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症例紹介

症例21 入眠障害と倦怠感

漢方薬は西洋薬の睡眠薬のように
即効性があるわけではありません。

「不眠症」というひとくくりで、
一律に同じ漢方薬を
服用すればいいわけではないのです。

睡眠の治療だからといって、
寝付きをよくするような薬を使うのではなく、
身体の不調和を整えることで、
結果として不眠の改善が可能となります。
そのため、例えば不眠治療として、
胃腸薬を用いることさえあります。

今回の症例では、
漢方薬を服用することで、
徐々に身体が整っていき、
不眠症が緩和されていったものを
ご紹介します。

症例 20代 女性

もともと寝付きが良い方では
ありません。
ここ2週間くらいはさらに悪化して、
0~2時に寝付こうとしますが、
寝付くのは朝6時くらいです。
寝付いても1時間おきに
目が覚めてしまい、
9時には起きて、仕事に向かう
という生活を繰り返してます。

朝はなまりの様に身体が重く、
這いつくばって仕事に向かうなうな
状況です。

そのせいか休日に
どっと疲れが出て
14時間くらい眠ってしまいます。

身体が疲れるのはもちろん、
精神的にも不安定になっているので、
なんとかしたいと思い、
来局しました。

このような相談です。

余程のショートスリーパーでもない限り、
毎日2~3時間くらいの睡眠では
とても身体がもつ状況ではありません。

さらに詳しく状態を確認して、
以下のことがわかりました。

仕事中は気を張っているためか、
眠くはない。
食欲もほとんどなく、
昼食をとると眠くなってしまうので、
1日1食(夜のみ)にしているようだ。

過去にパニック障害やうつ病を
わずらったこともあり、
再発しないかと不安を抱えている。

生理も不安定で、
生理周期もバラツキが大きく、
PMS(メンタル不安定、頭痛)などもあり。

天候による頭痛や
のどに痰がまとわりついている感じもある。

処方の選定

不眠症が主訴であるが、
不眠以外にも頭痛や生理不順など、
様々な病態を抱えています。
ですので、治療には時間がかかるだろうと
(数ヶ月~1年くらい)考えましたが、
ただ、今回は睡眠が悪化したのが
2週間ほど前と割合最近であるので、
ひょっとしたら早く改善するかも・・・
というなんとも難しい状況でした。

その中でもまず最初に気にしたのは、
食欲の低下です。

食欲が落ちるということは、
食べたものを栄養にして
気力を増したり、
食べることが、
内蔵機能を活発にして、
生理活動のスイッチにすることが
できないということ。
つまり、全身へ影響がすぐに出てしまいます。

ですので、最初に胃腸機能の改善を目標にして、
なおかつ精神症状を緩和させるという2本柱で
治療することにしました。

胃腸と精神の安定の両方に効果がある
加味帰脾湯(かみきひとう)を選択しました。

服用後の経過

加味帰脾湯 7日分
AM6時まで寝付けないのが、
AM2~3時に寝付けるようになる。良好

その後3週間ほど服用するも、
入眠時間は2~4時ほどで、
以前よりは良いが、
まだ数時間寝付けないことが多々ある。
食欲は以前の状態に戻った。
また、生理前の情緒不安定が変わらず強く、
生理前に睡眠の質が不安定になるようである。
加えて、漢方薬の味がかなりまずいとのこと。

ここで、再度処方を検討することにした。
処方変更の理由としては

・入眠の改善が見られなくなってきた
・食欲も以前のように戻ってきた
・漢方薬の味がまずい

とくに最後の味の問題は、
経験上変えた方が良い結果になることが多い。
(身体が求めている味はおいしく感じることが多い)

そこで、
ホルモンバランスの乱れ=疏泄失調として、
逍遙散(しょうようさん)に変更する。

逍遙散を服用して
4週間ほど、生理は遅れがち(40日)であるが、
生理前の情緒不安定は消失する。
睡眠は波はあるものの、入眠してから
数時間寝付けないということはなくなった。

その後も継続服用して、
(生理前の熱感やほてりが出るときは加味逍遙散)
4ヶ月ほどで、以前の8割ほどに
眠れるようになったので、治療を終えた。

まとめ

入眠障害や中途覚醒などの睡眠障害は
漢方薬の服用だけでなく、
特に若年層では生活習慣に乱れがないかを
必ず確認する必要があります。

今回は想像以上に早く治療を終えることが
できました。
(ここまですんなりいかないことも多々あります)

これだけ早く状態が安定したのも、
患者様が生活習慣の改善に
真摯に取り組んだからだと思われます。

詳細は書きませんでしたが、
今回の患者様は
・仕事でのストレス(人間関係)があった
・仕事で外出する以外は部屋にこもりっきりだった

このようなライフスタイルが、
自律神経を大きく乱して、
結果として不眠症に陥ったものと考えられました。

そこで、自律神経を取り戻すため、
運動習慣をつけてもらうことと、
時間があるときは自炊(普段はほぼコンビニ食)
を取り入れてもらいました。

もともと剣道部だったこともあり、
運動には抵抗はなく、
散歩や家で竹刀をふることを
続けてもらいました。

最近のコンビニ食は
かなり充実しているので、
栄養バランスは整えることもできますが、
自分で作る過程がマインドフルネスに
つながるので、自炊を実践してもらいました。

身体の不調が起きたときは
薬に頼るのも良いのですが、
まずは生活習慣のほつれがないか、
確認してみてはいかがでしょうか。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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