web予約
LINE予約
電話

症例紹介

症例61 手の腫れ・赤みは熱証?寒証?

70代女性
相談内容:指のむくみ・腫れ・曲げづらい

1月頃から人差し指と中指に、赤みを伴う腫れが生じるようになりました。(来局されたのは3月頃)
痛み、痺れ、痒みなどはありません。

病院で検査をしても、リウマチなどの異常はなく様子見とのことでした。
徐々に赤みは広がり、手掌全体に広がってきました。
症状は両手左右対称に生じています。
明け方、風呂上がりに赤みが広がっているような気がします。


処方選択

手の赤み、腫れ、風呂上がりに手指の赤み・腫れが増悪するという情報を見ると、明らかに熱証を呈しいます。
しかし、手を見せていただくと指の腫れは感じるものの、赤み・ほてりは見受けられません。

とはいうものの明らかに熱状を示しているので、まずは指の炎症をとりながら腫れを抑える処方をお出しすることにしました。

処方1)越婢加朮湯

1週間服用していただきましたが、変化はまったくありません。
熱証の場合、服用すると割と素早く効果を発揮することが多いのですが、効果が見られないということは別のアプローチが必要だということです。

そこで、発症した時期が1月であるということ、明け方に症状が悪化するということより、熱証ではなく反対に冷え(寒証)によるものかもしれないと考えを改めました。

処方2)当帰四逆加呉茱萸生姜湯+血流を改善する漢方薬

こちらを1週間お出ししたところ、見事に予想は的中し症状は綺麗さっぱり落ち着いたようです。


考察

今回は寒熱の取り違いで苦戦した症例を取り上げました。
一見熱証に見えても、実は寒証ということもありうるということです。

今回のケースでは最初は寒証により、手足末端の血流は悪くなります(血管が細いため)。
しかし、時間経過により手足末端がうっ血が生じてしまい、末端での血の循環が行われなくなります。
そうすると熱をもった血が停滞することで、赤く腫れが生じていたのでしょう。(寒極まれば熱となる)

いわゆる「しもやけ」のような状態であったのかと思います。
そのため、いっけん熱証のように見えても本質は冷えによる血流障害を改善しない限りは、腫れも引いていかないということです。

皮膚表面に現れる症状はカウンセリングの際に非常に参考になるのですが、それだけで判断すると誤った漢方薬をお出ししてしまうこともあります。
全体を総合して、きちんと判断していくことが大切だと身にしみた症例でした。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

関連記事一覧

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事
  1. 症例62 手がかりの少ない肋間神経痛

  2. 症例61 手の腫れ・赤みは熱証?寒証?

  3. 症例60 子供の花粉症に越婢加朮湯

おすすめ記事