西洋薬では通常、一つの病気・症状に対して、一つの薬が対応します。
例えば、風邪の場合、咳があれば咳止め、痰が出ていれば痰の切れを良くし、高熱であれば解熱剤が出たりと、症状と薬・病気は基本的に一対一の関係にあります。
漢方薬は病気そのものを診るのではなく、人を診る医学であるので、症状と体質に合わせて、薬を処方すると、複数の症状が一気に解決することも可能となります。
30代 女性
もともと精神疾患を患っており、複数の抗精神薬を服用なさっていました。
しかし、ずっと続けていくのは辛かったので、期をみて、薬を減らして、最終的に服用を中止しました。
ちょうどその頃、風邪を患ってしまい、特に咳が続いており、市販の漢方薬を服用してみたようです。
すると、その薬が効果てきめんのようでして、咳は少しずつ治ってきて、さらに、以前からあった耳鳴りが軽減、胃のムカつきや逆流性も軽減し、動悸も鎮まってきたとのことです。
しかし、薬が効きすぎているのが反って不安になって、当店にいらっしゃいました。
話を伺っていると、なるほど、それは確かに漢方薬の効果があるなと思いました。
その漢方薬は「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」です。
この漢方薬はもともと、婦人病の梅核気、今で言うところのヒステリー球といって、精神的なストレスによって、喉が塞がったような不快感を呈する病態に、使用される漢方薬です。
今回はそのような症状ではなく、複数の症状に効果を発揮しました。
ここまで効果を発揮するとはこちらもびっくりしましたが、処方と病態が合致していれば、一種類の漢方薬で驚くほど効果を発揮するのだということです。
半夏厚朴湯の治療の根本は「胃」です。
元来の胃腸の不調が全身に波及していると考えられるので、今回のように様々な症状に効果を発揮しました。
ですので、患者様にはこの漢方薬はあっているので、もう少し続けてみてくださいとお伝えしました。
今後調子が上向きになることを願いながら、患者様から漢方薬の本質を教えていただいたような、そんな出来事でした。
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