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症例紹介

症例43 股関節痛の漢方薬治療

相談内容:股関節痛
相談者:30代後半 女性

2ヶ月ほど前から、左脇腹から股関節にかけてピキッとした痛みが出るようになったようです。
産婦人科、消化器科、泌尿器科と診てもらったものの、どこにも異常がないと言われたそうです。
実際、排便時や排尿時、月経時などに決まって痛みが出るわけではないようなので、これらとの関連はなさそうです。

ですが、股関節が痛くなる前に人生三度目のぎっくり腰が出たようで、まだ腰の痛みも完全には癒えてはいないとのことです。

鎮痛剤を服用すると腰痛は緩和しますが、股関節や脇腹の痛みには効いていません。

悪化要因
・同じ姿勢で座っている時
・前屈すると痛む(靴下を履く姿勢)

痛みが緩和する時
・姿勢を変える
・立ち上がる

その他
・冷え症が強い(足先)、毎年しもやけになる
・もともとスポーツをしていたが、腰を痛めてから控えている
・仕事柄、同じ姿勢で座っていることが多い

処方選択

今回のケースでは、産婦人科、消化器内科、泌尿器科でも異常が見つからなかったことにより、おそらく内臓には問題はありません。

気になるのは、股関節痛の前にぎっくり腰になっていることです。
そして、前屈みになると痛みが出ること。
これらより、腰回りの神経を圧迫したことにより、股関節の神経にまで波及し、痛みが生じていると考えた方が良さそうな症例です。

実際に、鎮痛剤の服用により改善がみられないので、神経の痛みだろうと思われます。
漢方では、痛みを「通じていない」から生じると考えます。
このケースでも、腰の神経の圧迫により通じていないことが痛みに繋がっていると仮定できます。

仕事柄同じ姿勢を取り続けたことで、腰回りの筋肉が固まってしまったことも痛みを起こす原因の一つでしょう。
さらに、冷え症が強いので血流が悪くなっていることも改善すべきポイントです。

以上より、漢方薬の処方選択では、以下の2点を考慮して、処方を組み立てました。

・冷えの改善(血流を促す)
・筋肉に柔軟性をもたせる

処方:当帰四逆加呉茱萸生姜湯+桂枝茯苓丸
*あくまでも処方は一例になります(必ずしも全ての人に当てはまるわけではありません)

<1週間後>
痛みが軽減してくるのを実感してくれました。

<4週間後>
痛みが出たのは、眠れなかった日の後の2日間だけでした。
だいぶ痛みが緩和されたことと、患者様も運動が行えるようになってきたので、もう2週間お渡しして漢方薬の服用は終えました。

あとは、ご自身でストレッチや運動を行っていくことで固まった筋肉も和らいでいき、血流も改善されていくものと思われます。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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