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症例紹介

症例51 月経前症候群(PMS)に柴胡桂枝湯

20代半ば 女性
相談内容:月経前の不調(のぼせ、イライラ、頭痛、胃痛、不眠、吹き出物)

社会人になってから、月経前の不調が顕著に現れるようになってきた。
だいたい、月経の7日ほど前からどの症状も現れるようになり、つらい。
特に不眠がつらく、寝付くのに1時間くらいかかり、寝起きも1時間早く目覚めてしまう。
ひどい時は、朝まで寝付けず起きていることもある。

胃痛はぎゅっと握られる感じで、月経前以外にも、ストレスのかかる場面になると発症しやすい。
今までは、市販の太田漢方胃腸薬を服用することで、胃痛症状を緩和できていたとのこと。

吹き出物はおでこにできやすい。
お風呂上がりにはのぼせてしまい、体が熱くなりなかなか熱がひかない。

<全身症状>
・食欲はあるが、食は細く食べすぎると胃を痛めやすい
・ほっそりとしており、ストレスに弱い
・手掌や足底に汗をかきやすい
・ストレスがかかると便秘になりやすい
・偏頭痛は左側頭部が痛み、生理前に生じやすい

<月経状態>
・月経周期や血量は正常
・社会人になってから、月経痛が生じるようになる

処方選択

今回は多彩なPMS症状が現れている症例です。
症状が複数にまたがって出ている場合、一括で対処できる状況なのか、もしくは複数のアプローチによって症状を緩和できるかを見極めた上で処方を選定しなければいけません。

今回のケースは、一見症状に関連性がなく複数のアプローチが必要なように思えます。
ですが、症状や体質を弁別すると大きく3つの特徴に分類することができます。

①熱症状

月経前の「のぼせ・イライラ・頭痛・不眠・吹き出物」などは大きな括りでは熱症状によるものと推察できます。
月経前はホルモンバランスの影響で、熱症状が出やすいです。
加えて、この方は後ほど説明しますが、身体的に虚の特徴があるため、虚が極まると熱症状に転じやすくなります。

②気滞(ストレス)症状

普段からストレスで体調を壊しがちで、そのような方は月経前にも不調をきたしやすいです。
したがって、ストレスへの対応も並行して行わないといけません。

③身体的な虚証

この方の体質として胃腸が弱く華奢な体型で、肌肉が乏しいという印象があります。
そのため、PMSの引き金となっている体質への配慮(体のバランスを整えて、ストレス耐性を減らす)も行う必要があります。

以上3点を総合すると、PMSがなぜ生じているのかを東洋医学の視点で捉えることができます。

「体質的な体の弱りにより、ストレスへの影響を受けやすく、またホルモンバランスを乱す。これにより、鬱々とした状態となり、胃に向かえば胃痛となり、頭部に向かい気がうっ滞することで熱を生じ頭痛・のぼせ・不眠へと発展していく」

と推論しました。

このような状態に用いる処方が柴胡桂枝湯です。

柴胡桂枝湯を1ヶ月ほど服用したところで月経がきましたが、胃痛・頭痛・入眠不良・吹き出物はほぼなくなりました。
ただ、早朝覚醒とのぼせはまだ改善が見られないので、引き続き処方を調整して様子を見ています。

まとめ

今回の症例のように、複数の症状があると症状に合わせて処方の数が増えてしまいがちですが、一つずつ病態を確認することで、少ない処方で複数の症状を改善に導くこともできます。
それでも症状が改善しない場合は、他の処方に変更したり複数の処方を併用することになります。
今回も早朝覚醒とのぼせ症状に手こずったので、別の処方を併用することである程度改善することができました。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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