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症例紹介

症例48 副鼻腔炎に柴葛解肌湯

つい先日、好酸球性副鼻腔炎と呼ばれる難治性の副鼻腔炎のご相談がありました。
色々手を尽くしたものの、結果は少しばかりの改善にとどまり、完治させられず道半ばで終了してしまいました。
まだやりようはあったのだろうか、、、と悔しい思いをしていたところ、別の方から副鼻腔炎の相談がありました。
新たにご相談に来られた方の副鼻腔炎は、割と急性期のこじれていない状態でしたので、なんとか改善へと導くことができました。
今回はその症例をご紹介します。

相談内容

60代前半 女性
相談内容:右目の上が痛む副鼻腔炎

2週間ほど前から、右目の上辺りが痛むようになりました。
初めは眼精疲労かと思ったものの、不安になったので脳の検査をしてもらいましたが、脳には異常は見当たりませんでした。
次に耳鼻科にかかったところ、副鼻腔炎かもしれないといわれ、抗生剤を処方されましたが、症状が軽減されていないため、相談に来られました。

処方選択

今回の副鼻腔炎は発症から2週間ほどの急性で、前頭洞(目の上の部位の副鼻腔)に生じたものと思われます。
漢方では副鼻腔炎といっても、発症してからの期間や強度によって、病気の部位や重症度が異なるため、当然ながら用いる処方も使い分けていく必要があります。
まず、化膿した鼻水や鼻づまりもあまりないため、炎症の度合いはあまり高くないと予想されます。
そして、病気の部位ですが、2週間ほど経過しているため、体表からやや奥にまで進行している状態ともいえます。

この段階ですと、処方としては葛根湯加桔梗石膏でいいのかと考えられます。
しかし、この処方を出すのには、数日単位で様子をみれることが前提にあります。
葛根湯は発病してから初期の段階で使う処方で、もしこの処方で治せなかったら、さらに深くまで病気が進行してしまう恐れがあります。
案の定、数日以内にはご来店することは困難で来られるのが2週間後とのこと。

そうなると、数日分の勝負にかけて葛根湯加桔梗石膏を出すのが心もとない。
そこで、もし葛根湯加桔梗石膏では追いつかなかった場合も備えて、小柴胡湯を加えることにしました。

処方:柴葛解肌湯

この処方は、葛根湯+小柴胡湯+石膏の構成になっている処方です。
小柴胡湯は葛根湯から病気が進行して、もう少し時間経過した時に使う処方です。
なので、柴葛解肌湯にすることで、副鼻腔炎の初期の状態からある程度時間が経過した状態にまで対応することが可能になります。

2週間ほど服用いただいた結果、症状はほぼなくなりました。
追加でもう1週間ほど服用いただいた結果、完全に症状はなくなったようです。

考察

今回の副鼻腔炎では、時間経過が割と浅い状態でしたので、複雑な処方を用いることなく改善へと導くことができました。
欲を言えば、もっと短期間で逐一症状を確認できていたら、もっと早く改善できたかもしれないということです。
次に好酸球性副鼻腔炎の方がお見えになった時には、しっかりと対応できるように準備をしていきたいです。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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