(長所と短所)

話を戻すと、エキス製剤というのは煎じ薬を粉状に固めたものです。そのため、メリットとしては持ち運びに便利なことです。外出中でも服用できるので、忙しい現代人には活用されやすいでしょう。さらに、保険適応されているものが多いのもありがたいことでしょう。現在では148種類ものエキス製剤が保険で使うことができます。

これだけメリットがあるので、今最も漢方薬で用いられているわけですが、デメリットもあります。

それは、効果が煎じ薬に比べて劣るということです。エキス製剤の含有量の規定について、厚生省が以下のように示しています。

標準湯剤 1 日量分中の指標成分の下限値の 70 %以上に設定することで 差し支えないが,可能な限り標準湯剤の指標成分下限値以上とすること。

「医療用漢方エキス製剤の取扱いについて」(昭和 60 年5月 31 日付薬審2第 120 号厚生省薬務局審査第一課長・審査第二課長通知)の別紙1「標準湯剤との比較試験に関する 資料」

要約すると、エキス製剤は煎じ薬に比べて30%程成分量が少ない可能性があります。まして、近年生薬の値段が上がってきているので、なおさら、質の良い生薬をわざわざエキス製剤に使いづらい状況だといえます。

他にもデメリットとしては、漢方薬を粉状に加工する過程で味や香りが弱まってしまうことにあります。これは先に挙げた成分が揮発してしまうことにも関連します。味や香りが薄い分、飲みやすくはなりますが、効果面でも落ちることを意味します。

あとは、エキス製剤の数は148種類と豊富だと述べましたが、煎じ薬と比べると圧倒的に数が少ないです。煎じ薬は組み合わせ次第で、無限の可能性がありますがエキス製剤は商品化されているので、処方の数が少なくなってしまいます。

このようにエキス製剤は手軽な反面、効き目や処方の幅が狭くなってしまうのが欠点と言えます。

煎じ薬の特徴(長所と短所)

煎じ薬のメリットとデメリットはエキス製剤とは逆になります。つまり、毎日時間をかけて、煎じなければならないことや味や香りをダイレクトに感じるので、飲みづらさがあります。ですが、「煎じ薬」は加工しておりませんので、その処方本来の薬効が100%発揮されるうえ、液体であるため、薬効成分をすばやく吸収することができます。香りからも成分を吸収できるのもメリットと言えます。

また、これはメリットと言えるかわかりませんが、煎じ薬は毎日自分で作らなければいけないので、ご自身が治療に参加している意識が高まりやすいです。

長所短所
煎じ薬・オーダーメイド漢方
・成分量が多い
・味や香りが楽しめる
・患者様の治療の参加
・毎日40〜50分煎じる必要がある
・匂いや味がダイレクト
・購入できる場所が限定
エキス製剤・手軽に服用
・持ち運びに便利
・ある程度の病気に対応
・病気の範囲が限定的
・成分量が少ない
・味や香りが薄い

煎じ薬の作り方

煎じ薬は作ったことがない方にとってはイメージがしづらいものです。なんだか難しそうに思うかもしれませんが、一度作り方を覚えてしまえば、とても簡単です。

準備するもの

・土瓶
*なければステンレス、ホーローなどのやかんや鍋
*鉄製のものは避けてください
(成分が吸着して効果が落ちるため)
・水600ml
(自動煎じ器をお使いになる方は400〜500ml)
・煎じ薬1袋(1日分)
・茶こし

煎じ薬作成時に必要な物(土瓶・水・茶こし・煎じ薬)

作り方

土瓶に水と煎じ薬を入れる

1)漢方薬と水600mlを入れる

50分間とろびで煎じる

2)フタを開けて弱火で50分

3)25分経過

4)完成したら茶こしでこす

半分量まで煎じる

5)半分量(300ml)が目安

1日2〜3回服用する
6)1日2〜3回に分けて温服

煎じ薬の服用方法

煎じ薬はお茶のように服用するだけで、特に注意すべきことはありません。服用する漢方処方によっては、特別な使い方をするものもありますが、ここでは一般的な服用回数と服用時間についてご紹介します。

服用回数

煎じ薬を1回作れば、1日分の煎じ薬が作れます。ライフスタイルに合わせて、お作りした煎じ薬を1日2〜3回に分けて服用ください。日中にお仕事などで出かける人は、お昼に服用することが難しいので1日2回で服用される方が多いです。

空腹時の服用が望ましい

基本的には空腹時に服用ください。なぜなら、漢方薬に含まれる有効成分は食物繊維に吸着されてしまうため、食事と一緒に服用すると、吸収が阻害されて効果が落ちてしまうこともあるからです。ですので、一般的には朝・夕食前の服用をお勧めします。
ただし、漢方薬の種類や病気の状態によっては服用するタイミングが変わることもありますので、お薬の処方時にその都度お伝えします。

