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【東洋医学/漢方で考える】足のつり / こむら返りと漢方薬

私ごとですが、先日長時間座っていたら足の指がつって苦しんでいました。
ですが、私だけに限らず多くの方が一度は足がつって痛いおもいをされているのではないでしょうか。
足のつりは何度起きても慣れることはできず、なんとかその場をやり過ごすのが精一杯ですよね。
*これ以降は足のつりを「こむら返り」に統一して記述していきますね。

当店にいらっしゃる方でも、頻繁にこむら返りを起こすしてお悩みの方もいらっしゃいます。
そのような方のために、今回はこむら返りについて東洋医学(漢方)の視点で解説をしていきます。

こむら返りとは

「腓(こむら)」はふくらはぎのことですが、「こむら返り」はふくらはぎに限らず、腕や首、腹筋など全身の筋肉に起こる痙攣として捉えられています。
こむら返りは、「血行不良」「筋肉疲労」「脱水」が主な原因として考えられていて、痛みは強く再発することも少なくありません。

デスクワーク中心の現代では動くことが少なく、なおかつ冷房で足元が冷えやすい環境にあるので、いとも簡単に足の血流が悪くなってしまいがちです。血流が悪くなると、筋肉に十分な栄養を送り届けることができなくなり、こむら返りが起きやすくなります。

東洋医学(漢方)で考えるこむら返り

東洋医学では、筋肉は「血(ケツ)」によって栄養されていると考えます。
この血が不足した状態にことを東洋医学では、「血虚(ケッキョ)」といいます。

血虚になると筋肉に栄養が届かないので、筋肉は柔軟性を失い異常な収縮を起こして固くなりこむら返りが生じます。
東洋医学における血は全身に作用するため、筋肉だけでなく、皮膚・爪・髪の毛・さらには精神までも栄養しています。

そのため、血が不足している場合は筋肉(こむら返り)だけでなく、他の部位の血も不足するため、髪の毛がパサついたり、爪が割れたり、皮膚がガサガサになったり、精神不安や不眠などが現れることがあります。

なぜ夜中にこむら返りを起こしやすいのか?

こむら返りは夜間に発症しやすいとされています。
寝ている間はずっと同じ姿勢のままであるため、血液循環が悪くなり結果としてこむら返りが起きやすくなります。

東洋医学でも同様に、血虚の症状は夜間に起きやすいと考えられています。
血は日中には特に「体の表面部」を栄養して、体を動かすのをサポートしています。
夜になり眠る頃には、内臓に栄養を回して疲労回復を行うので、血は体表面には行き届きにくくなります。
そのため、手足末端に血が巡りにくくなってしまうため「こむら返り」が生じてしまいます。

こむら返りには芍薬甘草湯

漢方薬は長く服用しないと効かないと思われがちですが、もっとも即効性がある漢方薬の一つに芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)があります。
別名を「去杖湯(きょじょうとう)」とも呼び、「杖を使わなくてもよくなる」との意味が込められています。
こむら返りといえば芍薬甘草湯」といっていいほどよく使われていて、病院でも多く処方されています。

芍薬甘草湯は、芍薬(シャクヤク)と甘草(カンゾウ)のわずか2種類で構成された漢方薬です。
芍薬は「血を補う作用」に優れていて、とりわけ筋肉を栄養し、筋肉の緊張や痙攣を緩めて痛みをとる働きに優れています。
甘草は胃腸を元気づけて血の生成を後押ししたり、「急迫を治す」作用があり、急激な痛みや痙攣などを緩和させる作用があります。

このため、芍薬甘草湯は、「こむら返り」だけでなく「腹痛」や「生理痛」、「腰痛」など全身の痙攣性の疼痛に幅広く応用されています。
味も甘みがありクセがないので、服用しやすいのも特徴です。

芍薬甘草湯の服用方法

こむら返りはいつ起きるのかが予測しづらいですよね。
そのため、芍薬甘草湯をどのタイミングで服用すれば良いのかよくわからない方もいらっしゃるかと思います。
そこで、芍薬甘草湯を単体で用いるときの服用タイミングを2つご紹介します。

1. こむら返りが起きたらすぐに服用する

こむら返りの場合、芍薬甘草湯を服用してから「5〜6分以内」で効果が出ます。
即効性があるので、頓服薬として発症したらすぐに服用するのが望ましいです。

寝ている時にこむら返りが起きやすい方は、枕元に水と芍薬甘草湯エキスを準備しておくと発症時にすぐに対応できます。
また、芍薬甘草湯はゴルフや山登りの方にも重宝される処方で、筋肉疲労でこむら返りが発症した際にすぐに服用することで症状をいち早く緩和させることができます。

2.寝る前に予防的に服用する

夜中に足がつりやすい方は寝る前に芍薬甘草湯のエキスを1袋服用しておくことで、寝ている間のこむら返りを予防することができます。

こむら返りの体質改善とは

芍薬甘草湯はあくまでも一時的な予防に用いたり、発症時の対症療法としてしか用いることができません。
そのため、頻繁にこむら返りを起こす人は芍薬甘草湯を服用しても根本的に体質が変わるわけではありません。

むしろ、芍薬甘草湯には甘草という生薬が多量に含まれており、毎日3回決められた通り服用していると、副作用として「偽アルドステロン症」が発症してしまうリスクがあります。

甘草は多くの漢方薬に含まれていて、他にも漢方薬を服用している場合はさらに服用量が多くなってしまいます。
ですので、芍薬甘草湯を服用するにしてもエキス製剤なら1日1回(多くても2回)までに留めておくのが現実的と言えます。

そこで、こむら返りを起こしやすい方には体質改善として別の処方を用いることが必要です。
とりわけこむら返りに多い体質が「血虚」「冷え」「血行不良」「加齢」です。

代表的な漢方薬として疎経活血湯・芎帰調血飲第一加減・桂枝加芍薬湯・当帰建中湯・桂枝加朮附湯・大防風湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯・牛車腎気丸など多くの処方がこむら返りの体質改善として応用されてますが、一律的に用いても効果はありません。

体質に合わせて処方を選択することが大切ですので、こむら返りの体質改善をご希望の場合はぜひ専門の漢方医療機関にご相談ください。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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