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症例紹介

症例76 持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)が奏効した症例

持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)は2017年にできた新しい概念のめまいのことです。
発症の原因ははっきりとはわかっていませんが、最初のめまいをきっかけにして生じることが多いようです。

【症状の特徴】
・ふわふわと体が宙に浮いているような、あるいは地面が揺れているような感覚を伴うめまい
・3カ月以上続く
以下のことで、生じたり悪化したりする
・立ったり歩いたりする
・体を動かしたり、動かされたりすること(エレベーター、エスカレーター、電車、バスへの乗車など)
・複雑な模様(色合いや凹凸)や激しい動きのある映像を見ること(大型店舗の陳列棚、細かい書字、映画、スクロール画面、ドローン撮像動画など)

一般的なめまいの薬(抗めまい薬や血流改善剤、ビタミン剤など)では効果がないことが多く、治療法も確立していません。

今回はPPPDと診断された方のご相談です。

一般的な「めまいの漢方薬治療」については、以下にて詳しく解説しています。

症例

相談者:40代前半 男性
相談内容:前庭神経炎によるめまい

3ヶ月前に海外旅行に行った後、コロナウイルスに感染しました。
数日後、耳に水がたまった感じがしてグルグルと回る、回転性のめまいが生じるようになりました。

回転性めまいは1ヶ月ほどしたら落ち着きました。
はじめは前庭神経炎と診断されて、めまいの薬や半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)を処方されましたが、効果はありませんでした。

眼球が痙攣したように動いたり揺れたりする眼振があり、フワフワと揺れるような、焦点が定まらないようなめまいとのことです。

【めまいが起きやすい場面】
・仕事中(事務仕事)
・読書している時

もともと不安感が強く、抗不安薬も服用中で、不眠や不安は軽減されているものの、めまいには効果はないようです。

処方選択

東洋医学ではめまいに対しても、さまざまなアプローチがあります。

めまいの漢方薬治療については、大きく4つのパターンがあります。

・耳周りのリンパの流れを調整
・血流改善
・耳の細胞の活性化
・自律神経の調整

これらをカウンセリングを通して、一つもしくは複数に絞ります。
今回はコロナウイルスに罹患中に発生したものであり、血行不良による耳への栄養不良が関与していると考えられます。

また、めまいが起きやすい状況が職場や読書などの限定的な状況であることから、自律神経が影響していると考えられます。

そこで、耳周りの血流を促して自律神経を整える作用の漢方薬をお出ししました。

最初の10日ほどで、めまいの発症頻度が減少し始めました。
その後、1ヶ月ほど服用したところで、めまいの頻度やつらさが半減しました。
ちょうど1ヶ月ほど過ぎたあたりで、病院からは前庭神経炎からPPPDへと診断名が変わり、SSRIという抗うつ薬に使われる薬に変更となりました。

漢方薬とSSRIを併用し始めてから、さらにめまいも回復してきたので、漢方薬は2ヶ月ほど服用した時点で終了となりました。

その後はSSRIを単独で使用するとのことでした。

まとめ

今回はPPPDの診断名がつく前に漢方薬の服用を開始しましたが、効果を実感していただけました。

しかし、漢方薬単独であった場合はどこまで症状のコントロールができたかは分かりません。

ですが、2ヶ月という短期間で患者様が満足していただける結果になって良かったです。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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