先日、とある漢方の先生が「漢方薬は綺麗事では治せない」ということを仰っていました。
私の中では、シンプルにスマートに漢方薬を用いて症状を改善したいと常々思っていました。
しかし、現実はそんな簡単なことではありません。
臨床にたずさわればたずさわる程、綺麗事では患者様の症状を改善させることができないと痛感します。
今はいろんな情報がインターネットや書籍、SNSから簡単に入手することができます。
ちょっと知りたいことがあれば、おおかたの情報は手に入ります。
ですので、その分野の専門家ではない一般の方でも、適切な情報源にアクセスできればかなりの情報や知識を手に入れることができます。
中にはよく勉強したり、多くの情報を調べて私のお店にいらっしゃる方もいて、私が知らないサプリメントや特殊な病気、症状などをお話になさる方もいらっしゃいます。(まだまだ勉強不足です)
当然ながら、漢方薬についても多くの情報がメディアに溢れています。
- ◯◯という病気や症状には××という漢方薬が有効である
- あなたの体質が簡単にわかる体質チェックシート
- △△という病気に◎◎という漢方薬を用いたら改善した(症例)
などなど、ちょっと調べればどれも魅力的な情報がお手軽に入ってきます。
かくいう私もこのstand.fmやこのコラム、インスタグラムでも情報発信をしています。
もちろん、こういった情報のおかげで症状が改善したり体調が良くなることもたくさんあるのだと思います。
もしくはこういった情報をきっかけに、漢方薬に興味をもって漢方薬の治療に行かれた方もいるかもしれません。
それが、決して悪いわけではないんです。
ただ、私のような漢方薬局にいらっしゃる方はすでに一枚壁を超えた人、例えばドラッグストアで買った薬を使ったけど良くならないとか、病院で治療をしたけど改善しないという方が多くいらっしゃいます。
そうなってくると、現実の臨床の現場ではそんな簡単にスパッと綺麗に改善しないことが少なくないんですね。
私も悪いんですが、症例についてコラムで取り上げることがあるのですが、多くの場合は良くなったケースしか載せませんし、その裏にはうまくいかなったケースも多々あるはずなんです。
(これは私の腕がまだまだ悪いからだけかもしれませんが・・・)
一定以上のラインを超えた症状や病気というのは、教科書通りの典型的な漢方薬だけで良くならないことも多々あります。
ですので、一つの漢方薬だけでスパッとスマートに症状が改善することは少なく、複数の漢方薬を駆使しながら泥臭く治療にあたることの方が多いと思います。
手軽に入手できる情報というのはとても便利なので救われる人がたくさんいるのだと思いますが、それが叶わなかった人の受け皿として、我々のような漢方専門の医療機関があるのだと思います。
これは、漢方薬だけに限った話ではないんですね。
「理想と現実」というのも必ず存在します。
ちょっと話がずれてしまうかもしれませんが、以前「漢方の土台は食事:【たんぱく質】について」でたんぱく質の重要性についてお話ししました。
*たんぱく質をとることの重要性についてお話ししたので、興味ありましたらご視聴ください。
たんぱく質は筋肉をつける意味でも、精神的な面でも非常に重要な栄養源であります。
ですが、実際にそれを全員に押し付けることがいいとは限りません。
私のお店には高齢の方もいらっしゃいます。
「たんぱく質をとりましょうって、病院やテレビでも言われているのですが、とらないとダメですか」
と訊かれることはあります。
患者様の中には「頑張って毎日タンパク質を食べています。」という方もいらっしゃいます。
AIに質問しても「食べましょう」が正解ですし、私も医療人ではありますので食べられるなら食べてほしいとは思っています。
ですが、当の本人を無理矢理毎日タンパク質を食べさせるのと、無理せず好きなように食事をさせてストレスなく毎日を過ごさせた方がその人にとって幸福なのか、何を重視するかによって選択肢が変わってくるわけです。
これは我々のような漢方を扱っている人間だけではなく、どの立場の人でも起こりうることなのだと思いますが、紙面やメディアで語られることと実際の臨床の現場では、理論通りにいかないことだらけで葛藤することも少なくはないかと思います。
だから、正解に辿り着いた時、うまくいった時に嬉しさがあるのかもしれません。
まとまりがなくなってきましたが、目指すべきはスマートにシンプルに。
しかし、そこにたどり着くまでは泥臭く、漢方を追求しようと思います。
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