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漢方について

【漢方の体質】ヒバリ型とフクロウ型

山本巌先生が見つけ出した漢方の体質分類「ヒバリ型」と「フクロウ型」。
漢方業界ではとても有名な話なので、おそらく漢方を生業にしている人は一度は耳にしたことがあるかと思います。

山本巌先生は「病人を救うことが真の学問であり、医学には西洋と東洋(漢方)もない、病気を治す医療こそ良い医学である」と述べており、常に臨床に軸足を置いて治療にあたっている漢方家でした。

そのため、山本先生の書かれた本は机上の空論ではなく、患者様とのやり取りの中で見出された血の通った考察であるので、読んでいて臨場感があり、すっと言葉が頭に入ってきます。

山本巌先生は2001年に亡くなられてしまいましたが、現在もその意思が受け継がれており、1986年に山本巌先生が立ち上げた「第三医学研究会」が今も脈々と受け継がれています。


ヒバリ型とフクロウ型とは

これは何かと言いますと、人をクロノタイプ(得意な活動時間帯の傾向)によって二つに体質分類する考え方です。

ヒバリ型もフクロウ型も、もともとは鳥の特徴から分類したものです。
ヒバリというのは「早朝に活動を始める鳥」と言うことで「朝型」のタイプのことです。
フクロウは夜行性なので「夜型」タイプに該当します。

実際にヒトにも、「朝型」と「夜型」、さらには「中間型」があり、これは遺伝子レベルで決まっていて、また年齢によっても変化することが知られています。
ヒトでは「中間型」が一番多く約40%ほどいて、次に夜型・朝型の人です。
超夜型や超朝型はごく少数に限られているとされています。

ですので、本来は自分のクロノタイプにあった生活を心がけるのが望ましいですが、実際のところは朝型や中間型に適した生活設計(仕事や学校)になっていて、夜型や超夜型の方には生活しずらいのが現状です。

昔は特にフクロウ型(夜型)は実社会では生きづらく、学校に通う年齢ですと以前は怠け者扱いされたりや気合・根性が足りないなどと怒られたり、根性論を押し付けられてきたのではないでしょうか。

ということで、山本巌先生が提案した「ヒバリ型人間」と「フクロウ型人間」について解説をしてみます。

ヒバリ型人間

「世の中には体の丈夫な人がいる。(中略)裸一貫からスタートして、一代で身代を築きあげ、例えば大会社の社長となる。
(中略)
このような人達は滅多に病気に罹らない。
しかし、一度やると、乗るか反るかの大病で、昔ならば肺炎や腸チフスのようなものである。
(中略)
胃腸も至って丈夫に出来ている。食欲も盛んで、何を食べてもおいしく、少し位食べ過ぎをしてもお腹をこわさない。
骨格・筋肉などの運動系や、呼吸器・循環器系も丈夫で、体力があり、ねばりも良い。車に例えるとダンプカーである。
朝は早起きで、寝付きも良く、若い頃は不眠などとは縁が遠い。雑音のひどいところ、また、手足の充分に伸ばせないような狭い所など、どのような場所にでも横になれば、すぐに眠られる。」

『東医雑録(1)/山本巌』(燎原書店)P691-692

みなさんの周りにも、このようなパワフルなタイプが1人はいるのではないでしょうか。
遅くまでお酒を飲んで酔っ払ったとしても、翌朝には元気に会社に出てバリバリ仕事をする人、疲れ知らずで羨ましいと思ったこともあるかもしれません。

日本漢方でいうところの実証タイプになります。
なまじっか体が丈夫で無理が聞くので、若い時は大丈夫なのですが、年齢を重ねると体力の低下とこれまでの無理がたたって大病になってしまう恐れがあります。

フクロウ型

「年がら年中、いろいろと身体の苦情が絶えない。
体がしんどい、疲れ易い、体力がない、頭が痛む、肩が凝る、胃が痞える、重苦しい、嘔き気がある、胃が痛む、めまいがする、手足が冷える、朝は起きにくい、夜は眠られない。
不定愁訴といわれ、非常に訴えが多い。
それにほとんどが自覚症状だけで、たいした検査所見が得られないために、昔は夏ならば脚気症候群、近頃は自律神経失調症、肝臓の働きが少し悪い、女性ならば血の道(女性ホルモンの変動によって現れる精神症状や身体症状)だ、更年期障害だ、などと来院するものが多い。
体力がなく、粘りがきかないため、力仕事には向かない。
(中略)
「朝寝の宵っぱり」で朝はいつまでも床に居たい。
日曜日は昼近くまで寝ている者もある。
たとえ早く起きたとしても、頭がボーッとして、はっきりしない。体を動かすのも大儀である。
(中略)
朝食は欲しくない。食べないと体に悪いからと考えて、無理に口へ入れることにはしているが、決して起きた直後は食べたくない。
午前中は身体の働きも良くないし、頭の働きも悪い。段々に良くなり、午後3時をすぎると非常に良くなる。日が落ちる頃から夜にかけては、一日中で最も元気である。」

東医雑録(1)/山本巌』(燎原書店)P693-695

昔から虚弱体質で、朝が苦手で学校生活が大変だった方はこのタイプかもしれません。
山本先生曰く、世の中の2〜3割が「フクロウ型」と言われています。

フクロウ型は体が弱いので、ちょっとしたことですぐに休んだり病院に行くので、若い時は大変ですが、歳をとるとだんだん元気になっていき、長生きするようです。

フクロウ型の漢方薬治療

ヒバリ型のタイプはなかなか病院に行かないので治療に取り掛かるのが困難ですが、フクロウ型は年少から病院にかかる機会が多いです。

今では、福岡県の「久留米大学医療センター 先進漢方治療センター 」に2018年8月からフクロウ外来が新設されました。
東京からだと通うのは困難ですが、フクロウ型に心当たりのある九州地方の方はぜひ一度ご相談してみてください。

フクロウ型は虚証に該当して、とりわけ貧血やめまいなどを症状として訴えることが多く「苓桂朮甘湯」を用いることが一般的となっています。

しかし、現代は典型的な「フクロウ型」というのが果たしてどれくらいいるのでしょうか。
純粋な「フクロウ型」ではない、新しいタイプの「フクロウ型」になっているように思えます。
スマホやパソコンなどのデジタルデバイスの多用やクロノタイプに関わらず、就寝時間が遅れたりと体質以外の要因が偽フクロウ型を生み出しているように思います。

このお話は「漢方薬局+C」小岩井先生がstand.fmで詳しく解説しています。
よろしければ、ぜひご視聴ください。

まとめ

今回は「ヒバリ型」と「フクロウ型」について解説をしました。
山本先生の臨床での観察眼はとても鋭く、大きな気づきを与えてくれますが、残されたわれわれはさらなるアップデートを遂げて、より良い漢方治療をおこなっていかないといけません。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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