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治療について

夏の疲れ / 夏バテの漢方の考え方

9月に入り、本来なら秋の装いを帯びてもおかしくない季節であるのに、依然として暑い日が続いています。
今年は梅雨の季節から夏のような気温になったので、かれこれ3ヶ月くらいも高温環境にさらされているといえます。

そんな中、最近になり患者様から立て続けに、「最近、疲れがとれない」「身体が思うように動かない」「ぐったりしている」「胃がもたれる」「下痢になってしまう」というお声を頂きました。

かくいう私も少しダレ気味ではあったので、夏の疲れや下痢の理由について漢方的に考察してみることにしました。

漢方では夏の季節をどう考えるか

漢方は身体に生じた症状だけをみるのではなく、その症状を引き起こす自然界の影響も考慮に入れて全体像を探っていきます。

夏の季節で生じる体調不良や病気は、漢方では「温病(ウンビョウ)」という分野に詳しくまとめられています。

温病では、夏の季節は「暑さ」と「湿気」がからみあっており、「暑湿(ショシツ)」という病態を生じやすいとされています。

暑湿
「暑」:熱の極まった状態で、まさに真夏の太陽の光がサンサンと降り注ぐ状態
「湿」:湿邪のことで、高湿度な環境下を現しています

夏に疲れてしまう理由とは

夏バテの一番の特徴は「倦怠感」が生じることです。

夏バテは「暑湿」の影響で生じているといえますが、それ以外にも倦怠感は冷房により身体が冷えたことでも生じると考えられます。

①暑さで多量の汗を消費

暑湿が正常な範囲内であれば、身体には問題が生じません。
しかし、近年のように異常な暑さが続くと身体にも大きな負担が生じてしまいます。

暑によって身体に熱がこもれば、生理現象として体温を一定に保つために「汗」によって熱を発散させます。
暑さが過剰になることで汗を大量にかいてしまえば、体に必要な水分だけでなく、気(身体のエネルギー源)も一緒に失われてしまいます。

漢方では、体の疲労感は「気虚(キキョ)」という身体のエネルギー不足が原因と考えられます。
汗として身体の水分を多量に出してしまえば、陰(汗)陽(エネルギー)過度に放出してしまうことになり、身体は疲れてしまいます。
この場合、軽度であればしっかりと食事や水分を補給して、ゆっくり休めば速やかに改善することができます。

しかし、長期に渡って暑熱にやられてしまう場合は、漢方薬で陰陽を補ってあげる必要があります。
代表的な漢方薬として、生脈散(ショウミャクサン)などがあります。
生脈散について詳しくはこちらをご覧ください。

②湿気にやられてしまう場合

①のように夏の暑さで純粋な「気虚」になってしまう人が多いのかというと、少し疑問です。
現代では、身体を酷使するほど1日中激しく動いている人は少なく、ましてや炎天下の中を1日中外にいる方は少ないかと思います。

冒頭でお話ししたように、ここ最近疲れを自覚したり、胃腸の不調が出始めている方は湿気による影響である「湿邪(シツジャ)」が原因だと考えられます。

今年の夏は確かに暑かったのですが、雨がほとんど降りませんでした。
気温は高いですが雨が少なかった分、暑湿で考え場合は身体への影響度は「暑>湿」である気がします。

しかし、ここ最近は台風が来たり、雨になる機会が増えました。
気温は一時より少し下がりましたが、その分湿度が上がっているように感じます。
そのため、ここ最近は外部要因の影響度合いが「暑>湿から暑<湿」に変わったことで、身体がついていかずに体調不良になったと考えられます。

湿邪はベタつきが強いため、身体にまとわりつき、簡単には解除できずに停滞します。
なおかつ、湿邪は水であるので重だるさを伴います。

また、暑いので水分摂取(特に冷飲食)も多くなりがちで、それにより胃腸に湿邪が停滞することで、胃腸の働きが悪くなり、胃もたれや下痢が生じてしまいます。

この場合には身体の中の余分な湿邪を追い出すような治療を行います。
代表的な漢方薬には平胃散(ヘイイサン)や藿香正気散(カッコウショウキサン)などを用います。

藿香正気散についてはこちらで詳しく解説しています。

③冷房で体が冷えてしまう場合

ここのところ夏場には冷房が必須になってきていて、今まで冷房が苦手であった人でも冷房なしではどうにもならないくらいの暑さになっています。
暑さは冷房で緩和することができるのですが、職場や家庭でも個々人の最適温度が異なるため、室内を適温に保つのは難しいでしょう。

そのため、暑邪の影響を緩和させることができる反面、冷房で身体を冷やしすぎることで、疲れや下痢が生じているケースも少なくありません。 シャワーや湯船で温かさを感じて心地良くなるのであれば、身体が冷えているということです。

夏場でも冷房で冷えが強く倦怠感や下痢が生じる場合には、身体を温める漢方薬を用います。

代表的な漢方薬には五積散(ゴシャクサン)や人参湯(ニンジントウ)などがあります。

【まとめ】気温差や湿度差に気をつけましょう

夏バテをしやすい方は、体質的な要因もありますが、生活環境が原因の場合もあります。

ここ最近は雨による湿度の上昇と気温の上下により、体調を崩しているケースが多いと感じました。
ですが、要因は必ずしも一つではなく複数の要因が絡んでいるケースもあります。
夏は暑さだけでなく、湿度や冷えも身体に負担をかける要因となるので、ご自身が何に影響を受けやすいかを知っておくと対策がしやすいでしょう。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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