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症例紹介

症例54 ニキビと鼻水と咳

高校生 男性
相談内容:顔と首のニキビと鼻水と咳

2週間ほど前に風邪をひきその後咳が続いていたので、当店で咳止めの漢方薬をお出ししたところ、2〜3日で改善しました。

年齢も若いし、これで体調も崩れることがないであろうと安心していました。

しかし、数日後に連絡があり、顔と首に大きなニキビができるようになり、さらにオレンジ色の濃い鼻水が出るようになったとのことです。
また、咳もぶり返してしまい、胸の奥から込み上げる激しい咳がつらいようです。

これらを改善して欲しいとのご相談でしたが、さて、、、どのように対処すべきか。

処方選択

まずは、症状が改善したからといって油断してしまったのが反省点です。
本人も体調がよくなったとのことで、遊びに出かけたり外食が増えたようです。

体力が回復し切っていない状態で、無理をしてしまったのでぶり返してしまったのでしょう。

そうは言っても、今はニキビと鼻水と咳をどうにかしなければなりません。

漢方では、複数の症状がある時は一括で治療できるのか、それとも症状に優先順位をつけて改善を目指していくかをまずは決めなければいけません。
複数の症状をいっぺんい改善しようとすると、かえってどれも中途半端になってしまうおそれがあるからです。

今回は鼻水と咳(これらは肺の管轄である)に焦点を絞って処方を組み立てて、症状が落ち着いてきたらニキビの改善に取り組むことにしました。

鼻水と咳を最初に治療するに至った理由は2点あります。
1)咳と鼻水は長引くほど深く入り込み、改善が困難になるので早めに手を打って起きたいがためです。
2)患者さん本人もさすがにまずいと思ったのか、食事と睡眠には気をつけるようになってきていたので、ニキビは生活習慣の改善でよくなるであろうと判断したからです。

そこで、鼻水と咳の状態を整理すると、
・鼻水はオレンジ色で濃く粘稠、量は多い
・咳は胸から込み上げる

これより、病態は肺の熱(炎症)が強く痰飲(水気)を多く含んでいると考えられます。

処方)麻杏甘石湯+小青竜湯(小青竜湯加杏仁石膏)

麻黄と甘草の量に注意して、漢方薬をお渡ししました。
3日分服用したところ、鼻水と咳は無事に治りました。
さらに、ニキビも目立たないくらいに改善しました。

考察・まとめ

今回は複数の症状に優先順位をつけて、順番に改善を目指していましたが、結果的に一度ですべての症状を改善へと導くことができました。

これは、患者さん本人が生活習慣を改めてくれたおかげがあるのはもちろんのことですが、漢方薬もある程度ニキビの改善に寄与したのではないかと考えられます。

咳や鼻水を改善する漢方薬は肺に作用するのですが、漢方では、肺は皮膚とつながっているので、肺の状態がよくなると皮膚の状態もよくなるとされています。
肺の管轄である咳や鼻水が改善されると、肺の機能も改善して、結果的に皮膚の状態も安定したのだと考えられます。

とはいえ、最初の段階でもう少し注意しておけばここまで症状が発展することもなかったのかもしれません。
油断は禁物です。。。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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