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秋の漢方養生法

秋は夏のような暑さが残る「初秋」から、冬の寒さの前触れでもある「晩秋」にかけて気候が変動していく季節です。
ちょうど、秋分の日が昼と夜の時間が同じになり、その日を境に「陽」から「陰」に転じます。

東洋医学では、自然界の変動は人体にも影響を及ぼすと考えており、秋の気候に相応しい過ごし方を教えてくれています。
参考にできるところは取り入れて、季節の波に乗って健やかな日々を送れるようにしていきましょう。

【秋の漢方養生のポイント】
・秋は五臓では「肺」、六腑では「大腸」が担当
・秋は「乾燥」の季節
・秋は「憂い・悲しみ」の季節

秋は肺と大腸に影響が出やすい

東洋医学では五行学説に基づいて、季節を「春・夏・長夏(梅雨)・秋・冬」の五つに分類します。
同様に人体の内臓も五臓六腑に分けて、五臓は「肝・心・脾・肺・腎」、六腑は「胆・小腸・胃・大腸・膀胱・(三焦)」としています。

五臓
六腑小腸大腸膀胱(三焦)
五味酸味苦味甘味辛味鹹味
五志

 

五行学説に基づくと、秋は五臓では「」、六腑では「大腸」が該当します。
五臓と六腑は表裏の関係にあり、一見関係なさそうにみえる「肺」と「大腸」はお互いに密接な関係にあります。

例えば、喘息持ちの人(肺にダメージがある人)は便秘になりやすかったり、咳や喘息に用いる漢方薬でいぼ痔(肛門も大腸の守備範囲と考える)を改善できたりします。

また、肺は「皮膚」や「鼻」にも通じています。

ですので、秋は「肺」「大腸」「皮膚」「鼻」に異変が起きやすくなるので、注意が必要です。

乾燥症状に注意が必要

湿度が高い夏から秋に移行する過程で、湿度は徐々に下がっていき、ついには乾燥が気になるようになってきます。
一般的に室内の湿度が40%をきると、乾燥症状を自覚するようになります。

では、この乾燥症状は体のどこに出るのかといいますと、「肺(皮膚・鼻・気道などを含む)」と「大腸」です。

具体的には以下のような症状が現れやすくなります。

【肺と大腸の乾燥症状】
・乾いた咳
・のどや鼻の乾燥感
・鼻づまり
・のどの痛み
・痰がきれにくい
・声がかれる
・皮膚の乾燥、カサつき、痒み
・風邪をひきやすくなる
・大便乾燥(水分が少ない)
・排便困難(便秘がち)

近頃は年中問わず、コロナウイルスや風邪が流行っていますが、それでも乾燥が強まる秋以降に風邪が流行りやすくなります。

気道の粘膜はウイルスや細菌などの異物が入ってきた時に、粘膜で絡み取って排出する役目があります。
しかし、乾燥によって粘膜がなくなってしまうと、異物を捕まえることができずに体内への侵入を許してしまいます。
体内に入ってしまったウイルスや細菌は増殖して、風邪を引き起こします。

ですので、秋の養生の一つは肺の乾燥対策になります。

秋は「憂い」の季節

秋はセンチメンタルな気分になりやすい季節です。
それは、日照時間が減少することで幸せホルモンでもある「セロトニン」が減少し、反対に眠気を誘発するホルモンの「メラトニン」が増えるためです。

憂いや悲しみは、「気」を消耗させてしまうと考えられています。
気が消耗してしまうと、肺を動かすパワーも落ちてしまいます。
反対に肺が弱まってしまうと、憂いや悲しみの感情が強くなってしまいます

そうならないためにも、肺を丈夫にして心身のバランスを整えておくことが大切です。

秋の漢方養生法

これまでご紹介してきたように、秋は「肺」と「大腸」の「乾燥」、そして「憂・悲」の情緒への影響が出やすい季節です。

したがって、これらの対策をすることが、秋の養生法といえます。

乾燥対策①マスクの着用

乾燥した空気は口や鼻を通って肺に達するので、一番手っ取り早い対策が「マスク」の着用です。

乾燥対策②加湿器の使用

室内の湿度が40%を切ると、乾燥症状が出やすくなるので、40-60%ほどの湿度になるように加湿器を使用するのもおすすめです。

また、ユーカリ・ティーツリー・シダーウッドなどのアロマオイルは気持ちの安定としてだけでなく、抗菌・抗ウイルス作用も持ち合わせているため、香りが好きでしたら、取り入れていただけると一石二鳥です。

