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雑記

他人との比較癖を止める

私の漢方薬局では、カウンセリングに時間をかけて丁寧にお身体の状態を分析していくことに重きを置いています。当薬局には精神疾患を抱えた方、また精神疾患を抱えていない方でもカウンセリングする過程で人間関係でのお悩みを打ち明けられることがあります。

当然ですが、人間関係の悩みそのものは漢方薬で改善することはできません。
その悩みが強くなればなるほど、心身への影響も大きなってしまい、漢方薬の効果も発揮しづらくなります。
ですので、漢方薬以外でも心身の不調を悪化させないための工夫として、人間関係の悩みとりわけ「他人との比較癖」について私見を交えてお伝えしたいと思います。

他人との比較は悪いことではない

他人との比較を考えるにあたって、大前提となるのが「他人との比較をまったくしない人はいない」ということです。
人は生きている以上は必ず誰かと関わって生きているので、意識しているか意識していないかは別にして、誰しもが他人との比較を行っています。

他人と比較することで相対的に自分がどんな人間なのか、何が得意で何が不得意なのかなどがわかります。
勉強やスポーツの得手、不得手も他人と比較することで初めてわかるわけです。

ですので、他人との比較は決して悪いわけではありません。

また、他人と比べることで、「自分はまだまだできていないことがあるからもっと頑張ろう」とか、「あの人みたいになりたいからもっと努力しよう」というふうに刺激や活力になることで、自分自身を向上させることができます。

ですが、問題となるのは「他人との比較が行き過ぎてしまうこと」です。
他人との比較をしすぎてしまうと、「自分はなんてダメなんだ」、「みんな幸せなのに自分だけが不幸だ」といったように自分を責めたり、卑下してしまいます。

反対に自分はできることなのに周りができていなかったりすると、「みんなはなんてバカなんだ」とか、「どうしてこんなこともできないんだ」というふうに怒りの感情に支配されることもありえます。

このように「他人との比較」はグラデーションになっていて、「今自分が他人との比較をどのように捉えているか」によってプラスにもマイナスにも働いてしまいます。

このマイナス感情を少しでも減らすことが精神面での安定に大切です。

他人との比較をしてしまう理由は?

では、どうして人は他人と比べてしまうのでしょうか。
他人との比較をする理由としては、生まれ持った特性や環境要因によるものは当然あるかと思います。

ですが、最大の理由は「自分のことを理解(自己理解)していないから」だと私は考えています。

自分のやりたいことやできること、得意なことや苦手なことなどがわかっていて、自分と他人は違うと認識できていれば、必要以上に他人と比べて一喜一憂しません。

わかりやすい例として、私が大谷翔平さんのように野球選手で活躍したいとは思わないですし、それで「なんで自分は野球が下手なんだ、自分はもうダメだ」とは思わないです。

それは漢方薬局をしている自分と野球選手の大谷翔平さんとはあまりにもかけ離れていて、全然特性が違うことを認識できているからです。

反対に「自分でもできそう、やればできるかも」と思ってしまっている対象となると、本当に自己理解ができていないと、比較によって優劣をつけてしまいやすくなります。

かくいう私も自己理解の不十分で、他人と比較してしまい感情を乱してしまうことがあります。
一方、私の妻は他人と比較をして落ち込んでいる気配を見せたことがないんですね。


不思議に思って、妻に
「なんで他人のことをあまり気にしないでいられるの」
と聞いてみたら、
「自分に期待しすぎなんだよ、なんでそんなに自分ができる人間だと思ってるの?」
と言われました。
さらに、「私は自分ができる人間だと思っていない。だから、他人を見てもすごいとは思うけど自分とは違う人間だと思うだけだよ」

かっこいいなと思いました。
自分に期待しすぎてるのも、結局は自分を必要以上に大きく見積もってしまっていて、等身大の自分を見誤っているからなんでしょう。

他人との比較を止めるには

今まで述べてきたように、他人との比較を止めるには「自分の事を理解する事」に尽きるわけです。

自分の特性とは違うものに関しては、手放して諦めることが大切です。

そうはいうものの、自分のことを理解するのはとても大変です。
即効性はないので、じっくりと自分と向き合って時間をかけて自己理解をしていく必要があります。

そこで、私自身が実践している他人との比較をし始めた時にすぐに効果を発揮できる方法をを2つお伝えします。

①徹底的に情報を遮断する

他人と自分を比較してしまいやすい時は、精神的にもあまり良い状態ではないんですね。
精神的に不安定だったりすると、ちょっとしたことでも過敏に反応しやすくなります。

そんな時にSNSなどで輝いている人やうまくいっている人を見ると、すぐに他人との比較センサーが働いて感情が揺らいでしまいます。

ですので、なるべく情報(Youtube、インスタ、ネットサーフィン、ニュースなど)をみないようにします。
そうすると、SNSに使う時間が減った分時間ができます。

②やるべき事をやる

これは自分のことを理解していないとできないこともありますが、自分のやるべきこともしくはやりたいことに意識を集中させて行動することです。

自分のやるべきことが明確になっていれば、それに向かって突き進めばいいので、他人と比較する暇がなくなります。

そうは言っても、やりたいことややるべきことがないという人もいるかもしれません。
ですが、どんな人でも日々の仕事や学業など「やりたくないけどやらなければいけないこと」など何かしらはあると思います。
たとえやりたくないことだとしても、やらなければいけないことであるのなら、それにもう少し時間や労力を使ってみてください。

なぜこれがいいかと言うと、とにかく暇になってしまうと不安なことを考えたり他人からの評価を気にしてしまいやすくなるからです。

そのためにもやるべきことを決める、淡々と取り組むことです。
そうすれば自ずと他人のことを考える隙がなくなります。

さらに、きちんと仕事や学業に取り組んでいけばそこで成果が出て自信がつくかもしれません。
そうやって自信や実力が着くと、自己理解が深まり他人との比較もしにくくなるのではと思います。

何よりも他人との比較で悩み苦しむ時間がもったいないです。
他人との比較に時間を使うのではなく、本来の自分のやるべき事に意識を向けて、その分の時間を有効活用しましょう。

他人との比較を漢方ではどう考えるか

漢方のコラムですので、最後に少しだけ漢方の話をして終わりたいと思います。
漢方では「心身一如(しんしんいちじょ・しんしんいちにょ)」という言葉があります。

心身というのは心と身体で、心身一如とは「心と身体は切り離すことができず、ひとつである」という考えです。

つまり、心身全体の調和をはかることが漢方治療の基本となります。
心が乱れれば、体にも影響が出ます。
逆も然りです。

漢方では、心の乱れは「陰」が「陽」を抑えられなくなった状態です。
つまり、「陽」が暴走した状態です。

漢方薬でいくら陰陽のバランスを整えても、他人との比較癖によって自分の心を乱し続けていては常に陽気が暴走して、改善が見込まれません。

そのためにも、患者様とともに悩み一緒に並走しながら問題をひもといていければと思っています。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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