どちらの漢方薬も寒えによって生じる症状に用います。
ですが、冷えの強さによってこれらの漢方薬を使い分けているわけではありません。
それぞれ、どういう場面で用いるのかを解説します。
麻黄附子細辛湯を使うときの特徴
麻黄附子細辛湯は名前のごとく、「麻黄・附子・細辛」の3種類からなる漢方薬です。
麻黄附子細辛湯が適応となるのは、次の二点を併せ持った時です。
・外感風寒:冷たい空気が肺や肌表に入り込んできたことによる症状
・陽虚:体を温めたり、元気づけたりする作用が著しく低下した状態
具体的なイメージとしては、生まれつき体が弱く気力が乏しく冷えやすかったり、年齢や過労により一時的に体力や気力が低下してしまい「陽虚」となった状態の時に、冬の季節や冷房などの冷たい風に曝露することで、発症する症状の時に用います。
麻黄附子細辛湯が適応となる症状・病気
麻黄附子細辛湯は「外感風寒+陽虚」という条件の時に発症する、
・肺〜気道症状:風邪・インフルエンザ・アレルギー性鼻炎(花粉症)・副鼻腔炎・気管支炎など
・筋肉〜神経の痛み:三叉神経痛・坐骨神経痛・腰痛など
・皮膚症状:蕁麻疹(寒冷)・帯状疱疹・痒疹など
に用います。
基本的に、麻黄附子細辛湯は体表面から肺を中心とした比較的浅い部分に症状がある時に用いる処方になります。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯の特徴
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は当帰四逆湯に呉茱萸と生姜を加えた処方です。
この処方も麻黄附子細辛湯と同じく、寒えによって生じるものですが、麻黄附子細辛湯と病位(病気の発祥部位)が異なります。
当帰四逆湯は経絡(血脈)に冷えが入り込んだ時に発症する症状に適応となります。
(中医学的には「血虚受寒・寒滞肝脈」などと言われたりします。)
そのため、血に関連した症状を発症することが多いです。
・冷え(手足末端の冷え・下腹部の冷え・腰の冷え・太ももや股間の冷え)
・痛みや痺れ(冷えることで血流が悪くなり痛みや痺れが発生する)
*手足の痛みや痺れ、しもやけ、頭痛、月経痛など
・坐骨神経痛、腰痛など
麻黄附子細辛湯と当帰四逆加呉茱萸生姜湯の鑑別
ここまで、両処方の違いを述べてきました。
両方とも外からの冷えによって発症する症状に適応となりますが、病気の部位が違うため容易に鑑別が可能です。
・麻黄附子細辛湯:体表面〜肺の冷え症状と体の陽気不足
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯:経絡(血脈)の冷え
しかし、一部共通の症状があるのです。
両処方ともの「坐骨神経痛・腰痛」などの痛みに適応を持っていることです。
冷えによる坐骨神経痛や腰痛が起きた場合、どのように鑑別すれば良いのかがポイントです。
坐骨神経痛に用いる場合
この場合は、冷えによる坐骨神経痛や腰痛だけで鑑別しようとすると鑑別は困難になります。
両処方の大きな違いには、もうひとつ大きな違いがあります。
・麻黄附子細辛湯:陽虚
・当帰四逆加呉茱萸生姜湯:血の症状
このような違いがあります。
麻黄附子細辛湯は陽虚があるため、「気力が乏しい・ぐったりしていて横になっていたい」体は冷えるもお風呂などで温めると症状が改善する場合に適応となります。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は血に冷えがあり、血も不足しているため、「生理不順・肌や髪、爪の栄養不足・立ちくらみ」などの症状が確認できます。
まとめ(症状だけで判断してはいけない)
今回のケースのように、同じ病名であり発症の要因が同じ(冷えによる坐骨神経痛や腰痛)時に複数の処方が候補に上がることがあります。
そのような場合、さらに詳細に処方を鑑別をすることで、正しい処方を決定することができます。
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