この季節では、一歩外に出るだけで蒸し暑く汗が吹き出してきます。
汗の役割は、体温を調節したり皮膚を保湿することにあります。
ですので、暑い日に汗が出てくるのは自然な生理現象です。
しかし、日常生活に支障をきたすほど大量に汗が出てしまう場合を「多汗症」といいます。
その中でも特に、手のひらや足の裏に多く発汗が認められる状態を「掌蹠多汗症」と呼んでいます。
よく緊張した場面では「手に汗握る」という言葉があるように、掌蹠多汗症は自律神経との関わりが強く、緊張やストレスのかかる場面などで自律神経が乱れると汗が異常に出てきてしまうことになります。
自律神経には交感神経と副交感神経があり、汗は交感神経の活動によって調節されています。
交感神経は体を戦闘状態にもっていくことで活動的にして発汗を促進します。
一方の副交感神経は体をリラックスさせ、休息や回復を促す作用があります。
ちょうど車で言うところのアクセル(交感神経)とブレーキ(副交感神経)の役割に近しいです。
掌蹠多汗症はプレッシャーがかかる場面、たとえばテストや入学試験などの交感神経が優位になった時に発症しやすく、人によっては試験用紙が汗でベタベタになってしまったり、握手などで手に触れるのを恐れてしまうことにもなりかねません。
さらに、ストレスがかかる場面に出くわすとまた汗が出てしまうのではないかという不安が、さらに発汗を促してしまい悪循環に陥ってしまいがちです。
現在の掌蹠多汗症の薬剤治療では、塩化アルミニウムの外用療法、2023年には新薬剤である抗コリン剤の外用薬といった外用治療が中心です。
一方の漢方薬では、心のケア(精神的な安定)に焦点をあてて、内服を中心として精神的な安定とともに発汗を鎮める治療を行なっていきます。
漢方薬で考える掌蹠多汗症
掌蹠多汗症の原因の一つには「緊張・ストレス性」によるものが挙げられます。
緊張状態になると体がはガチガチにこわばり、筋肉も固まった状態なため、血流が悪くなります。 漢方では、血流が悪くなるのと同時に「気」の巡りも悪くなると考えます。
「気」はエネルギーのことで、全身を巡回して元気を与えたり、精神的な安定作用をもたらす作用があります。
この気の働きにより、内臓や筋肉などの全身が円滑に機能することで、私たちは日々活動ができます。
また、気はエネルギーでもあるため、体を温める作用も持ち合わせています。
そのため、ストレスや緊張によって気の巡りが悪くなり停滞してしまうと、停滞した部位に熱をもってしまいます。
とりわけ手足末端は血管が細く、血流が悪くなりやすいように、気の巡りも悪くなり停滞しやすくなります。
このように掌蹠多汗症では、ストレスによって手足末端に気が停滞することで、熱がこもり発汗が生じてしまいます。
漢方薬治療では、手足末端に停滞した気を元の通りに流してあげることで、掌蹠多汗症を改善へと導くことを目指します。
漢方薬では、気の巡りを改善させるための「柴胡剤」と呼ばれる処方を多数用意しています。
この柴胡剤を中心に個々の体質に合わせて、処方を組み立てていきます。
*掌蹠多汗症は別のアプローチもあるので「柴胡剤」に該当しないことも、当然ながらあります。
漢方薬は塗り薬ではなく飲み薬なので、西洋薬との併用も可能です。
もし、手汗や足汗にお悩みの方はご漢方薬も選択肢の一つとして活用できますので、ぜひ漢方薬専門の医療機関にも相談してみてください。
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