治療について

治療に不安になった時

治療を行なっているものの目に見えて効果が感じられない時、「これでいいのだろうか」と不安になるものです。

実は治療者も不安になっていることが多いです(少なくとも未熟な私は悩みます)。

治療が思うようにいかない時はいくつか原因があります。

・処方があっていない

・処方は合っているが、使う量が足りていない

・効果が出るまでに時間がかかる

・生活習慣の不備が治療効果を落とす

だいたいはこの4つのいずれかですが、これを判別することはなかなか困難です。たくさん経験を積めば、ある程度判別が簡単になるかもしれませんが、経験を積んだら積んだで今までの成功体験に足を引っ張られ、柔軟な発想が失われてしまう場合もなくはありません。

ですが、別のケースで治療効果が出ない場合もあります。

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先日、カウンセリングのみの新規のお客様がいらっしゃいました。

ニキビを漢方治療で半年間治療しているものの、思ったように効果があらわれない。女子学生で見た目を一番気にする多感な時期であるので、だんだんとメンタルが病んできてしまい、お母様もどうしたら良いかわからなくなり、セカンドオピニオンとしてご来店されました。

服用している漢方薬を拝見すると、3〜4種類の漢方薬を1ヶ月ごとに変えており、本人も効果が見えないと1週間もたたないうちに止めてしまっていました。

なかなか効果が出ない不安からネットで情報を探し、食生活などの生活習慣などを徹底的に調べて、油物や甘い物ストイックなまでの生活を送っていました。

お話を伺っていると、ものすごく努力をしていて、治療に対する情熱は計り知れません。それだけに、成果が出てこないことに対する落胆は大きいのだと思います。

私もこれだけ努力されているので、良くなって欲しいなと強く思いました。

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どうでしょうか。

皆様の中にも同じように頑張っているけど、成果が見えてこない、色々試したけどうまくいかない、そんな方もいるかもしれません。

治療がうまくいかないもう一つの理由は「あれこれと手を出しすぎる」です。

今やっていることが間違っているのではないかと考え始めると、不安になり治療を止めてしまったり、いろんなものにあれこれと手を出してしまいがちです(正しいかどうかは別として、最近は情報がそこら中に溢れていますからね)。そのためどれもこれも中途半端な治療になってしまうので、効果は出ません。そうするとさらにいろんな情報を求めて、同じことを繰り返す・・・という負のループに陥ってしまいます。

その気持ちはとてもよくわかります。

早くよくなりたい、苦痛から解放されたいという魂の叫びでもあるからです。

私もそうです。治療がうまくいかない時は、だいたい処方の数が増えてしまいます。「胃腸の状態も良くしたい、でもストレス対策もしたいし、睡眠の質も良くしたいし・・・」といった具合で、何でもかんでも足してしまえとなってしまいがちです。こうなってくると治療の軸がブレてしまい、ピンポイントで病気の核心をつくことができません。

このような時に大切なことがあります。

それは、「困った時ほどシンプルにする」です。

病気を治したいのなら、どこにアプローチするのかを明確にして、まずはそこだけに絞って治療をすることです。

ニキビであれば、

・ホルモンバランスの乱れなのか

・食生活の乱れ

・ストレスの影響なのか

・炎症が強いタイプなのか

このように治療をするにしても、いくつかのアプローチがあります。その上でどこに重点を置いて治療をしていけば良いかを考えて、病気の原因を一つずつ分解して、絞り込んで治療をするべきです。

同様に患者様も(治療者側がきちんと説明しなければなりません)やると決めたら、あれこれ手を広げずに腰を据えて取り組むことが大切です。

今回のこのカウンセリングから、多くのことを学ばせていただきました。

迷った時こそ、減らす発想。

情報を入れすぎず、一つ一つ順番に試していくことが大切です。(自分に対する戒めでもあります)

今井 啓太

今井 啓太

薬剤師。1984年生まれ。名古屋市立大学、大学院を出た後、大手医薬品卸会社に入社。営業所の管理薬剤師として、西洋医学を中心に知識を深める。その後、調剤薬局勤務を経て、漢方薬局 博済に勤務。福島毅先生より、中医学理論及び漢方の臨床について学ぶ。その後、漢方コラージュの戸田一成先生より漢方経方理論を学び、実践への礎を築く。2016年、三鷹にて漢方薬局 Basic Spaceを開局。

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