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症例紹介

症例22 長年の皮膚の痒みと疲労

アトピー、蕁麻疹などの皮膚疾患は
季節性で発症、増悪することもありますが、
季節を問わず、
症状が出ることも多々あります。

皮膚治療の場合は、
見た目で状態が確認できるので、
患者様と治療者での
食い違いが起こりにくく、
客観性が保たれやすいです。

ただし、皮膚の状態ばかり気にしすぎると、
患者様の体質を確認することを
おろそかにしてしまうことがあるので、
注意しなければいけません。

今回の症例では、
皮膚と体質の両方を考慮することで、
効果が速やかに出たものをご紹介します。

30代 男性 痒疹と疲労倦怠感

数年前から腕と背中に
痒みが生じるようになった。
季節に関係なく、毎日痒く、
蕁麻疹のように、赤みがフワッと出ては
すぐに消える。
赤みが出たり消えたりを繰り返して
一向におさまる気配がない。

痒みはお風呂に入ったときや
疲れているときに出やすい。

もともと疲れやすく、
集中力が続かないのも悩みの一つ。

食欲はあるが、
ちょっと食べ過ぎると
すぐに胃もたれしてしまう。

大便は緩く
1日に3~4回。

冷え症で手足が冷えやすく、
風邪も引きやすい。

疲れてしまうと頭痛が出る。

処方の選定

痒疹や蕁麻疹などを考えるとき、
標治(ひょうち)でいくのか、
本治(ほんち)でいくのか
見極める必要がある。

標治とは対症療法のような考えで、
まずは出ている症状をとってしまうことを
目標にする治療です。

本治は症状を考慮しつつも、
病気を引き起こしている根本的体質を
改善していく治療です。

痒疹や蕁麻疹の場合は、
一般的に標治でまず症状をとった後、
本治を行い、再発しない身体を
作っていきます。

ただ、標治を行って症状が緩和されると、
自然と体質も改善され、
本治を行わずとも、
治療を終えることも多々あります。

さて、今回の場合は
標治でいくのなら、体表の炎症をとること。
本治でいくのなら、胃腸の弱りや体力の弱さを
改善していくことになります。

標治を行った場合、
胃腸に負担がかかる可能性があり、
一方の本治を行った場合、
身体を温めることにより、
痒みや炎症が悪化する恐れがあります。
そのため、どちらで行うかが
今回の一番の悩みどころでした。

ここで治療の決め手となったのは、
胃腸の弱りです。
標治を行う場合、
「胃腸が標治薬に耐えうることが難しい」
のではないか。

胃腸が弱っている状態では、
消化吸収も落ちて、
標治薬では、反って胃の負担になり、
さらに十分に標治薬を吸収することが
できないと考え、
本治を行うことにしました。

もともとの体力の低下、胃気の低下、
これにより、虚労様の状態を呈しており、
それに伴い皮膚表面の状態も悪化したことで、
今回の痒疹が生じている。

そこで、『金匱要略・血痺虚労病』
「虚労裏急、諸不足、黄耆建中湯主之」
を参考に、虚労を治す黄耆建中湯を処方した。

ただ、黄耆建中湯は桂枝や乾姜など、
身体を温める生薬が含まれている。
そのため、皮膚の炎症を促す可能性があり、
服用後、痒みや赤みが悪化したら、
すぐに中止するよう伝えておきました。

服用後の経過

黄耆建中湯 7日分
痒みが大きく減少した。
ただ、入浴後はまだ痒みが出る

同様の処方にて、さらに1ヶ月処方し
痒みも疲れもとれたので、治療を終えた。

まとめ

だいたい虚証の場合、
3~6ヶ月くらいはかかるかなと
踏んでいたいのですが、
今回はびっくりするくらいスピーディーに
効果が出ました。

ここでの学びは
皮膚病といえども
本治も重要であるということ。
特に虚証の場合は。

皮膚病で皮膚の赤みがあるからとて、
清熱剤をがんがん使うというのは、
気をつけねばならない。

基本に帰って、
つぶさに患者様の体質を
見ていったことで、
早期に効果が現れたのであろう。

ただ、処方期間は1ヵ月ちょっとであるので、
再発の可能性もありうる。
その際も、今回の処方に引っ張られずに
フラットな状態で、患者様を診ていかねばならない。

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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