煎じ薬の保管

煎じ薬の作り方の注意点

作り方の疑問点やわかりづらいこと、注意してほしいことについてご紹介します。

1)煎じる時はパックを破いて、生薬だけを入れる

煎じ薬は生薬をパックにつめた状態で、お渡しします。煎じる時は、パックのまま煎じて頂いても問題なく作ることができます。ですが、可能な限り生薬を取り出して煎じることをおすすめします。その理由は、パックから生薬を出して煎じることで、煮出しているときに生薬が拡散して、より多くの成分を抽出することが可能となるからです。
ただ、後片付けに一手間かかってしまうので、どうしても忙しい方や面倒くさくて続けるのも嫌になってしまうのでしたら、パックのまま煎じてください。まずは続けることがとても大切です。

2)煎じ終わったら、すぐに液体をコップに移す

煎じ薬を作り終わったら、火を止めて生薬を入れたままの状態にしておくのは控えましょう。せっかく、生薬から液体に成分を溶け込ませたのに、また生薬に成分が吸収されてしまう可能性があるからです。作り終わったら、液体と生薬は分離して保管しましょう。

自動煎じ器なら、ボタン一つでお手軽にできます

  • 毎日煎じるのは大変
  • 小さな子供がいて、火の元が心配
  • 年配なので、火の取り扱いに注意したい

このような方は、漢方薬の煎じに特化した自動煎じ器をオススメします。お水と漢方薬を入れて、ボタンを押すだけで自動で温度調整をしてくれるし、こがしたり火事の心配もありません。やかんや土瓶と比べると、少し費用がかかりますが、長く使うのであれば、手間が省けるのでおすすめです。当薬局では、栃本天海堂さんが販売している「文火楽々(とろびらんらん)」をオススメしています。
ですが、ウチダ和漢薬さんが新しく自動煎じ器を販売しました。その名も「煎治・LITE」です。これは、以前に販売していた「マイコン煎じ器3」が販売中止になり、その代わりとして作られたものです。なんといってもお値段が、9,790円とマイコン煎じ器(約2万円)や文火楽々の半額以下になっております。
まだ、数回しか試してはいませんが、問題なく煎じることができています。ただし、煎治・LITEは対面販売のみとなっております。そのため、購入をご希望の方は当薬局までご連絡ください。在庫は置いてないため、メーカー取り寄せとなります(薬局到着まで1〜3営業日程要します)。

漢方薬煎じ器煎治・LITE

漢方薬煎じ器 煎治・LITE(ウチダ和漢薬)

煎じ薬は天然の生薬由来ですので、保存料などは一切含まれておりません。そのため、野菜や搾りたてのジュースなどと一緒で傷みやすいです。すぐに服用しない場合は、煎じた液体を冷ましてからラップをして冷蔵庫に保管してください。
煎じる前の煎じ薬も湿気と熱に弱いため、特に夏場は必ず冷蔵庫に入れての保管をお願いします。

煎じ薬はどこで購入できるのか?

ここまで読んでいただいた方の中には、煎じ薬を試してみたいと思っている方もいるかもしれません。漢方煎じ薬は、漢方専門の病院やクリニック、もしくは漢方専門の薬局で処方してもらったり、購入することができます。

しかし、煎じ薬は一つ一つの生薬について専門的な知識や経験が必要なため、取り扱っている医療機関は多くはありません。さらに、煎じ薬は調剤する手間や在庫管理、価格(近年は高騰)の面から、保険処方で出している病院はさらに少なくなります。

以上より、煎じ薬を使ってみたい方には厳しい状況ですが、裏を返せば煎じ薬を使う病院や漢方薬局はそれだけ、漢方の専門性が高いとも言えます。

もし、漢方の煎じ薬を試してみたい場合は一度、医療機関に確認してから伺うようにすると良いでしょう。

よくあるご質問

最後に皆様からよくご質問をいただく項目について、ご案内します。

Q 毎日作るのが大変なのですが、数日分を作り置きしてもよいですか?

A 可能な限り毎日お作り願います。煎じ薬の保管のところでも説明しましたが、煎じ薬は搾りたてのジュースのように鮮度が大事です。時間が経つにつれて、有効成分が揮発していってしまいます。ライフスタイルとして確立すれば、さほど難しくはないでしょう。もし、それでも大変な方は夜作ることをオススメします。朝はドタバタして、ゆっくりと時間が取れない方も、夜ならば時間がとれるでしょう。夜と朝の組み合わせで、1日分を服用するとリズムが崩れにくいかと思います。

Q 旅行や出張に行くのですが、煎じ薬はどうすればよいでしょう?

A 当薬局では旅行等で煎じ薬の服用が難しい場合は、エキス製剤(粉薬)を処方いたします。旅行や出張先でも煎じることができればよいのですが、なかなか難しいと思われます。いつもと違う環境や周りの人にも気を遣いますので、短期間であれば、エキス製剤の方がよいでしょう。なお、出先で服用する場合は、保温ビンなどに入れて持ち運ぶと、煎じ薬の質の低下も軽減できます。

漢方薬についてもっと知りたい方は漢方薬についてをご参考ください

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薬剤師 今井啓太
今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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