漢方といえば「体質改善」だと思っている方も多いかと思います。
これは、漢方が「人を診る医療」であることが影響しているのかもしれません。
では、そもそも漢方でいう体質改善とは如何なるものなのでしょうか。
医学的に、明確な体質改善の定義があるわけではありません。
ですので、今回は私が思う体質改善について解説しようと思います。
体質とは?
体質改善についてお話しする前に、体質について考えてみます。
そこで、まずは体質について辞書で調べてみます。
生まれながらにもっている体の性質。また、性向。「虚弱な━」「何物にも妥協しない━」
大辞林 第4版
ですが、漢方ではもっと広い意味で用いているように思います。
というのも、生まれながらの性質が現在の年齢まで引き継がれているとは限らないからです。
ということで、私が思う漢方での体質は以下の3つの要素が絡んでいると考えます。
- 生まれながらの性質
- 年齢
- 置かれている環境
1つ目は辞書と同じ意味です。
虚弱体質であったり、怒りんぼう体質であったり、冷え症体質であったりするのかと思います。
しかし、2つ目のように年齢を重ねると急に体質が変わることがあります。
例えば、女性の場合出産を機に体質が変わったというのはよくあります。
また、年齢を重ねていくうちに急に体が弱くなったのも体質の変動期とみていいかもしれません。
3つ目が置かれている環境です。
例えば、寒い場所にずっといなければいけない(仕事で冷蔵庫の中に1日中いるとか)場合、常に身体に冷気を受けているので、身体は冷える傾向にいきますし、湿気が多い地域で暮らすようになれば、身体に水分が溜まりやすくなります。
このように、体質というのはあくまでもその人の現在の状況を反映しているといえ、それは生まれながらの要因だけでなく、環境や年齢によって移ろいゆくものだと考えられます。
体質改善とは?
私が思う漢方の体質改善とは、「身体を「中庸(ちゅうよう)の状態に導くこと」です。
中庸とは「偏りがないこと、調和がとれていること」です。
漢方では、人の身体は中庸であることが健康な状態としています。
たとえば、血圧は高すぎても低すぎてもダメですし、体温も高すぎず低すぎず、体重も体型も極端に偏らない方が健康といえます。
中庸からはみ出してしまうと、身体のバランスを欠いて病気になりやすくなります。
漢方では、中庸からはみ出した状態を「虚」と「実」の2つに分けることができます。
虚 | 身体を構成する「気血水、陰陽」が不足した状態 |
実 | 身体に害を及ぼす「邪」が過剰な状態 |
漢方では、何が不足していて、何が過剰なのかを現したものが「体質」と呼んで、そのバランスを整えて中庸へと導くことが「体質改善」になります。
漢方治療では「虚」の場合は補い、「実」の場合は除いていきます。
漢方薬は体質改善だけではない
ここまで体質改善の話をしてきましたが、「やはり漢方薬は体質改善ではないか」と思うかもしれません。
しかし、実際の治療では体質改善だけを行っているわけではありません。
漢方薬には2つの治療法があります。
- 本治:体質や病気の根本を改善していく治療
- 標治:症状の改善を優先する治療
本治だけではなく、標治も多用します。
例えば、風邪や花粉症などの急性症状です。
この場合は、短期決戦が大事になります。
悠長に体質改善などど言っている場合ではありません。
今の症状から考えられる治療(標治)を優先して行う必要があります。
この場合の漢方薬治療は、体質に関係なく行われることもあります。
標治の場合は即効性があり、30分以内で症状の軽減がみられることもあります。
このように標治と本治をうまく使い分けて治療することが、漢方では大切になります。
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