最近、メンタルの不調の相談が増えています。
コロナの影響はかなり大きいのかな感じています。
今回の症例は初診はコロナ以前のものですが、
メンタルの不調に漢方薬が効果を発揮したものを
ご紹介します。
症例 40代 男性
部署が変わって数年、
今までとは違うマイペースな上司と
仕事をすることに。
だんだんと上司のマイペースぶりに
イライラするようになってきました。
そう語りだす声は力強く、
昔から運動をし続けてきたこともあり、
体格もがっしりしていて、
生気の強さがにじみ出ている。
イライラすると
家族や同僚にキツくあたってしまうのが
やめられない。
同時に耳周囲に痛みが及ぶ。
また、町中でも歩くのが遅かったり、
危ない運転をする自転車を見かけると、
あたまに血が上って、爆発しそうになるとのこと。
仕事は嫌いではなく、
むしろやりがいをもっているのだが、
このストレス反応をなんとか
軽減できないものかと
いう相談です。
処方の選定
このケースではストレス要因が明らかです。
人によってストレスがかかったときに
現れる反応は様々です。
この患者様の場合は、
症状がイライラとして現れ、
しかもため込まずに発散する方に
向かいます。
もう一点、
漢方治療をするばあいに
大事なことがあります。
その人のもつ体の強弱(虚実)を
見極めることです。
今回は
・体格もがっしりしている
・食欲も旺盛
・声も力強い
・便秘がち
・舌白苔
これだけ揃えば、
処方もすんなりと決まります。
ストレスによって乱れた
自律神経を整えるのですが、
同時に胃腸の鬱滞を流すことにより、
全身の調和がとれるようになります。
その様なときに用いる漢方薬が
大柴胡湯(ダイサイコトウ)です。
服用後の経過
大柴胡湯を10日後
・便秘がやや改善
・イライラする頻度減少
・耳の痛みも減少
その後、
出張などで疲れると
耳の痛みがでることもあるが、
おおむね改善傾向に。
便通は最初は調子がよかったが、
徐々に下痢気味になってきたので、
大黄(ダイオウ)の量を減らして、
調整をしていきました。
4ヵ月ほど服用すると、
イライラすることはあっても、
状態が安定してきました。
ここからは服用回数を
1日2回→1日1回に減らしました。
投薬して、約1年程たつと
服用しなくても状態が安定したので、
治療をおえました。
大柴胡湯について
大柴胡湯は神経性の症状に加えて、
胃の鬱塞があるときに用いる処方です。
神経のたかぶりを抑えるのですが、
その本質は胃腸の緊張緩和にあります。
胃腸が丈夫ゆえに、多食してしまい、
胃気が降りない。
このため、便がくだらず便秘になり、
それが過ぎると逆流して嘔吐となります。
大柴胡湯には
枳実(キジツ)+芍薬(シャクヤク)
の組み合わせである枳実芍薬散は
筋の緊張をゆるめることで、
胃腸をリラックスさせる。
柴胡(サイコ)+黄芩(オウゴン)
も胃や脇周囲の鬱塞を解いて、
血流をよくする。
半夏(ハンゲ)+生姜(ショウキョウ)
が胃の逆流を押しとどめる
大黄(ダイオウ)は胃腸の積滞を押し流す。
このように、
大柴胡湯に含まれる生薬は
ほぼほぼ胃腸に働き、
胃腸の動きをととのえることで、
血流を改善して、
精神症状を緩和させることができます。
ただ、胃腸の塞がりが軽度の場合や
胃腸が弱い場合には
効果がないばかりか、
反って胃に負担がかかることが
ありますので、
注意が必要です。
まとめ
精神の乱れを漢方薬で整えることは可能です。
ただ、漢方薬ですべての症状を
緩和できるかといえば、
それは甚だ疑問です。
この患者様は
幸いに趣味が複数あったので、
趣味に没頭する時間を
見つけてもらいました。
どうしてもストレスがかかると、
そのことばかりに目がいってしまい、
視野が狭くなってしまいます。
趣味に没頭することで、
視野が広がり、
ストレスが緩和されたのでしょう。
漢方薬と日常生活の改善を
どれだけ行えるかが大切です。
毎日の行動が習慣になります。
日々少しずつ良い習慣にかえていきましょう。
(自分に対する戒めでもあります)
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