中医学は五行理論に基づいて診断・治療を行います。
人の内臓については、
五行(肝・心・脾・肺・腎)に分担され、
各々の臓器で役割を担っています。
各臓器の詳細は省きますが、
その中で、
中医学の腎の働きについてみてみると、
「腎は精を主り、発育・生殖を主る」
「腎は骨を主り、髄を生じ、脳に通ず」
とある。
*参照「わかる中医学入門」
現代医学で考えると、
そんなバカなと思われるかもしれないですが、
当時は詳細な研究が進められていなかったので、
腎が他の機能の役割を代替しているということにしていたのであろう。
それ自体は当時の認識の違いがあったので、
仕方がないことであろう。
問題なのは、
いざ治療をしようとする段階の時である。
理論として、腎の機能を表現しているが、
冷静になって、考えてみると矛盾に気付くはずである。
もし仮に腎を漢方薬を使って強化できるのであれば、
「若返りも夢ではなく」、
「折れた骨もすぐに元に戻る」
ということになるであろう。
ノーベル賞ものである。
この事をいち早く見抜いていたのが、
江戸時代の漢方大家
吉益東洞である。
吉益東洞の考えを踏襲した尾台榕堂は
『方伎雑誌』で
「腎は精を造ると言い、また精を貯蔵すると言い、
八味丸を腎を補う薬剤であるとして、「腎虚」の病症に
用い、これにより腎を補うものとしている。
その議論と診察は全て根拠のない判断、自分勝手な推量で
あって、不確かで明確のない治療は、初めから正否を分かつまでもない。」
と述べて、切り捨てている。
臨床家として生きてきた彼らだから
出てきた言葉であろう。
私自身も自分の目で確かめて、
臨床の実際を語れるようになりたいものです。
日々精進あるのみです。
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