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治療について

気候の変化で体調を崩すのはなぜ?〜東洋医学の視点で解説します〜

近年、地球温暖化やたび重なる異常気象により、気候の変動と病気の関連が注目されるようになってきました。ですが、西洋医学ではまだこれといった治療法がなく、気候の変動に対応するすべが限られています。

東洋医学は自然の影響も考慮する

しかし、東洋医学では2,000年ほど前の最古の東洋医学の書籍である『黄帝内経(こうていないけい))』に、気候の変動が身体に及ぼす影響について解説されています。

その一例に、

『黄帝内経・素問・至真要大論』
「多くの病気の発生は、すべて気象(風・寒・暑・湿・燥・火)の作用や異変に由来している」

このように東洋医学では、古来から自然界の影響が身体に及ぼす影響が解かれており、さらにそれに対する治療法も用意されています。
それゆえ、東洋医学の考えを学ぶことで、自然界の脅威から身体を守ることができるようになります。

自然と人との関係性

東洋医学では、人間は自然の一部であり自然界の法則が人体にも当てはまるという考えが根底にあります。これを「天人合一(てんじんごういつ)」と呼びます。ここでの「天」は自然界を意味しています。つまり、天人合一とは「自然界と人は合わせて一つ」、互いに繋がっており、両者の関係を切り離すことはできないことを意味しています。

 

【例】
自然界で暖かい空気は上り、冷たい空気は下に溜まる
同じように人体でも熱は上部に行きやすく、頭はのぼせて、下半身は冷えやすくなります。

夏は気温が上がる
それに伴い体も熱を持ちやすい

このように、普段私たちが当たり前に感じていることも、実は自然界の法則が人間にもそのまま応用されます。ですので、自然が変化すれば人体にも当然影響は出てくるのです。

自然は六気からなる

東洋医学では、自然界で起きている現象を「風・寒・暑・湿・燥・熱(火)」の六気(ろっき)にまとめています。六気は春・夏・秋・冬の四季に従って規則的に変化し、木々や食物の生長・発育に寄与しています。

風(ふう):主に春の気ですが、年中発生します。
寒(かん):冬の気で、身体を冷やします。
暑(しょ):夏の気で、身体に熱を宿し、汗を出させます。
湿(しつ):長夏(梅雨)の気で、身体に湿(水)を貯めやすくさせます。
燥(そう):秋の気で、身体を乾燥させます。
熱(ねつ)・火(か):一般的には夏の気ですが、暑と違い季節性はありません。

気候の異常な変動は六淫になり、身体に影響を及ぼす

六気は自然の現象なので、身体に影響を及ぼすことはありません。しかし、急な季節の変わり目や大きな天候の変動は六気そのものが人体にとって脅威になりうります。

このように、六気が異常をきたすと、それぞれ「風邪(ふうじゃ)・寒邪(かんじゃ)・暑邪(しょじゃ)・湿邪(しつじゃ)・燥邪(そうじゃ)・熱邪(ねつじゃ)・火邪(かじゃ)」の六淫(ろくいん)に変化して、病気の発症の原因となります。

六淫の「淫」は「邪」のことで、「甚だしい(激しい)」・「侵淫(だんだんと入り込む)」を意味します。つまり、六淫は激しさをもって、身体に侵入し、病気を発症させるのです。

【例】
風邪(ふうじゃ):風により花粉がまって、花粉症となる
寒邪(かんじゃ):冬の寒さで風邪をひく
暑邪(しょじゃ):夏の暑さで熱中症になる
湿邪(しつじゃ):天候不良で身体がだるい・頭痛やめまい
燥邪(そうじゃ):気管支が乾燥して咳が出る
熱邪(ねつじゃ)・火邪(かじゃ):(季節問わず)急な気温の上昇でのぼせる

六淫には漢方薬で対応可能

六淫には、それぞれの邪に対応する漢方薬をもって治療することができます。

風邪→治風薬(風邪を鎮める漢方薬)
寒邪→散寒薬(寒邪を散らす漢方薬)
暑邪→袪暑薬(暑邪を追い払う漢方薬)
湿邪→袪湿薬(湿邪を追い払う漢方薬)
燥邪→治燥薬(燥邪を潤いをもって治療する漢方薬)
熱邪・火邪→清熱剤(熱邪を冷ます漢方薬)

 

病気の原因が六淫であると考えた場合、どの邪によるものかを適切に判断することで、症状を緩和させることができます。
もし、ちょっとした気候の変動で体調を崩す場合は、ぜひ漢方専門の医療機関で一度ご相談くださいませ。

<参考書籍>
・中医病因病機学(東洋学術出版社)

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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