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生薬解説

シソ / 紫蘇葉の効能効果について

シソは食品として使われる一方で、漢方薬の原料としても使われています。
シソは胃腸の機能を整えたり、メンタル面にも有効で、さらにはむくみの改善にも効果的ですので、夏バテにもってこいの食材です。
今回はこのシソについての作用や効果についてお話をしたいと思います。

食品としてのシソ

シソにはさまざまな品種があり、含まれる色素によって青ジソと赤ジソに分けられます。
青じそは大葉のことで、生で刺身と一緒に食べたり、天ぷらとしても使われています。
また、青ジソはドレッシングとしても使われていますが、この場合は大葉ドレッシングとは言わずになぜか青じそドレッシングと言います。

一方の赤じそはアクが強いので、そのまま食べるには向いていません。
あくを抜いてから梅干しなどの着色や漬物として用いたり、煮出してしそジュースとして使われています。
梅干しの色が赤いのは、シソの葉に含まれるアントシアン色素は梅のクエン酸などで酸化されると赤紅色に変化するためです。

漢方生薬としてのシソ

シソを薬(漢方薬の原料)として用いる場合は、「葉・種子・茎」の各部分を状況に合わせて使い分けて用います。
シソを漢方薬の原料として用いる場合は、生薬といいます。
生薬とは自然界の植物、動物及び虫、鉱物の薬物として利用可能なもの」です。

生薬については「漢方薬について」をご参考ください。

生薬として葉を用いる場合は、紫蘇葉(シソヨウ)や蘇葉(ソヨウ)という名で呼ばれます。
種子を用いる場合は紫蘇子(シソシ)、茎を用いる場合は、蘇梗(ソコウ)と言います。

今回はシソの葉について解説したいので、紫蘇子と蘇梗については簡単にご紹介します。

<紫蘇子と蘇梗の効能>
紫蘇子は咳止めや喘息の改善を目的として漢方薬に配合されます。
蘇梗は気の巡りを改善して胸の詰まりやお腹の張りを改善するのに用います。

紫蘇葉は赤ジソを用います。
生薬としての紫蘇葉の効能効果は主に4つあります。

1.発汗解表作用(ハッカンゲヒョウサヨウ)

発汗解表作用とは、体表面に侵入した寒邪(冷たい空気)を、体を温めることで発散させる治療法のことです。
たとえば、風邪の引き始めでゾクゾクとうなじから背中にかけて寒気がするときに用います。
風邪の引き始めに用いる代表処方は葛根湯で、特に葛根湯の中の麻黄(マオウ)と桂枝(ケイシ)が強力に発汗解表をします。

ただ、紫蘇葉は麻黄や桂枝ほど強力な発汗作用はないので、一般的な風邪にはあまり用いられません。
ただし、体が弱い高齢者の方とか虚弱な方などは、麻黄や桂枝の発汗が強力すぎて、かえって身体に負担をかけてしまうことがあります。
また、冷えにさらされることが少ない夏場の風邪などは麻黄や軽視などで強力に寒邪を追い出す必要がありません。
そのような時は身体に負担をかけないように、紫蘇葉で軽く発汗させる方が適切な場合があります。

次に説明しますが、紫蘇葉には胃腸の働きを改善する作用があるため、胃腸型の風邪で下痢や嘔吐、胃腸の不快感がある時にも用います。
発汗解表作用として用いる場合の代表的な漢方薬は「参蘇飲(ジンソイン)・香蘇散(コウソサン)・藿香正気散(カッコウショウキサン)」などが該当します。

藿香正気散については「梅雨〜夏の漢方薬(1) 藿香正気散」をご覧ください。

 

2.気の巡りを改善する

先ほどの発散作用と同じように、紫蘇葉には気の巡りを改善する作用があります。
「気」とはエネルギーのことで、全身を巡り臓器や血液などにエネルギーを振り分けて、本来の機能を発揮できるようにしてくれています。

気の巡りは自律神経と関連しており、ストレスや過食などさまざまな要因で悪くなってしまいがちです。
紫蘇葉は気の巡りを改善する作用があり、特に胃腸に作用して、胃腸の働きを円滑にしてくれます。
これにより、悪心嘔吐や胸のつかえ、胃もたれなどの症状を改善してくれます。

また、気の巡りは精神的な安定にも関わっており、紫蘇葉は抗うつ作用も有していることから神経症や抑うつなどの改善も期待できます。
気の巡りの改善に用いる代表的な漢方薬には「香蘇散・半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)」があります。

半夏工房苦闘については、コラム「精神不安と吐きに半夏厚朴湯」をご覧ください。

3.解毒作用

紫蘇葉には「体内に蓄積した老廃物」や「病邪」を発散して取り除く作用があります。
病邪(寒邪)を発散して取り除く作用は1.発汗解表作用のことです。

体内に蓄積した老廃物とは具体的には魚介類やカニなどの食中毒に該当して、この食中毒による下痢・腹痛・嘔吐、アレルギー性の蕁麻疹などに用いられます。

ですので、刺身に大葉(青じそ)がついてくるのは味の組み合わせが良いというのもありますが、シソの魚毒を解毒する作用も期待されて組み合わせられていると言えます。
昔の人はこれを経験的にわかっていたのですから、すごいですよね。

また、シソの葉にはロスマリン酸という成分が含まれていて、これがアレルギー反応や炎症を抑えて、皮膚の痒みや鼻炎や花粉症による鼻詰まりやくしゃみ、鼻水などの改善にも役立ちます。

解毒作用に用いる場合の体表的な漢方薬は「香蘇散」です。

4.安胎作用(アンタイサヨウ)

安胎作用とは、出産するまでの妊娠を持続し途中で流産や早産をはじめ、母子に異常が起きないようにする作用のことです。
紫蘇葉は胃腸にも作用するので、流産や早産だでなくつわりなどの妊娠中の嘔吐にも有効です。
シソの香りがすっと吐き気を鎮めてくれます。

また、妊娠中毒症や胎動不安などにも効果的です。

妊娠中は西洋薬はあまり使えない上に、漢方薬でも慎重に使わなければならないものがあります。
そのため、紫蘇葉は安胎作用があるので風邪を引いた時の風邪薬としても使いやすい生薬です。

代表的な漢方薬は「紫蘇和気飲(シソワキイン)・半夏厚朴湯・香蘇散」などがあります。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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