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症例紹介

症例45 春先のめまいに釣藤散

相談内容:回転性のめまいとフワフワ揺れるめまいを改善してほしい
相談者:60代後半女性

毎年春先になると、めまいが出てきて困っています。
めまいはフワフワと横に揺れるものが大半ですが、まれにグルグルと回転するめまいが起きます。

回転性のめまいは頻度は少ないものの、発生すると吐き気をもよおし、動けなくなります。
めまいは、仰向けになった状態で頭を動かしたり、ヨガなどの運動をしている時にもなりやすいです。
また、疲れたり寝不足になったりしてもめまいが起きます。

病院では、「良性発作性頭位めまい症」と診断されましたが、薬を飲んでも症状が改善しないため来局されました。

処方選択

漢方では、めまいの原因と症状から処方を選択します。
この方の場合は、春先に生じていること、回転性めまいとふわふわとしためまいが生じていることを考慮して、処方を決めていきます。

春は五臓でいうところの「肝」の季節になります。
肝は自律神経を調節する作用があるため、めまいとも関連の大きい臓器です。
「肝」は心身がのびやかな状態の時に本来の力を発揮します。
しかし、ストレスがかかると、肝の働きが乱れて暴走したり、働かなくなったりします。

春は気候や気温の変動が大きい季節であるため、本人が自覚していなくても、身体にかかるストレスは大きいです。
実際に、この方も日々のストレスは感じていないものの、最近疲れやすくなったと仰っていました。
それは、気候変動により知らず知らずのうちに、身体に負担がかかっていたからだと考えられます。

*肝の働きや養生法の詳細は「春の漢方養生法をご参照ください。

次は、めまいの種類による分類です。
回転性めまいの原因は水分代謝の乱れの場合と、肝の働きの乱れの場合とがあります。
今回は春特有の異常であるため、肝の働きの乱れによる回転性めまいと考えられます。

以上より、今回のめまいは肝の暴走により、自律神経が乱れたことで生じていると推察できます。
そこで、肝の暴走を落ち着かせて、自律神経を整える処方を選択しました。

処方:釣藤散(チョウトウサン)
*あくまでも、処方選択の一例になります。すべてのめまいに適応となるわけではありません。

服用7日目:回転性めまいは一度あったものの、ふわふわとしためまいの頻度が減少しました。
服用17日目:回転性のめまいは一度も出なくなりました。また、ふわふわしためまいもほぼ起きませんでした。
服用30日目:回転性のめまいとふわふわしためまいのどちらも出なくなりました。加えて、肩こりも軽減してきました。

症状も落ち着いたので、おおよそ1ヶ月ほどでお薬の服用を終えました。

まとめ

めまいは不快感を伴うだけでなく、精神的な不安にもつながってしまうので、日常生活にも支障が出てきてしまいます。
漢方ではめまいの原因に着目するため、原因に応じたさまざまな処方を使い分けることで、症状を緩和させることができます。

*めまいに用いる漢方薬について、詳しくは「めまいの漢方薬治療をご参照ください

めまいでお困りの方は、一度漢方専門の医療機関でみてもらってください。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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