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症例紹介

症例15 腹圧性尿失禁の漢方治療

漢方は教科書通りにいかないものである。

以前に「漢方薬はデータや教科書に書かれていることがすべてではない

という記事も書きました。

いくら、理論的にはこうだから、

この漢方薬が有効であるといっても、

効果が出ないこともあるし、

反対に理論とは違うけど、

効いちゃったということもしばしば経験します。

単純に自分自身の患者様の見立てが

誤っていただけということも

言えるかもしれませんが、、、

そんなことを実感した症例です。

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70代 女性

力む時、咳やくしゃみ、

仕事帰りに気を抜いて歩いている時に尿が漏れてしまう。

いわゆる「腹圧性尿失禁」です。

腹圧性尿失禁とは、尿が漏れないように

引き締めている筋肉(骨盤底筋)が緩んでしまい、

力が入った時に、尿道を引き締めることができずに、

尿が漏れ出てしまう病気です。

排尿トラブルはなかなか人には言いにくいですし、

病院に通って、知り合いに出会してしまうのも

嫌なものです。

普段から、骨盤底筋を鍛える引き締め運動を

ご自身でされているのですが、

なかなか改善せず、いよいよ手術になってしまっては

嫌だということで、

漢方薬でなんとかならないかという相談です。

こういった場合の治療セオリーとしては、

緩んでしまった、骨盤底筋を引き締めるために、

八味丸や補中益気湯がファーストチョイスに上がります。

事実、最初は私も八味丸をお渡ししました。

ところが、効果がありません。

教科書通り、セオリー通りにいかないケースです。

そこで、発想を変えて、

筋肉の収縮弛緩の異常であると考えて、

別の漢方薬に変更したところ、

徐々に効果が現れてきました。

(処方は内緒です★)

ただし、完全になくなるわけではありません。

最初を10とすると、3〜4まで抑えられるレベルです。

年齢依存的な筋肉の衰えや異常は、

完全に薬で元に戻りことは多くはありません。

頻度や強度をある程度抑える程度(5割程)を

一つの目標としています。

今後ひょっとしたら、

もっと軽減するかもしれませんが、

数ヶ月服用して、

今は状態が安定しています。

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というわけで、

セオリー通りに漢方治療がいかない場合は、

・新しい発想や考えを応用できるのかどうか、

・患者様のやり取りで見落としがないか

この辺りに注意を向けると、

効果が得られるのではと、

実感しました。

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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