最近、知り合いの方が「菊池病」になったと知りました。
菊池病は「発熱、頸部リンパ節の腫れと炎症、痛み」などを伴う良性のリンパ節炎です。
発熱は38度以上になることもありますが、原因は不明で基本的には対症療法での治療になります。
この病気は自然治癒することが多いですが、改善までに1〜3ヶ月ほどかかることもあり、対症療法だけでは患者さんの負担も強いです。
「菊池病」という病名は、1972年にこの病気を初めて報告した、九州大学の菊池昌弘医師からきており、「組織球性壊死性リンパ節炎」や「亜急性壊死性リンパ節炎」とも呼ばれています。
菊池病を漢方ではどう考えるか
残念ながら、私は菊池病の患者さんに対応したことがないのですが、症状の特徴から漢方薬でも対応できるのではないかと思い、考えをまとめてみました。
菊池病は「頸部リンパ節の炎症」が病気の根本です。
東洋医学においては頸部リンパ節は「半表半裏(ハンピョウハンリ)」と呼ばれる部位に位置し、体表面から身体の内部への移行過程の状態を表しています。
そして、この半表半裏の炎症を改善する代表的な漢方薬が「小柴胡湯(ショウサイコトウ)」になります。
小柴胡湯には「リンパ節炎」の保険適応があり、実際に小柴胡湯を投与して3日ほどで菊池病が改善したとの報告もあるようです。
小柴胡湯が初めて登場する『傷寒論』という書籍には、小柴胡湯の使い方が解説されています。
その中の一つの条文をご紹介します。
『傷寒論・陽明病』
「脇下及心痛、一身及目悉黄、小便難、有潮熱、時時噦、耳前後腫」
この「耳前後腫」というのが、頸部リンパ節の腫脹のことだと解釈できます。
傷寒論が作られた時代は西暦200年頃のことです。
当時は抗生剤などなく、草根木皮などの漢方薬を用いて治療をしていたわけです。
傷寒論に上記のような記載があることから、原因不明の発熱やリンパ節の炎症などは当時からもあり、小柴胡湯で治療をしてきた経緯があると思われます。
菊池病に小柴胡湯が有効であるならば、小柴胡湯をベースとした柴胡桂枝湯や柴胡桂枝乾姜湯などの処方も有用である可能性があり、個々人の病態や体質に合わせて加減していくことで、もっと治療効果を上げることができるかもしれません。
また、一貫堂医学のような慢性炎症に用いる温清飲を配合した「柴胡清肝湯」や「荊芥連翹湯」もリンパ節の炎症によく用いられているため、有効活用できるかもしれません。
このように菊池病を東洋医学の視点で考えたら、さまざまな漢方処方で対処ができるかもしれません。
おわりに
さて、冒頭の知り合いの方ですが、38℃の発熱とリンパの痛みが出ていました。
ですが、漢方薬の服用を希望しなかったため、西洋薬で様子を見るとのことでした。
さいわい1ヶ月ほどで症状は改善したようです。
漢方薬を使っていたらもっと早く改善したかどうかは定かではないですが、今後もし菊池病の漢方相談があった場合には、柴胡剤をベースとした漢方薬を試してみたいです。
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