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養生

春の漢方養生法

暦の上では、立春(2月4日)から春になります。
3月に入り、暖かい日があるもののまだまだ寒暖差があり、服装にも困る季節になりました。

漢方では、気候の変動、季節の移り変わり、気温の変化などの自然界で起こりうる現象は身体にも影響を与えると考えます。
とりわけ春は気候・気温の変動が大きく、加えて新年度などの環境の変化も起きやすい季節ですので、体調を崩しやすいです。

ですので、今回は春の養生について漢方的な視点で解説していきます。
ぜひ参考にしていただき、体調を崩さないように養生をしましょう。

春の特性

養生について説明する前に、そもそも漢方では春をどのように捉えているかを説明します。
春の特性を知らずに、いきなり養生の話をされてもピンとこないですからね。

漢方では、春の特性は大きく分けて2つあります。

<春の特性>
①活動を開始する季節
②のびのびと過ごす季節

これらの春の特性を知らないと、良かれと思って取り組んだことも、実は季節に反した行動になってしまい、体調を崩してしまうこともあります。

それでは、一つずつご紹介していきます。

①春は活動を開始する季節

春になると、新緑が芽生え始め、木々が青々としてきます。
また、冬の間活動を休止していた動物や虫も地上に出て、活動を再開し始めます。

このように、春は自然界が活動をし始める時期です。
同じように、わたしたち人間も冬の間に蓄えていたエネルギーを外に向けて、活動を始めるのに適した季節が春なのです。

冬の間活動が減っていた方も、自然の流れに合わせて、少しずつ活動量を増やしていくことが春の養生では大切です。

②春はのびのびと過ごす季節

活動的に過ごすことが大切である一方、のびのびと過ごすことも大切です。

漢方の考え方の一つに、五行説(ゴギョウセツ)というものがあります。
五行説は、万物を五つに分けて、お互い助け合ったり、打ち消しあったりすることで、バランスをとっているという考えです。

例えば、五行説では

季節:「春・夏・長夏・秋・冬」(五季)
内臓:「肝・心・脾・肺・腎」(五臓)

のように、季節であったり、内臓であったりを五つに分類します。

各季節に特色はあるものの、春→夏→長夏→秋→冬と一年を通すことで、暑/寒、雨/晴といったバランスが取れます。
それにより、穀物が育ったり、活動と休息のバランスがとれたりできます。

一方の内臓でも、五臓がそれぞれの役割を果たすことで、偏りをなくしバランスがとれています。
そのため、ヒトの生命活動が円滑に進むようになっています。

また、それぞれの五行は互いに関連しています。
たとえば、今回の場合ですと季節と内臓も相関していて、以下のように季節ごとに対応する内臓が決まっています。

「春=肝、夏=心、長夏=梅雨、秋=肺、冬=腎」

これは、季節ごとに対応する内臓が活躍できる意味しています。
春ならば肝が該当するので、肝の働きを高めるような生活を送ることが大切です。
反対に肝を十分に活かすことができないと、体調を崩してしまいます。

ですので、春は肝を養う生活を心がけることが大切です。

では、漢方でいうところの「肝」とはなんなのでしょうか。
漢方でいう「肝」の働きには疏泄(ソセツ)機能があります。
疏泄(ソセツ)とは、のびのびと広がることを意味します。

つまり、肝の疏泄機能が働いていると、気や血をスムーズに全身に広げる(めぐらす)ことができます。
もっとわかりやすくいうと、肝には(気・血をめぐらすことで)自律神経を整える作用があるということです。

そのため、肝が養われると気持ちが安定したり、月経が安定したり、内臓機能がスムーズに働いたりします。

反対に肝の疏泄機能が乱れると、自律神経が乱れて、イライラしたり、情緒が不安定になったり、胃腸の働きが悪くなり、便秘や下痢になったりします。

では、どんな時に肝の疏泄機能が乱れるのでしょうか。
それは、ストレスです。

過度なプレッシャーや緊張が続いたり、やることに追われていたりすると、肝の疏泄機能は乱れてしまいます。また、急な気温変化や気候変動も身体にはストレスとなり、肝の疏泄機能を乱してしまいます。

ですので、この季節は特にストレスと上手に付き合うことが大切です。

春の養生法

では、実際にどのような養生法を取れば良いのかをいくつかご紹介します。
ポイントは活動強度を上げることと、のびのびとした生活を心がけることです。

一見、相反することのように思いますが、どちらかに偏らずにバランスをとることが大切です。
具体的な養生法をいくつかご紹介します。

早起きをする

徐々に日の長さがのびて、日の出も早くなってきました。
もともと、人は日の出とともに起床して活動をし、日が沈んだら休息をとっていました。

ですので、現代の私たちもこれに準じて早起きするようにしましょう。
そして、朝起きたらすぐさま太陽光を浴びることで、陽気(エネルギー)を補うことができます。

これにより、身体を動かすためのエネルギーを補充するとともに、体内時計をリセットして自律神経(肝の疏泄機能)を整えることができます。

運動量を増やす

春は活動の季節です。
冬は寒くて運動を控えていた方も、春になったら少しずつ運動をするようにしましょう。

運動は苦手という方も、いつもより少しだけ歩く量を増やすとか、たまにはエレベーターではなく階段を使うといった小さなことでも構いません。
ご自身の体調と体力に合わせて、運動をしてみてください。

呼吸を深くする

忙しくなると、姿勢が悪くなり呼吸も浅くなります。
呼吸が浅くなると、全身に気がめぐらなくなります(疏泄機能の低下)。
意識的に呼吸を深くすることで、肝の疏泄が働き、気持ちも落ち着いてきます。

仕事や勉強の合間、できれば30分に一度は席をたって深い呼吸をしてみましょう。

スケジュールにゆとりをもつ

年度末や新年度は何かと忙しい季節です。
ですが、無理は禁物です。

無理をすると、肝の疏泄機能が乱れてしまいます。
いつも以上にスケジュール管理を意識しましょう。
もっとできそうな手前でやめるようにしましょう。

できれば、ご自身のためだけの時間を毎日少しずつでも確保するようにしてください。

まとめ

漢方理論がわかると、どのように季節に応じた生活をおくれば良いのかがわかります。
近年は気温や気候の変動が激しく、自然界から受ける身体の影響も以前より大きくなってきています。
ですので、より一層季節の養生を心がけて、体調を崩さないように注意しましょう。

<参考書籍>
・中医病因病機学(東洋学術出版社)
・マンガでわかる東洋医学

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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