乾燥対策③秋に取り入れたい食材

秋は体に潤いをつけて、なおかつ肺の働きを良くする「気」を補う食材を中心に取り入れるのがおすすめです。

【潤いや気を補う食材】
・豆腐
・鶏肉
・豚肉
・山芋
・きのこ類
・かぼちゃ
・いも類
・はちみつ
・ブドウ
・梨
・あんず(杏)など

杏は漢方薬として用いる場合の生薬名は、「杏仁(キョウニン)」といい、咳止めや腸を潤して便通を促したい時に用います。

おすすめの食材としては「梨」で、肌や肺を潤す作用に優れているので、乾燥から身体を守ってくれます。

また、五行論では味覚は「酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味」に分かれていて、秋は「辛味」に該当します。

辛いものは血流を促し、そして発汗も促します。
汗が出るということは、体液を皮膚表面に送り届けるということなので、皮膚表面が潤います。
また、辛いものは皮膚の表面の血流を促して、皮膚の表面に栄養を与えてくれます。

ですので、辛味のある食材も秋にはうってつけです。

ただし、辛いものをとりすぎてしまうと、汗が出過ぎて体の中の貴重な水分を失うことになるので、唐辛子などの刺激の強いものはほどほどにしましょう。

【辛味のある食材】
・大根
・ネギ
・玉ねぎ
・ショウガ など

この季節、動物は冬眠に向けて脂肪を蓄えて、冬ごもりの準備期にあたります。

人間も同様に夏場は湿気で胃腸がやられて、食欲が落ちる傾向にありますが、秋は乾燥することで、胃腸の機能が高まり「食欲の秋」といわれるように、食欲が増しやすくなります。

一方で、秋はもっとも太りやすい時期ともいわれています。

人の基礎代謝がもっとも高くなるのは4月、もっとも低くなるのが10月と言われていて、その差は11%になります。
ですので、10月はもっとも脂肪をためこみやすい時期といえます。

潤いをつける食材には果物が多いですが、「潤いをつけるため」とたくさん食べてしまうと脂肪に変わってしまうかもしれませんので、ご注意ください。

憂い対策① 早寝早起

秋はどんどん日が短くなっていく一方、夜が長くなります。

「秋の夜長」、「読書の秋」、「芸術の秋」とあるように、秋は感受性が高まり、なおかつ夜も過ごしやすくなってきたので、ついつい夜遅くまで本を読んだりスマホをみたり、趣味に没頭したりして、睡眠時間を削ってしまう方もいるかと思います。

しかし、東洋医学的には寝ている間に血は作られるため、睡眠不足になると血が不足します。

血は陰でもあり、体に栄養や潤いを届けてくれるものです。

また、心の栄養も血によって補われているため、血が不足することによって、情緒が不安定になりがちです。

特に、夏の疲れを秋に持ち越してしまった方は、日が短くなった今こそ自然のリズムに合わせて、早めに就寝し心身ともに回復することが大切です。

憂い対策② 好きな香りを用意する

香りと精神には深い関係があり、集中力の向上、気持ちの安定、ストレス軽減作用、リラックス効果、不安軽減などさまざまな効果が知られています。

「ラベンダー」や「ゆずの香り」は気持ちを落ち着かせる効果が期待できるので、お風呂に入れたりやアロマオイルとして活用していただくのも良いかと思います。

ただ、香りの好みは個人差があるので、自分の好きな香りを使うのが一番です。

ぜひ自分の好きな香りを、探してみてはいかがでしょうか。

漢方薬では「香蘇散(コウソサン)」に入っている「香附子(コウブシ)」「蘇葉(ソヨウ:シソの葉)」「陳皮(チンピ:ミカンの皮)」「生姜(ショウガ)」は香りが豊かなもので、飲むアロマだと個人的には思っています。

気分がスッキリしない方やストレスで食欲がない方、頭痛がする方など幅広く用いることができます。

まとめ

今回は、秋の養生についてご紹介しました。

全部を実践するのは難しいかもしれませんし、個々人の体質によってはもっとベストな方法があるかと思います。

ただ、秋は「乾燥」によるダメージがもっとも起きやすいので、そのことを意識して日々を送って欲しいと思います。

養生だけではどうにもならなくなった時は漢方薬の出番です。

秋の漢方薬については、また機会を改めてご紹介したいと思います。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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