
漢方の診断方法~漢方の診断は人によって違ってくる!?~
病院での診断方法は、通常最初は問診や聴診をして病態を確認し、
必要とあらば血液検査や画像検査を行い、
病理を特定していきます。
一方の漢方を専門とするクリニックや漢方薬局などでは
どのように患者さんの病態を診るのかご存知でしょうか。
今回は西洋医学とは異なる診察方法を行う
漢方の診断方法についてご説明します。
西洋医学の診断との最大の違いは、
漢方の診察には基本的に検査機器は登場しない事です。
*ただし、現在では検査機器を応用した診察方法をする方もいらっしゃいます。
なぜかというと、漢方は人を診る医療で、
検査数値だけではその人の病態を特定することができないからです。
例えば二人の患者がいて
共に高血圧で数値は160/90だとします。
一人は体格ががっちりしていて、症状は何もなし。
もう一人は体が虚弱で、
血圧が上がるとのぼせたり、動悸がしたり、めまいがします。
この時、西洋医学治療ではどちらにも降圧剤を投与します。
しかし、漢方では血圧の数値ではなく、
その人の「体質」
つまり、この場合「体の強さ+症状の現れ方」に着目します。
なので、漢方治療では症状が出ていない方では異常と見なしません。
*漢方の診断として
一方のめまいや動悸などの症状が出いる方は
漢方の観点からみても異常となるので、治療を施します。
そうすると、漢方では検査数値は意味をなさなくなります。
これは極端な例ですが、
検査数値はあくまでも参考としてみることにして、
大切なのは個々人の状態に着目することです。
では、検査数値を取らない漢方の診断とは
どんなものなのでしょうか。
漢方には「問診・望診・聞診・切診」の
4つの方法で診察をします。
これからこれらの4つの診断方法についてご説明します。
①問診
もはや説明不要かと思われますが、
一番大事なのが問診になります。
患者様との会話のやり取りで情報を収集します。
ここで、どんな情報を入手するのか、
どういう事に重点を置いて話を聞き出すかが
とても大事になってきます。
一概にこれだとは言えないのですが、
もっとも大事なのは、
「主訴」に基づく情報をいかに正確に集められるかです。
*主訴:患者様がもっとも辛い(治したい症状・訴え)
ただ闇雲に情報を集めても、
どれが大事なのか優先順位をつけることができず、
反って診断を鈍らせてしまう事になりかねません。
②望診
望診とは視覚情報から診断につなげる事です。
特に皮膚病では有効な手段になります。
皮膚病では問診だでは情報が不足し、
「百聞は一見に如かず」ではないですが、
患部の赤み、膨らみ、乾燥や湿潤などの情報が
非常に参考になります。
また、舌診といって、
舌の色みや形、苔の状態も参考になります。
③聞診
聞診(ぶんしん)とは二つの意味合いがあります。
一つは読んで字のごとく、音を聞いて判断する事です。
例えば、咳の音です。
その咳の音が大きいのか小さいのか、
痰が絡んでいるのか、乾いた咳なのか。
もう一つは臭いです。
これも聞診に入ります。
例えば、口臭や汗の匂いでお悩みの方の場合、
聞診が非常に有効になります。
このように聴覚と嗅覚の両方を使うのが
聞診になります。
④切診
切診とは触診の事です。
体に触れて、その人の状態を探ります。
むくみや冷え症などは実際どれだけのものなのかを
知るのに有効です。
さらに脈診や腹診といって、
脈やお腹に特徴的な状態がないかを
触って判断します。
以上のように漢方では
五感を使って診断するのが基本です。
もちろん西洋医学でもこれらの工程がありますが、
検査結果に重点が置かれることが多いでしょう。
ただし、漢方の場合は五感を使っての診断になるので、
客観性に欠ける部分があります。
どういうことかと言うと、
同じ患者様を診る場合でも、
ある医療者は脈が弱いと判断し、
別の人では脈に異常はないと判断してしまうことがあります。
西洋医学のように客観的に見れる数値として出ないので、
主観が混じりやすいのです。
つまり、人によって腕の差が明確に出てしまいます。
西洋医学では誰が見ても血圧の数値が200ならば、
高血圧だと判断できます。
そのため、病院を変えても大きな差は出にくいです。
しかし、漢方の場合は腕の良し悪しが大きく左右するので、
見立てが異なる可能性があります。
このように漢方医学も西洋医学も
同じ医学ですが、
その診断基準や方法は異なっているので、
分けて考えないといけません。