TREATMENT

疾患別治療

冷え症(冷え性)

日頃の臨床で、女性の方に「冷え性ですか」と尋ねると、半分以上は冷え性だと答えるます。程度の差こそあれ、冷え性に悩んでいる方は多いと感じます。

冷え症は西洋医学では病名としては扱われておりません。そのため、体が冷えていることそのものは病気の範疇にはならず、治療の対象とはなりません。一方の漢方薬は「寒熱」という概念があり、冷えや反対にほてり(のぼせ)といった自覚症状も身体の調和の乱れとして、「病」として扱います。そのため、冷え性こそ漢方での治療が功を奏すと言えます。

冷え性の方が多い理由としていくつかあります。

1)冷え性という言葉の認知が高い
人は言葉によって、考えたり思考をすることができます。ということは、「冷え性」という言葉がなければ、誰も冷え性だと自覚することもなく、日本から冷え性で困る人はいなくなります。なんて屁理屈を・・・と感じる方もいるかもしれませんが、昔の中国の漢方書籍には「冷え性」という病名分類はありません。当時は冷えとなったら、死に直結するようなものであったり、住環境や食事も不十分なため、冷え性を超えてもっと程度が重いものだと想像できます。現代になって、食生活や衣類、住環境が改善されたことで、冷えの程度もだいぶ改善しすることで、病気とは言えないけど、日常生活に支障をきたすものとして、「冷え性」という概念ができたのだと考えられます。徐々に冷え性という言葉の認識が広まるにつれて、冷え性だと認知する人が増えたと言えます。そういう意味では冷え性という言葉はまだ歴史は浅く、古典の考えを発展して現代に応用し、考察する必要があるのです。

2)筋肉量の低下
身体の体温は大部分が筋肉が産生する熱によって作られます。また、筋肉中には血管が通っており、筋肉の力(筋ポンプ)によって血液を循環させます。筋肉量が少ないと熱を産生できないだけでなく、血流が悪くなり、手足末端にまで血を送り届けることができず、冷えてしまいます。私も含め、現代は座り仕事が多く、脚の筋肉を使うことが少なく、意識しないと脚の筋肉はどんどん衰えてしまいます。食事(タンパク質)と運動(ジョギング、スクワット等)を日常生活に取り入れることで、冷え性の根本原因である筋肉量の低下を防ぐことができます。

漢方治療

漢方治療を行う上で大切なことは、「冷えの病態を可視化すること」です。例えば、普段からクーラーがガンガンに効いた冷たい部屋に長時間いることで冷えが生じてい場合の冷えなのか、もともと体が強くなりすぐにお腹が冷えてしまいやすい体質なのか、むくみを伴う冷えなのか・・・このように冷え性といっても、様々なケースが想定されます。臨床家はこれらを弁別して、状況に合わせた適切な治療を施します。
以下に汎用される漢方処方を列挙します。
人参湯
お腹の冷えを根本原因とする場合に用います。冷たいものを食べ過ぎてお腹を壊したり、胃腸が弱く冷たいものを受け付けない人、体が冷えるとお腹に来やすい人には有効です。「人参・乾姜・朮・甘草」を含み、胃腸を温めることを主にした処方です。
五積散
外の冷えによって生じる身体の冷えに用います。クーラーが効いた部屋にいると冷えて体が痛んだり、下痢をしてしまう場合に有効です。「麻黄・桂枝・白芷・朮・陳皮・茯苓・半夏・厚朴・枳殻・桔梗・当帰・芍薬・川芎・乾姜・甘草・大棗」と多数の薬草を配合しており、長期間服用するというよりも、頓服的に用いることが多い。
当帰四逆湯・当帰四逆加呉茱萸生姜湯
これも五積散同様に外の冷えによって、体が冷えた場合に用いる。冷える場所は経絡(血管)であり、外から冷やされた血が全身を巡ることで冷える。手足末端の血管は細いので、特に冷えやすく、冷えた血がお腹や子宮に巡ることで下痢をしたり生理不順を起こしてしまう。別名「カイロ湯」とも言われ、服用することで冷えを追い払い体全体がジワっと温まってくる(処方「当帰・桂皮・芍薬・細辛・大棗・甘草・木通。冷えに伴い吐き気を催す場合は「呉茱萸・生姜」を加えた当帰四逆加呉茱萸生姜湯を用いる。
苓姜朮甘湯
寒湿に用いる処方「茯苓・朮・乾姜・甘草」であり、冷えと湿が入り交じった環境で生じる病態に有効である。体に水が溜まっており、水中や冷蔵庫など湿度があり冷えた環境で生じる。下半身の冷えとむくみといったように下部に集中して病態が生じるのが特徴である。
当帰芍薬散
むくみを生じる冷えに有効である。血行不良があり水が巡らずその影響でむくみが生じて冷えている状態である。毎月生理があり、血を消耗しやすい女性に多い処方である。
真武湯
代謝機能が低下した人の冷え性に用いる。体が弱っている人や老化などにより体を芯から温めることができない人で、そのせいで水分代謝もままならずむくみやめまいなどを併発している。
小建中湯・当帰建中湯
食べる量が少なかったり、食べる量にムラがあったり、食べても太れない体質の人など体が弱い人に用いる(処方「桂枝・芍薬・大棗・乾姜・甘草」)。生理不順など血にトラブルがある場合は当帰を加える。
桂枝茯苓丸
瘀血と呼ばれる血流障害がある冷え性に用いる。生理痛がひどかったり、唇や舌が紫がかったり、鮫肌だったりと特徴的な所見を呈するので、鑑別は難しくはない(処方「桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・赤芍」)

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