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疥癬を見つけるのは難しい

先日、夜間に皮膚の痒みが強くて眠れないという相談を受けました。
とりわけ、ふくらはぎや足の甲、手掌が痒くなるとのことです。
半年ほど前に風邪をひいてから、痒みが生じるようになったとのことです。

その後、皮膚科でステロイド外用薬や抗アレルギー薬を使用するも改善するどころか、症状は悪化するばかりだったそうです。
別の漢方薬局で漢方薬を処方してもらうも、少し改善するもまた元に戻ってしまったようです。
皮膚科も3件変えてみるも、処方される薬は同じようなものばかりで改善は見られない状況が続いています。

「ステロイド外用薬が効かない皮膚病となるとなかなか手強いな」、と思いながら漢方薬を処方することにしました。

夜間に症状が悪化すること、赤い血腫や赤い斑点があちらこちらに見られることなどから、病位としては皮膚表面ではなくもっと奥、つまり「血」にあると判断しました。

そこで、血熱を改善する処方を投与しました。
すると、最初の数日で夜間の痒みが軽減されました。
これは良い手応えだと思い、2週間分をお渡ししたところ、痒みが元に戻ってしまったそうです。

再度皮膚科を受診したところ、「疥癬(カイセン)」だというこことが判明したそうです。

疥癬とは、「ヒゼンダニというダニの一種が人間の皮膚に寄生することで起こる皮膚の感染症」のことです。

通常の疥癬は湿疹とは見分けが難しく、疥癬トンネルと呼ばれる「白い線状」の痕があるのが特徴です。

実際に患者様に疥癬トンネルを見せてもらいましたが、非常にわかりづらく、私も全く考慮していなかったので、見落としていました。
皮膚科を3つ回ってようやくわかったくらいですので、専門医でも意識していないと鑑別は容易ではないのかもしれません。
皮膚科で内服薬のイベルメクチンを処方されて服用を開始したところ、疥癬は駆除できたそうです。

念の為、もう一度イベルメクチンを服用して様子を見ているようです。
ただし、痒みはすぐに消えるとは限らず、イベルメクチンを服用後も数週間〜数ヶ月痒みが続く場合もあります。

【疥癬のチェックポイント】
・夜間の激しい痒み
・ステロイド外用薬でも改善しない(むしろ悪化する)
・手の指の間や手首、手掌に疥癬トンネル(白い線状)

白い線状の模様がありましたら、疥癬の可能性もありますので、ぜひ皮膚科にご相談ください。

疥癬に関しては漢方薬ではなく、西洋薬治療が圧倒的に改善効果が期待できます。
*漢方薬でも疥癬の治療法があるのですが、私自身が対応したことがないのと、西洋薬に優れた薬があるので、西洋薬を優先とさせて頂きました

漢方薬を使う場合は、疥癬治療後に残った痒みに用いる方が良いような気がします。

私自身も疥癬を見落としてしまったので、今後は疥癬という選択肢も考慮して皮膚をしっかりと観察したいと思います。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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