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漢方の土台は食事:【たんぱく質】について

最近はたんぱく質ブームと言われるくらい、たんぱく質の重要性が語られるようになりました。
一つには高齢化の進行により生じる「フレイルの予防」のために、たんぱく質が必要となるからです。

フレイルとは「健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢に伴い心身の機能が低下し、活動量が低下している状態」です。

フレイルの主な原因は「筋力低下」で、そのせいで動けなくなったり、疲れやすくなったり、歩行速度が低下したりします。
さらに、動かないからお腹も減らず食べられない、食べられないからさらに筋力低下するという悪循環に陥っています。

筋力低下の主な原因は「たんぱく質不足」です。
このたんぱく質不足による筋力低下は高齢者だけでなく、すべての人に当てはまることです。

漢方でも、食事をとても大切にします。
漢方はどうしても漢方薬のイメージが強く「薬」をイメージしがちですが、本来は生活に根ざしたもので養生(食事・睡眠・運動・ストレス管理)を一番大切にします。

養生がおろそかですと、漢方薬をいくら服用しても改善しないケースがあります。

例えば、漢方薬でダイエットをしたいという相談もあります。
もちろん対応することはできますが、「漢方薬だけ」では大きな効果は望めません。
ダイエットには必ず食事・運動・その他の生活習慣をセットで行わないとなかなか成果が出ません。

私の失敗例

私は過去にとある相談で漢方薬をお渡ししていたのですが、なかなか改善しないことがありました。
その時は「私の漢方の腕が良くないのだな、もっと適切な漢方薬を探さないと」と葛藤していました。
しかし、いくら漢方薬を変えても成果が出ません。

そんなこんなである時のカウンセリングで、患者様が「胸焼けしやすい」「あまり食べられない」といったのをきっかけに、食習慣については伺っていなかったことに気づきました。

詳しく聞いてみると、毎日ケーキ・チョコレート・クッキー・果物・おにぎりくらいしか食べていないことを知りました。

その時になって初めて「しまった!」と思いました。
漢方薬を処方することばかりを考えていて、食生活については触れていなかったことを後悔しました。

私の失敗のように食事が乱れている、特に炭水化物だらけの食事で、野菜やたんぱく質が不足している状態では、体の状態は改善していきません。

前置きが長くなってしまいましたが、今回は食事の中でも「たんぱく質の話」をします。

たんぱく質の効能

たんぱく質は人の体を作るのに必須の栄養素となります。
ですが、ずっと説明してきたようにたんぱく質は不足しがちな栄養素の一つでもあります。
たんぱく質の効能について解説することで少しでも、たんぱく質を取り入れてもらえたら幸いです。

①細胞の原料となる
細胞は人の体を構成していて、ぜんぶで約60兆個あると言われています。
この細胞を作るのにたんぱく質が必要となります。
例えば、「筋肉・内臓・骨・肌・髪・血液」などはすべて細胞が集まってできたものです。
タンパク質が不足すれば「肌や髪が荒れる」「内臓の働きが悪くなる」「骨がもろくなる」「貧血になる」「筋肉量の減少」などが生じます。
また、ケガをした時の修復にもたんぱく質が必要になります。
②ホルモンバランスの安定 / 免疫系に関与
ホルモン剤の原料となったり、免疫に関与する抗体を作るのにもたんぱく質が必要になります。
③精神安定に繋がる
セロトニンは「幸せホルモン」とも言われていて、心身をリラックスさせたり、意欲を増す働きがあります。
セロトニンが不足すると、自律神経や体内リズムの乱れが起きます。
そのため、不安感が強くなったり、意欲がなくなってうつっぽくなったりします
④睡眠の質を高める
メラトニンは、セロトニンを材料に作られる睡眠ホルモンのことです。
「たんぱく質不足→セロトニン量が低下→メラトニン量が低下→睡眠のリズムの乱れ」が生じます。
⑤体を温める作用
たんぱく質が体内で分解され吸収される時、熱エネルギーが発生します。
また、たんぱく質は筋肉を作るにに必要ですが、この筋肉の多くの熱産生をおこなっています。
そのため、筋肉不足(たんぱく質不足)は代謝を悪化させ、冷えやすくなったり、太りやすくなったりします。

漢方ではたんぱく質は陰血の元になる

ここまでたんぱく質についてお話ししてきましたが、最後は少しだけ漢方の話をします。
たんぱく質は体(肉体)を作るだけでなく、精神面の安定にも必要不可欠でしたね。

これは、漢方薬で言うところの「陰血」と同じ働きになるんですね。
陰血といのは、たんぱく質の作用と同じように体を形作ったり、精神や睡眠の安定をはかったりしているものです。

そうすると、「たんぱく質をとらなくても代わりに漢方薬を飲んでいれば良いのではないか」と思うかもしれません。

ですが、漢方薬は食事の代わりにはならないのです

先ほどの患者様のお話にもありましたが、漢方薬「だけ」で陰血を増やすことはできません。

江戸時代の名医(古方派)と言われた吉益東洞は「薬徴・人参・弁誤」の中で「未だ草根木皮を以って、人の元気を養ふを聞かず。」と述べています。
草根木皮とは漢方薬の原料である生薬のことです。
吉益東洞は「漢方薬だけ服用しても元気が出るわけではない」と述べています。

漢方薬はあくまでも食事から得た栄養をきちんと体に取り込んで、血肉にすることを本とするということだと思います。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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