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症例25 めまいと不正出血

今までの症例は、うまくいったものだけをピックアップして紹介してきました。

ですが、すべての治療が満足いく結果になっているわけではありません。

(治せなかった方々、申し訳ありません)

残念ながら私の力では完全に治すことができず、悔いの残る結果となった症例も多々あります。

今回はあと一歩及ばなかった症例を紹介し、自分への戒めとしたいと思います。

症例 40代 女性 めまいと不正出血の治療

年明け早々、朝起きたら突然今までにない激しい回転性のめまいが起きた。

初めてのことで、一瞬何が起きたのか理解できない。

少しするとめまいは治ったが、不安は残ったまま。

回転性のめまいは一回きりで治ったものの、次の日からは、頭を動かすたびにグラっとしためまいが起こるようになる。

病院で検査をしてもらうも、幸い脳に異常はなく、良性発作性頭位めまい症と診断される。

薬やめまいに効果的なストレッチを行うも効果がないため、当店にこられた。

<他の所見>

めまいが強いと頭痛も生じる。

身長の割に体が細く、華奢である。

食量:少なめ、胃もたれしやすい

手足が火照りやすい

便通:異常なし

ふくらはぎのあざが消えにくい

(静脈瘤あり)

排卵期と生理後数日後に不正出血がダラダラと続いており、生理時の出血が多く、貧血気味で生理前〜生理が終わるまで、めまいが起きやすい。

産婦人科から当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)が処方されて、服用すればやや改善。

処方の選定

めまいを治療する際に注意すべきことは2点。

1)めまいの性質

2)どんな時にめまいが生じるのか

今回のケースでは、

1)めまいの性質

・初めは回転性のめまい

・その後はグラっとするようなフラつき

2)どんな時にめまいが生じるのか

・頭を傾けた時

・起床時

・ずっと同じ姿勢

・生理前後

平衡感覚は耳にある三半規管を満たしているリンパ液がコントロールしている。

漢方ではリンパ液を水の一種としてみなし、この水の異常が平衡感覚を狂わすと考える。

今回のケースではグラっとしためまい、回転性のめまいが起きたことから、リンパ液のバランスを整えることが治療につながると考えた。

したがって、まずは水分バランスを整える処方を用いた。

処方:沢瀉湯(タクシャトウ)

服用後の経過

沢瀉湯は沢瀉(タクシャ)と朮(ジュツ)の、わずか2種類の生薬から構成された処方であり、どちらも水分代謝を改善する生薬だ。

たった2種類の生薬しか含んでいないが、その分切れ味は鋭い。

*葛根湯は7種類の生薬を含んでいます。

服用して1週間で5〜7割ほど症状が改善。

さらにもう1週間服用したところ、8割ほどまで改善する。

このまま服用すれば、ゴールも近いなと思っていたが、ちょうどその頃生理がきて、いつものように大量に出血するとともに、貧血様のフラつきが出てきてしまう。

ここで、もう一度病態を整理する必要がある。

普段のフラつきは水分バランスの平衡を整える沢瀉湯で、改善できた。

しかし、生理時には改善が見られない。

つまり、生理の時のフラつきと普段のフラつきは、別の病態として区別しなければならないということだ。

そこで、生理の時のめまいについて、思考をめぐらせてみた。

子宮筋腫があり、あざや静脈瘤があることから、瘀血(オケツ)による過多出血、そのため貧血様のめまいが生じていると判断するのが妥当として、生理時と普段の両方に対処できるように処方を変更。

第二処方:桂枝茯苓丸+沢瀉湯

しかし、1ヶ月服用しても変化はなく、むしろ普段のめまいも増加して、排卵期出血や生理時の出血も変わらない。

そこで、以前病院で服用していた当帰芍薬散を煎じ薬で服用するも、不正出血と生理時のめまいは改善せず、治療を中断することになった。

どうすれば良かったのか?

結論から言うと、連珠飲(レンジュイン)にすべきであった。

連珠飲は苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)に四物湯(シモツトウ)を合わせた処方だ。

苓桂朮甘湯は水分代謝を改善して、胸〜頭重部のめぐりを改善する働きがある。

不正出血を止めるには、当帰・芍薬・川芎のような血に作用する生薬では止められず、地黄・阿膠のように血を濃厚に補う作用のある生薬が必要だからである。

手の火照りも陰血の不足により生じた虚熱であろう。

細身の体質であり、年齢的にも更年期に近づいており、血の不足が伺える年齢である。

子宮筋腫や皮膚のあざという表面上の情報に惑わされて、不足した陰血を補うという発想に至らなかったのが、満足の行く結果に至らなかった要因だと考えられる。

あくまでも推察なので、実際のところはどうなるかわかりませんが、悔いの残る症例です。

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