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症例紹介

症例92 不妊症(1人目、2人目)に漢方薬を用いた症例

相談内容:一人目不妊

相談者:30代前半 女性
相談内容:妊娠しやすいように身体の中から体質改善したい

4年ほど前から妊活を始めて、現在は体外受精を2回したところです。

体外受精をしても着床もしないので、漢方薬の力を借りようと思い来局しました。

妊活を始めた4年前にチョコレート嚢胞が見つかりましたが、生理痛はありません。

しかし、腸との癒着があり排便時に痛みが生じることがあります。

普段から軟便傾向で、大便は1日3回くらいあります。

産婦人科でホルモン療法を始めてからは、基礎体温がバラバラになってしまい安定しません。

体は冷えやすく、お腹を触るとひどく冷たく感じます。

月経周期は問題ないのですが、経血量がここのところ随分と減って、3日くらいで終わってしまいます。

旦那の精子には特に問題はないといわれています。

処方選択

見た目は特に虚している感じでも実している感じでもありません。

不妊症に限らずどのような病気や症状でもお身体全体の状態を確認しますが、不妊症では妊娠や出産ともっとも関わりが大きい「子宮」や「卵巣」の状態を優先して確認します。

気になるポイントとしては「チョコレート嚢胞」と「月経状態」です。

チョコレート嚢胞は、本来子宮の内側にできるはずの内膜が卵巣内で発生してしまう病気のことです。

東洋医学では、チョコレート嚢胞を一般的に「瘀血(オケツ)」や「痰飲(タンイン)」のような血流障害や水分代謝障害の病態として捉えることが多いです。

私も初めは瘀血や痰飲の病態をうたがいましたが、月経状態では月経痛はなく、経血に塊もなく、出血の色も問題はなかったこと、また全身所見から瘀血や痰飲を示唆するものが見当たらなかったので、瘀血・痰飲の病態をいったん脇に置くことにしました。

そこでもう一度、月経状態を確認してみたところ経血量が減少していることが気になります。

また、身体の冷えが強いこと(特にお腹周り、子宮まわりの冷え)も体質的な問題があるといえます。

経血量の減少は物質的な「陰」の減少を現しており、身体の冷えというのは機能的な「陽」の減少を現しています。

つまり、この患者さんは陰陽がともに衰えている「陰陽両虚」の状態にあります。

舌の状態も確認してみると、陰陽両虚を裏付ける正気が乏しい色合いとしまりのない舌形を呈していました。

そこで、陰陽を補いながら妊娠をサポートする漢方薬をお出ししました。

2週間ほど服用すると、お腹が温まり、肩こりも軽減してきて、大便も形のある便になりました。

2ヶ月ほど服用すると、低体温ながらも基礎体温も少しずつ安定してきました。

3ヶ月ほど服用したところで無事に胎嚢を確認でき、本人の希望により服用を終えました。

二人目不妊のご相談

その後、出産のご連絡をいただき一安心しました。

それから月日が流れ、初めて来局されてから3年後(出産から2年後)に再度、来局されました。

今度は、二人目の出産を希望しており、もう一度漢方薬の力を借りたいとのことでした。

出産をきっかけとして体質が変わったり、産後の忙しさや睡眠不足などで、体調が悪くなっている場合もありますが、この方の場合は最初に来局された頃とほぼ同じようなお身体の状態でした。

そのために、最初に用いていた漢方薬と同じものをお渡ししました。

今回は身体を立て直すのに時間がかかり、漢方薬を服用を開始して半年後に採卵した1個の卵を使って、無事に妊娠に至りました。

漢方薬を服用して、8ヶ月後の妊娠となりました。

その後、つわりがひどすぎて漢方薬が飲めなくなってしまい、服用を終えました。

*二人目の出産のご連絡も頂き、嬉しい限りです。

まとめ

今回は二人のお子さんの出産のサポートに携われた、ありがたい症例をご紹介しました。

不妊症のご相談では、妊娠に至るまではどうしても時間がかかることが多いです。

それでも、患者さんが根気強く漢方薬を信じて服用していただいたことで、よい結果が得られました。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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