「仕事が忙しい」
「家事が大変」
「睡眠時間が足りない」
このような理由で疲れがとれないという方は多いのではないでしょうか。
(というか、まったく疲れがない方はいるのでしょうか・・・)
肌感としてですが、疲れてしまっている理由としては、身体の動かしすぎによるものは少なく、
・睡眠不足
・精神疲労
・座りっぱなし(筋力低下)
であることが多いように思います。
しっかり食べられている、よく眠れているのに疲れがたまっている場合はむしろ積極的に活動量を増やすことで、疲れが軽減します。
この場合は身体の硬直により、血流が悪くなったり、筋肉量の低下が疲れの原因となります。
ただ、今回ご紹介するように疲労とともに食欲や体重も落ちてしまった場合は注意が必要です。
一度、倦怠感の背後に他の病気が潜んでいる可能性もあります。
病院などで異常がないか調べてももらうことをお勧めします。
もし、異常がない場合は漢方薬の服用も検討してみてください。
症例 30代女性 疲労倦怠感
2ヶ月程前から体がだるくて仕方がありません。気力がなく、食欲もあまりないです。
おかゆなどの消化の良いものを1日1~2回少量食べています。
おなかの調子も良くなく、下痢気味でもあります。
体重2~3kg落ちてきています。
もともと血圧も低く立ちくらみしやすかったのですが、この頃はめまいもするようになってきました。
めまいがする時は吐き気や手の振るえ、フワフワした感じがします。
特に生理前になると症状が強くなって困ります。
手足の末端が冷えやすいですが、たまに微熱が続くことがあります。
疲れているのでずっと横になっていたく、睡眠は9時間ほどとれていますが、寝付きが悪く、1時間くらい寝付けないことがあります。
処方の選定
倦怠感を考える時はまずは虚実でみます。
この場合は虚に該当する典型であります。
食欲がないのは胃気が働いていないからです。
生理前に増悪するのは、子宮に血を送るのにエネルギーを使ってしまい、他に回すエネルギーが減少するためです。
治療方針としては、胃気を高めていくことです。
そうすれば、自ずと全身にエネルギーが行き渡り、疲れも取れている区はずです。
ただ、悩ましいところは胃気のみを高めれば全身の体力がもどるのか、それとも全身の体力を補わなければ、体力が回復しないのかを判別することです。
そのためには元の体質を把握しておくことが大切です。
この方は、仕事がダンサーで日頃から活発に動いており、元々の体力がないわけではありません。
ですので、主訴である疲労倦怠感の原因は、全身の虚によるものではなく、一時的な胃気の低下だと考えられます。
以上より、治療は胃気の向上に特化すればよく、
四君子湯(しくんしとう)を処方しました。
服用後の経過
四君子湯×8日分
食欲が少しずつ出てきて、元気になってきた。
微熱消失
ただ、下痢と便秘を繰り返し、腹痛もある。
さらに15日分
食欲が正常に戻り、元気になる。
下痢は2日に1回となる。
この段階で、胃腸の状態はもとに戻るので、あとは食事のみでの回復で十分である。
ここで治療は終えた。
四君子湯について
和田東郭『蕉窓方意解』四君子湯
・脾胃虚弱して、飲食進み難しを第一の標的
・胃口に飲を蓄るゆえ、胃中の陽気分布し難し、飲食これにより進み難し、胃口日々に塞がり、胸膈虚痞痰嗽呑酸などの症あり
・四君子湯で胃口胃中の畜飲を消導すれば、胃中の陽気胸膈に上達し、大小腸に下通す(上下通和す)
浅田宗伯『勿語薬室方函口訣』四君子湯
・理中湯方中の乾姜を去り茯苓を加う
・気虚を主とす
・一切脾胃の元気虚して諸症を見はす者、此の方に加減斟酌して療すべし
これらより考えるに、四君子湯は胃腸機能を高めて、消化機能を促進する、基本処方といえます。
食欲がなくて元気がない場合に真っ先に考慮する処方である。
(痰飲が主である場合は変わってくる)
まとめ
一時の疲労であれば、少し休むだけで、元に戻るのですが、放置すればするほど、治りが遅くなってしまいます。
たいがいのケースは活動量を増やしたり、精神的疲労を発散することで、回復します。
まずは、基本に戻り、食事、睡眠、運動の3本柱を見直してみてください。
それだけで、驚くほど体調はよくなります。
それでも良くならない場合は、漢方薬も視野に入れてみてください。
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