更年期に現れる症状の一つとして、「乾燥感」があります。
女性ホルモンであるエストロゲンが減少することで、皮膚や粘膜の潤いがなくなってしまい、皮膚やのど、膣の乾燥感が生じることがあります。
加えて、もともとアトピー性皮膚炎を患っている方は皮膚のバリア機能がとぼしいため、より皮膚の乾燥感が生じやすくなります。
今回は、更年期女性の皮膚の乾燥感が劇的に改善した症例をご紹介します。
症例
相談者:40代後半 女性
相談内容:皮膚の乾燥感が強くて困る
当薬局には長らく、手湿疹やアトピー性皮膚炎の相談にいらっしゃっている患者さんです。
しばらく調子が良かったのですが、秋頃から皮膚の乾燥感と痒みが強くなったので、ご相談にいらっしゃっいました。
皮膚に潤いがなく、ゴワゴワしていて少しの刺激にも痒みが生じてしまうようです。
保湿剤を塗ってもすぐに乾いてしまい、どうにもならないということでご相談にいらっしゃいました。
処方選択
この方の皮膚は更年期とアトピー性皮膚炎、加えて秋〜冬にかけての湿度の低下で、潤いがひどく失われてしまった状態です。
皮膚の赤みはあまりないため、今は炎症はあまりないと考えられます。
したがって、まずは皮膚を潤しながら痒みを鎮める処方をお出ししました。
処方)当帰飲子(トウキインシ)
2週間ほど服用したところ、痒みは少しおさまるようでしたが、乾燥感はほとんど変わりません。
私は今までに何度もこの方に当帰飲子を出してみたことはありましたが、効果のほどはイマイチでした。
今回も思ったような結果にはなりませんでした。
かといって、乾燥している時期に炎症を鎮める「黄連(オウレン)・黄芩(オウゴン)」などの、炎症を鎮める作用が強いものを多用すると、乾燥が強くなり、状態が悪化する経験もしています。
そこで、当帰飲子だけでは乾燥はとりきれなかったため、強力に潤いをつける「動物生薬」を加えることにしました。
漢方薬は植物だけで成り立っているのではなく、動物も使うことがあります。
しかし、動物生薬は高額なためやたらめったら多用するわけにはいきません。
患者さんに了承を得て、追加することにしました。
これを加えてお出ししたところ、服用した直後から皮膚の乾燥感が軽減するのを実感されたようです。
本人はびっくりしたようですが、私もすぐに違いを実感できたことに驚きました。
とはいえ、値段も高額なため症状が安定したら服用量を調整して、最小量で安定できるようにコントロールできればなと思っています。
まとめ
更年期の不調は東洋医学的な観点では、「陰の損傷」つまり身体の水分が抜け落ちることともいえます。
これにより、身体の陰陽のバランスが乱れてさまざまな症状を引き起こします。
この方は、もともとのアトピー性皮膚炎により皮膚のバリア機能が弱っていたため、そこに負荷がかかってしまったものと思われます。
漢方薬は基本的には植物由来の生薬を用いるますが、それでも効果が得られないときは、動物生薬を用いることで打開策を見出せることができた貴重な体験でした。








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