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症例62 手がかりの少ない肋間神経痛

50代半ば 女性
相談内容:左鎖骨下の痛み

初めはトイレで息んでいる時に、痺れるような激しい痛みが左鎖骨下に出ました。(8ヶ月ほど前)
以前から肋間神経痛を患っていたので、その影響もあるのかもしれません。
その後も痺れるような痛みが2〜3日に一度ありましたが、徐々に軽減して今は治りました。

しかし、左鎖骨下にピンポイントで生じるギューとした痛みが生じるようになりました。
この痛みは毎日2〜3回くらい、持続時間は20分程続きます。

心臓の病気かと思い、3ヶ月ほど前に病院で検査を受けましたが異常はありませんでした。
その後、病院では対処のしようがないとのことで、来局しました。

痛みは、集中している時やお風呂に入ってリラックスしている時には起きません。
痛みの前兆はなく、急にジワっと痛み出してきます。
起床時や就寝中には発生せず、仕事のある日も休みの日も関係なく発生します。

3ヶ月前に人事異動で部署が変わり、ストレスの大きい日々を送っていて疲れています。
他の症状としては、肩こりがひどくそれに伴う頭痛もよく起きます。

もともとあつがりでしたが、ここのところ冷えを感じるようになり冷えるとお腹をこわしやすくなりました。

処方選択

一般的に痛みの場合の多くは、本来通じていたものが阻害されて通じなくなってしまうことで発症します。
今回の場合は肋間神経痛をもともと持っていて、息んだことがきっかけで増悪してしまったのかと思います。
しかし、痛みの発生条件に規則性はなく、仕事のストレスなども痛みに関係しているようには思えません。

数少ない手がかりとして、慢性的な肩こりと頭痛、入浴中は症状が発生しないと言うことを手掛かりに筋肉の緊張を緩めながら冷えを散らすことで温める処方を使いました。

処方:当帰四逆加呉茱萸生姜湯

こちらを使用すると、痛みの頻度・持続時間はジワジワと減少してきて、肩こりと頭痛も軽減しました。
都合4ヶ月ほど服用したところで、週1回くらい数分程度少し痛むかなくらいまでになったので、廃薬としました。

考察

今回は当帰四逆加呉茱萸生姜湯で効果を実感していただきましたが、実はこの処方に至るまでに何度か他の処方を用いています。疎経活血湯、四逆散、桂枝茯苓丸など、どれも悪くはなかったのですが、今ひとつでした。桂枝加朮附湯を用いた時にはのぼせてしまい、服用ができませんでした(附子の影響かと思われます)。

そのような経緯のもと、なんとか我慢強く続けていただいたおかげで適応する処方に当たることができました。
結果から逆算して、なぜこの処方が良かったのかというとを考えてみました。

  • 慢性的な肩こりにより筋肉の固縮
  • お風呂で温まることで筋肉が緩み血流が再開されることで痛みが抑えられる
  • 以前より冷えやすくなったことから、身体の陽気が減少
  • 筋肉の硬直による血の不足
  • 構成生薬の細辛が鎮痛に作用した

このようなことから、当帰四逆加呉茱萸生姜湯が有効であったものと思われます。
割と神経痛や筋肉の痛みにこの処方を使うと改善することが多いのは、凝り固まった筋肉をやわらげて、冷えを改善することで血流が改善する作用があるのかと思われます。

初回で最適な処方をご提案できないのが歯痒いですが、まだまだ精進が必要なのでしょうね・・・

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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